フジサンケイクラシックは、アメリカのチャン・キム、そして韓国のチェ・ホソンとパク・サンヒョンが最終日最終組でプレーし、パクが見事勝利を収めた。近年の男子ツアーでは彼ら韓国系の選手たちを筆頭に、アジア圏の選手の活躍が目立つ。その背景にあるものは? プロたちの意見をまとめた。

日本をステップに世界へ打って出るアジア勢

熱戦が繰り広げられたフジサンケイクラシック。その練習日、会場の富士桜CCで黙々とボールを打つ48歳の宮瀬博文がいた。

宮瀬博文といえば18歳の若さでプロテストに合格し、21歳・史上最年少でシード権を獲得。近年はシードを失い、半ば“シニア待ち”の状態だが、レギュラーツアーや下部のAbemaTVツアーで戦う姿を見せてくれている。

宮瀬は、最近の男子ツアーの“変化”についてこう語る。

「(宮瀬が初シードを獲得した)当時は、20代でシード権を持つのは難しかったですよ。それが今では女子はもちろん、男子ツアーでも若くして実力のある選手がどんどん出てきています。比嘉一貴、浅地、幡地……AbemaTVツアーにも、レギュラーで勝てそうな選手がいます」

ひと昔前までは、男子ツアーは20代で活躍するのは至難の業とされた。しかし今では、20代でもシード、そして優勝と大活躍する選手が増えている。そして、宮瀬が感じる変化はそれだけではない。

画像: 左から開幕戦シンガポールオープンを制したジャズ・ジェーンワタノンド(タイ)、チャン・キム(韓国)、ガン・チャルングン(タイ)、チェ・ホソン(韓国)ら、アジア勢(チャン・キムは韓国出身のアメリカ人)の活躍が目立つ

左から開幕戦シンガポールオープンを制したジャズ・ジェーンワタノンド(タイ)、チャン・キム(韓国)、ガン・チャルングン(タイ)、チェ・ホソン(韓国)ら、アジア勢(チャン・キムは韓国出身のアメリカ人)の活躍が目立つ

「アジアからの外国人選手が増えましたよね。顔を見てもほとんどわからない(笑)。若返りしていることに加え、外国人が増えたことでレベルが上がり、これから男子ツアーもどんどん面白くなると思いますよ」

フジサンケイクラシックの出場選手を見てみると120名のうち44名の外国人選手が参戦、その中でもアジア圏出身の選手は32名を占めている。全体の約3分の1が外国人選手で、アジアの選手は約4分の1といったところだ。

アジアの選手たちはなぜ日本ツアーに来るのか。アジアンツアーへの参戦経験が豊富で、自身タイ語を使いこなすアジア通・塚田好宣はこう語る。

「彼らは、日本ツアーをステップに欧州ツアーや米ツアーを目指しているんです。日本は練習環境もいいですし、アジアの選手からするとすごく整ったツアーですから」

実力を蓄え、あるいは世界ランクを上げて、欧州、あるいは米国へとレベルを上げていく。そのためには移動も少なく環境のいい日本ツアーは格好の場だというわけだ。そして、彼らが日本ツアーで活躍できる理由を、塚田はこう説明する。

「一番の要因は、アジアンツアーでも下部ツアーでも、タイの自国のツアーですら4日間の大会しかないんです。2日間や3日間の大会をやっていない。だから(4日間または6日間の)日本のQT(予選会)も突破してくるし、ツアーでも結果を出せるんだと思います」

「日本ツアーに海外のレベルの高い選手が入ってくるのはいいこと」(石川遼)

宮瀬と同じく48歳で、米ツアーでシード権を獲得したこともある丸山大輔は、アジアの選手たちが日本に来るように、日本選手が自分から海外に行くことも大事だと説く。

「僕自身、若い頃にアジアサーキット(現・アジアンツアー)に出ていなかったら、米ツアーも行っていなかったと思います。様々な国を移動しながら転戦することで、(国による)芝や暑さや天候の違いを経験でき、ゴルフの幅が広がりました。外国人選手の中でプレーすることにも慣れましたし、外国にいるほうがゴルフに集中できることもある。だから若い選手にはどんどん海外に出てみたらと思いますね」(丸山)

もちろん、積極的に海外に出ている若手もいる。チャイナツアーで優勝経験のある佐藤太平は今季からレギュラーツアーにフル参戦しているし、今年関西オープンで優勝した大槻智春は、年初のアジアンツアーの予選会で出場資格を確保していることからこの2週間はアジアンツアーに参戦しているという。

最後に、選手会長・石川遼の意見を紹介しよう。石川は、アジア圏の選手が日本ツアーに増えていることを大歓迎だとこう言う。

画像: 海外からの強い選手が入ってくることで日本ツアーレベルも上がり海外でも活躍できるようになると石川は話す

海外からの強い選手が入ってくることで日本ツアーレベルも上がり海外でも活躍できるようになると石川は話す

「アジアの選手がどんどん力をつけてきていて、アジアンツアーのレベルが今までで一番高いところに来ていると思います。日本ツアーに海外のレベルの高い選手が入ってくるのはいいことだと思っていますし、その中で揉まれて勝っていく選手は海外に行っても強くなれるんじゃないかと思うので、日本のツアーだから日本人だけでやろうという考えはよくないと思います。そうなると海外からどんどん離されていってしまいますから」

と、日本ツアーが海外の諸ツアーに遅れを取らないためにも、日本ツアーには強い外国人選手がどんどんきてもらいたいと言う。

「強い外国人がどんどん入ってきていいよという余裕感じゃないですけど、日本のツアーはレベル高いよと思ってもらえるような選手になりたいですし、そういう選手が増えてくれると日本ツアーにとってもアジアにとってもいいことだと思います」(石川)

日本ツアーの若年化と、そして強いアジア圏の選手たちの流入。これらが、日本ツアーをさらに活性化させ、その中から世界に飛び出す若手が育ち、やがて日本人ゴルファーが多数世界の舞台で大活躍する……そんな未来予想図を、大いに期待したい。

写真/姉崎正・岡沢裕行

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