「いかに飛ばさないか」がポイント
マンガの中で主人公とんぼがこのショットを披露するのは、とんぼの育った島のコースにあるガードバンカー。スコットランドのリンクスばりの深いポットバンカーで、SWでさえ脱出が困難なほどの状況。今回トライするバンカーは高いアゴがないので、まずは普通に3番アイアンでちゃんとバンカーから脱出できるかの検証からスタートする。
3番アイアンを持ってバンカーに入った小澤の構えは超ハンドダウン&超オープンスタンス。
「3番アイアンのロフトを増やしてバウンスを出すために、構えは必然的にこうなります。体も低く手元も低く。そしてスタンスなりに、ターゲットに対してはかなりカットにスウィングします」(小澤)
1発目のショットは、しっかり砂を飛ばしてピンよりも少し右に飛び、グリーンに落ちて右奥に転がっていった。小澤は「体のスピードを上げて、クラブは少しゆるやかに下ろすイメージ」でスウィングしたとのこと。
「3番アイアンはクラブも長いし、フェースを開いているとはいえロフトが立っているので、普通に打ったら飛びすぎてしまうんです。だから、ゆるんだり砂に負けたりしないように体の回転スピードは保ったまま、少しクラブのスピードを抑えることでエネルギーを意図的にロスさせて打った感じですね。クラブをすごく短く持つのも同じ理由です」(小澤)
この1発目、バンカーショットとしてはそこそこナイスアウトではあったが、ポットバンカーを想定すれば脱出するにはまだ高さが足りず、球も止まらなかった。
そこで2発目は、もっと左を向いて構え、フェースもさらに開いてターゲットに対してよりカットを強めて打ったが、シャンクしてしまった。
これは、球を上げたいという意識や、あまりにスタンスが左を向いている違和感からスタンスなりに振り切れず、スウィングがインサイド・アウト気味になってしまったことが原因だろう。
気を取り直しての3発目もナイスアウトだったが、ボールは上がり切らずグリーンをオーバー。やはりここまでオープンスタンスで立ってフェースを開いても、まだ球の高さが足りないようだ。
そこで今度は、マンガ内でのとんぼの動きを取り入れ、スウィング中に左手首を甲側に「谷折り」するとともに、「打つ瞬間、右手を構えたところで止める」という動きを取り入れてみることにした。
左手首を甲側に折る動作は、フェースを開く動き。ロフトを増やすとともにバウンスが出て、より球を上げやすく、砂をしっかり取りやすくなる。
また、右手を止めるという動作は、インパクト直前に手元に急ブレーキをかけることでヘッドを走らせるとともにシャフトを逆しなりさせてロフトを増やす効果もある。かなりの高等テクニックだが、とんぼのショットを再現するうえではこれがカギになりそうだ。
「3鉄」バンカーショットには発見がいっぱい!
そのイメージで4、5発目と打ってみたが、思うように球が止まらない。これは技術的な問題以前に、ちょっとバンカーの砂が締まりすぎて、ヘッドがボールの下に潜り込みにくいのかもしれない……ということで、ボール付近に砂を集め、砂がやわらかい状態で再トライしてみた。
そして6発目。今度はフワリと小澤の身長ほどの高さのボールが出てピン手前に落ち、ピタッと止まった。完璧なバンカーショット!
「自分でもどう打ったのかよくわからない感じでしたけど(笑)、ヘッドを強めのV字軌道で動かしました。ダウンスウィングを鋭角に入れて、ボールの下までヘッドを届かせたら、今度は跳ね上げるように手首のコックを使って抜いていく感じ。こうすればヘッドが深く入って球が飛びません」(小澤)
3番アイアンの少ないロフトやバウンスを増やして使いつつ、飛びすぎないような工夫をちりばめることで成功した3番アイアンでのバンカーショット。3番とまではいわずとも、ウェッジ以外のアイアンなどで実際に試してみると、どうすれば出せて、どうなると出ないのか、球の高さや距離のコントロールはどうするのかということが体で理解でき、バンカー巧者になれること間違いナシだ!
「今回、とんぼちゃんのマネをしていろんなことを試してみましたが、すごく勉強になったし、新しい発見もありました。みなさんも機会があれば、こうやっていろんなショットに挑戦してみてください! ゴルフがうまくなるだけでなく、楽しくなること請け合いですよ!」(小澤)
協力:千葉よみうりカントリークラブ