PGAツアーといえば2019年シーズン年間王者ローリー・マキロイや世界ランク1位のブルックス・ケプカを筆頭に、300ヤード超えの飛ばし屋でないと活躍できないイメージがある。そんななか、飛距離こそ劣るものの持ち前のテクニックでPGAツアーを戦う技巧派選手たちがいた!

マキロイ、ケプカ。活躍選手は両者「300ヤード超え」

「今シーズンのUSPGAツアーを振り返ってみて総合的に印象に残っている選手は?」

と聞かれたら、ブルックス・ケプカやロリー・マキロイの活躍が印象に残っていると答えるファンが多いでしょう。全米プロでのメジャー4勝目を含む大活躍を見せたケプカ、そしてプレーヤーズ選手権と最終戦を制して年間王者に輝いたマキロイ。彼らは、いずれもパワーヒッターです。

画像: マキロイ、ケプカ。今年活躍した両選手はいずれも300ヤード超え。マキロイにいたっては「平均で」313.5ヤード飛ばす

マキロイ、ケプカ。今年活躍した両選手はいずれも300ヤード超え。マキロイにいたっては「平均で」313.5ヤード飛ばす

まずはケプカとマキロイ、そして比較参考として松山英樹、小平智のシーズン年間スピードデータを調べてみました(※賞金ランクはレギュラーシーズンのもの)。

賞金ランク名前ヘッドスピード(m/s)ボールスピード(m/s)測定ホール平均(ヤード)
1ブルックス・ケプカ54.3(8位)79.5(22位)309.0(10位)
2ロリー・マキロイ54.0(14位)79.8(16位)313.5(2位)
23松山英樹52.0(46位)77.5(51位)303.0(30位)
173小平智47.9(179位)71.6(181位)282.0(176位)

ヘッドスピードでケプカは8位、マキロイは14位。飛距離ではケプカが10位に対し、マキロイは2位です。この表をみるとやはりPGAツアーはパワーゴルフが要求され、飛距離のアドバンテージがないと通用しないのでは? と思われるでしょう。

日本人選手が目指すべき姿!? テクニックで戦う選手たち

シーズン最終戦「ツアー選手権」では現地で月曜日から7日間、いろいろな選手の練習方法を観察しながらコーチ、キャディなどに話を聞き取材をしました。

最終戦に残った選手は30人のみ。そのなかでも、 今回はパワーヒッターではなく、飛距離があまり出ない技巧タイプ、職人派の選手3名を観察してました。 まずは年間スピードデータを見てみましょう。

賞金ランク名前ヘッドスピード(m/s)ボールスピード(m/s)測定ホール平均(ヤード)
3マット・クーチャー48.5(172位)73.0(170位)289.5(135位)
10ウェブ・シンプソン49.0(162位)73.4(165位)288.6(145位)
18チェズ・リービー48.4(175位)72.2(174位)287.0(158位)

そうなんです。 決してヘッドスピードが速くない選手でも活躍はできるんです。そこで、日本人選手が将来米ツアーで活躍する秘訣はこの3人の成功している点を参考にすると良いかなと考えました。 ここで紹介させて下さい。

マット・クーチャーはプロ生活20年のベテラン選手。 今シーズンは優勝2回、2位2回と大活躍。年間獲得賞金額は自己ベストとなる630万ドル(約6億7000万円)を稼ぎました。

画像: プロ生活20年、41歳のベテラン、マット・クーチャー。2018-19シーズンは賞金ランク3位でケプカ、マキロイに続く(写真は2019年の全米オープン 撮影/有原裕晶)

プロ生活20年、41歳のベテラン、マット・クーチャー。2018-19シーズンは賞金ランク3位でケプカ、マキロイに続く(写真は2019年の全米オープン 撮影/有原裕晶)

クーチャーは1メートル93センチと長身ですが前傾姿勢を深く構え、独特なスウィングで振っていきます。スタンスは極端なクローズ(目標よりも右を向く)でスライスボールヒッター。 最終戦でショットを観察しましたが、ケプカやマキロイと比べると打音には迫力はありませんが、いぶし銀の職人ゴルフを展開していきます。

今シーズンのマット・クーチャーのデータで光る点は3つ。まずは、初日の平均スコアがツアー2位の68.4、2日目もツアー10位の69.2と、予選ラウンドでの好スタートをしていること。

次に、パーオン率が69.3%でツアー20位。スクランブリングというグリーンを外した時のパーセーブ率が63%でツアー26位であること。これらのデータから、 ボギーの数が少ないというのがわかりますね。

3つめは、パー5の平均スコア。クーチャーはツアー6番目の4.50です(ツアーリーダーはジャスティン・トーマスの4.42)。パー5で2オンを狙う率はツアー149番目(188人中)の52%と低いですが、上手く3打目を寄せてバーディを奪っているのがわかります。

ウェブ・シンプソンは2012年全米オープンを制した34歳の中堅選手。 大学時代からのグリップエンドを身体につける中尺のパッティングスタイルでメジャー優勝を含め活躍していましたが、2016年からのパッティングスタイルの規制の影響で苦しみました。

画像: パッティングの技が光るウェブ・シンプソン。アンカリング規制に苦しめられたが、アームロック式パットに替えて調子を取り戻した(写真は2019年のマスターズ 撮影/姉崎正)

パッティングの技が光るウェブ・シンプソン。アンカリング規制に苦しめられたが、アームロック式パットに替えて調子を取り戻した(写真は2019年のマスターズ 撮影/姉崎正)

2014年34位だったストローク・ゲインド・パッティング(パットのスコアに対する貢献度)の順位は174位へ急降下。 その後2017年から試したアームロックというシャフトと左手を一体化するパッティングストロークで成功を収めるようになり、昨年は第5のメジャーと呼ばれるプレーヤーズ選手権のビッグタイトルを奪取します。

今シーズンは「飛距離145位」「パーオン率127位」とショットの速度や正確性は低かったですが、「総合パッティング5位」「バンカーセーブ5位」と粘り強いゴルフを展開します。 361ホール連続(5試合継続)3パットなしという記録も光りますね。

信頼できるベテランキャディ、ポール・テソーリ氏からの意見を常に聞き冷静な選択をしてきます。 今年は週末の平均ストロークも素晴らしかったです。 ツアートップとなる3日目の68.3、そしてツアー3番目となる最終日の68.5。 飛ばなくても、グリーンに乗る率が低くてもしっかりスコアを作ることに成功しています。

チェズ・リービーはフィル・ミケルソンやポール・ケーシーと同じアリゾナ州立大出身の選手(37歳)。175センチとツアーの中では小柄で実際のところ存在感は薄い感じ(失礼)ですが、今年は全米オープンで3位タイ、翌週のトラベラーズ選手権で優勝。 FEDEXカッププレーオフでは最終的に8位とキャリアベストの年となりました。

画像: トラベラーズ選手権で優勝し、通算2勝目を挙げたチェズ・リービー(写真は2019年の全英オープン 撮影/姉崎正)

トラベラーズ選手権で優勝し、通算2勝目を挙げたチェズ・リービー(写真は2019年の全英オープン 撮影/姉崎正)

練習場で見ているとリービーは一番アマチュアゴルファー的なスウィング(失礼……)です。 肩をフラット目に捻転し、シャフトはターゲットよりも左に向くレイドオフでオーバースウィングという“カッコ悪い風”ですが、再現性は高いんです。

飛距離は158番目と劣りますが、ツアートップのフェアウェイキープ率(75.7%)と方向性は抜群の安定度。そして150~175ヤードからのピンを狙うショットはツアー2番目、175~200ヤードはツアー9番目、225~250ヤードはツアートップとアイアンやUTの名手でもあります。

ツアー選手権の2日目9番ホールで見事ホールインワンを決めたときはキャリア21回目と語って周りを驚かせていましたが、方向性そして正しい距離を打つ能力はピカイチですね。

USPGAツアーには身体が大きくパワーヒッターが多いですが、ジム・フューリックやルーク・ドナルドのように正しい距離を打ち分ける運び屋の職人ゴルファーも多いんです。 ご存じの通り10月末には日本でPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」が開催されるので、いろいろなタイプのゴルファーを観察してみて下さい。

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