想像してください。ウェッジの“重心”はどこ!?
キャロウェイゴルフの「PMグラインド19」や、テーラーメイドの「HI-TOEビッグフット」など、フェースのトゥ側までしっかりとスコアライン(溝)が切ってあるウェッジが増えてきた。
「PMグラインド19」のPMとはPhil Mickelsonのことだが、キャロウェイゴルフのチーフデザイナー、ロジャー・クリーブランド氏によれば「ミケルソンはグリーン周りからしばしば強烈に高いロブショットを打ちます。その時の打点はかなりフェースの先端(トウ)側になるんです。そこで彼専用のウェッジを開発するにあたり、“ここにも溝が欲しい”ということになったのです」とのことだった(2015年取材当時)。
アマチュアゴルファーでも(結果的に)トウ先で打ってしまうことが結構あるが、ツアープレーヤーは状況によって、フェースを開いたり、軌道を変えたりして、フェース面を広く使う。ドライバーなどのロングショットギアでは、1ヤードでも遠くへ飛ばすためにヘッドの芯で打つことが推奨され、オフセンターでも芯打ち同等のパフォーマンスが得られるように進化し続けているが、遠くに飛ばすのではなく、狙った距離にコントロールすることが主眼のウェッジでは、決して“芯で打つこと”がマストではない。この数十年間、ツアーウェッジの形状はほぼ変わっていないのもこのためだ。
ちなみに、「PMグラインド19」のヘッド重心(フェース面上)は、どこにあると思うだろうか? ドライバーのようにフェースセンターにあるのだろうか?
編集部で計測してみたので、写真を示しておこう。
どうだろうか? 思ったよりも高く、ヒール寄りに重心がきていることがわかるだろう。この位置ならばフェースセンターで打ったとしても、重心に対してはトウ寄りでヒットすることになる。しかも、実際はフェースの下方向にも打点はズレる。ましてミケルソンのようにフェース先端で当てるとなれば、重心から30ミリ前後も遠いところで打っていることになるのだ。
我々はつい“芯で打つ”ということに固執してしまいがちだが、それはあくまでも少しでも遠くに飛ばしたい場合の話である。飛びを調節したいならば“芯で打たない”ようにする。それがゴルフのスキル、テクニックでもあり、先人たちが経験に基づいて作り上げた、飛ばさない道具の基本的なあり方なのだ。
では、最後に“名器”の誉れ高いクラシックパターの重心位置(フェース面上)をご覧いただこう。
ジャンボ尾崎の黄金時代を支えたマグレガー社「トミー・アーマー IMG5」(オリジナルヘッド)である。驚くべき場所にバランスポイントがある。これも飛ばさなくていい道具は、必ずしも重心ヒットしなくてもいいという証明になるだろうか。ゴルフは“飛ばすこと”と“飛ばさない”ことの両面で出来ている。昨今はつい、飛ばし一辺倒の興味になりがちだが、飛ばさないための道具のアレコレを見つめてみるのも、たまには面白いものである。