いくら「開眼」しても上手くはならない
今でこそパープレー周辺のスコアでプレーできるようになりましたが、以前の私は練習量は多いのに、まったく向上できずに伸び悩んでいました。なぜか? 振り返って考えると、「開眼ばかりしていたから」であることに気がつかされます。
どんなゴルファーでも100球、200球打っていれば、自分でも惚れ惚れするようなボールが打てることがあります。そしてそんなとき、ゴルファーはこう考えます「これだ! この感覚を続けていけばいいんだ」と。いわゆる“開眼”ですね。
開眼は、様々な方法でもたらされます。右ひじを意識して開眼、切り返しのタイミングを変えて開眼、スタンスを修正して開眼……もちろん、みなさんにも経験があると思いますが、開眼はスウィングの一部分を意識して変えたときにもたらされることが多いと思います。
しかし、これもみなさん納得していただけると思いますが、開眼は続きません。続いても2、3球。開眼したはずがすぐに元どおり。「それじゃ、開眼じゃなくてまばたきだな」なんて言われる始末……。もちろん、練習場ですら続かないものが、ましてコースで出るわけがありません
なぜか。答えは簡単です。意識的な動きは、再現性が極めて低いからです。いつもと違う動きはまぐれ当たりの一発を誘発しやすいけれども、再現性がないため、まるであぶくのように消えて、それでおしまいになってしまいやすいのです。開眼体験が上達やスコアアップにつながらない理由がここにあります。
にも関わらず、中には複数の開眼体験をパッチワークのように組み合わせ「始動はこう、トップではこう、切り返しではこうでフォローはこう」といったように、多数のチェックポイントを持って練習に臨んでいる人もいるのではないでしょうか。これはスコアアップには逆効果もいいところ。
練習場でやるべきことは、開眼体験にとらわれて、いたずらにチェックポイントを増やすことではなく、むしろチェックポイントを減らす作業。言い換えれば、自分にとってナチュラルなスウィングのクセを磨き上げる作業です。
「ヘタを固める」という言葉があるように、クセを磨くというとネガティブな印象を持たれがちなのですが、クセほどありがたいものはありません。だって、クセほど再現性の高い動きはないですから。
PGAツアーにマシュー・ウルフという選手がいます。独特のルーティン、シャフトが垂直になるトップと極端なループスウィング……とクセだらけ。しかし、コーチのジョージ・ガンカスは、彼のクセを直さなかったと言います。クセ=再現性を重視し、彼の感性を生かしたまま、スウィングを磨いていったというのです。ウルフはデビュー早々、PGAツアーで勝利を挙げています。
アマチュアゴルファーにとっても、理想はウルフのように信頼できるコーチの指導のもとでクセを磨き上げることです。シャフトクロスだっていいし、握り方が極端でもいいし、オーバースウィングだっていい。クセ=再現性を大切にして、10発に1発の奇跡のボールではなく、10回打って10回似たような球が出るように磨き上げる。
それが、結果につながる練習なのだと思います。