総合力はツアーNO.1
国内ツアーではフェアウェイキープ率やパーオン率などで選手の調子や強さを評価しますが、米ツアーではマキロイなどトップランカーたちはタフなセッティングの試合の割合が多くなるため、出場したフィールド全選手の中での評価、ストロークゲインドというスタッツで表されています。
マキロイは、そのうちストロークゲインド・オフ・ザ・ティ(ティショットの評価)とストロークゲインド・ティ・トゥ・グリーン(グリーン上以外のショットの評価)、そしてストロークゲインド・トータル(ティショットからカップインまでのトータルの評価)が1位です。つまりドライバーもアイアンもアプローチもパットまで年間を通して強かったことを表しています。
175センチ73キロの体格からドライバーの飛距離は313.5ヤードと飛ばしの能力はズバ抜けています。飛距離を出せる秘訣はどこにあるのでしょうか。じっくりと見てみたいと思います。
グリップは左手をややストロングに握り、右肩が自然と下がったアッパー軌道で打ちやすいアドレスです(画像A左)。腕とクラブを伸ばしたまま遠く(ワイド)に上げるように始動していきますが、ワイドにテークバックすると早い段階から上半身が大きく捻転する分、柔軟性とそれを支える下半身の筋力も必要になります。
トップでのフェースの向きはややシャットで、フェースの開閉は少ないスウィングタイプです。切り返しで左へ踏み込み、わずかなスライドと同時に沈み込む動作が見られます。インパクトに向けて地面反力を使う準備が整っています(画像B)。
切り返しからダウンスウィング、インパクトにかけては(画像C)、スライド、回転、地面反力と飛距離のエネルギーとなる3つの要素が非常に効率よく使えていることで下半身、体幹、腕、クラブへと力を伝える運動連鎖がスムーズに行われ、インパクトで最大のエネルギーをボールに伝えられています。
ボールが爆発してしまうんじゃないか。そんなありえない危惧を覚えるほどの、強烈なインパクトです。平均310ヤード超もこれなら納得です。
最後に左足のつま先に注目して見ます(画像D)。ひと昔前は左足は動かさないようにするレッスンが大半でしたが、最近では地面反力を使う反動で左脚が動くことは肯定されてきています。ツアーコーチの石井忍プロは左足の裏で地面をこするような動作からこの動きを“スクラブ”と名付けたと話していました。
この動きをスウィング中に取り入れると、地面反力を使いながら前傾角をキープしやすくなり、力がボールへしっかり伝わるようになります。
北アイルランド出身でありながら今年の全英オープンを予選落ちしてしまったことはゴルフの難しさを改めて気がつかせてくれました。しかし、持てるポテンシャルを発揮し年間王者に輝きシーズンの幕を閉じたのはさすがの一言。
若くしてトッププレーヤーに上りつめ、グランドスラムは残すところマスターズのみ。来年こそグリーンジャケットに袖を通すことを期待します。