20年前と現在、女子ツアーはどう変わった?
LPGA公式戦2戦目となる日本女子プロ選手権では、ツアー経験豊富なLPGAプロに生で解説してもらいながら観戦できる、というプレミアムな催しが用意されている。中でも見どころと言える土・日(3日目・最終日)の解説を担当しているのが天沼知恵子プロだ。
1996年にプロ転向し、国内ツアー6勝の実績を持つ天沼。彼女が活躍していた時代から約20年あまりの年月が経ち、現在のツアーシーンでは1998年生まれのいわゆる“黄金世代”の活躍が目覚ましい。解説の立場からも、やはり「注目したいのは黄金世代」だと天沼は言う。
「日本の女子は若い子たちが頑張っているので、もちろんどの選手を見ても楽しいかなとは思うんですけど、いわゆる黄金世代って言われている選手たちと、その次に繋がってくる子たちのゴルフには注目したいなと思います」
中でもやはり最注目選手は海外メジャーを制した渋野日向子だろう。
「渋野選手に関しては(全英最終日の)12番でドライバーを持って(ワンオンを)狙っていける、あの衝撃的な精神力がスゴいですよね。今週もそういった部分が見られたらなと思います。あとはルーキーイヤーの今年、これだけ勝てた要因っていうのはなにかあると思うので、そこも見ていきたいですね」
さて、自分がプロ入りをした頃には生まれたばかりだった選手たちが台頭している現在の女子ツアーを、天沼はどう見ているのか。
「今の女子ツアーは全体的に飛距離が伸びて、パワーゲーム化していますね。当時の男子プロトーナメントを見ていて『(女子ツアーでも)絶対そういう時代が来るな』とは思っていました。全体的に、スコアを叩く選手も少なくなってきたかなと思います。
あと、爆発的スコアを出せる選手が増えてきた点も大きい。自分の頃はアニカ(・ソレンスタム)がそういうタイプ。当時日本人にはそういう選手がいなくて、爆発されたら追いつけない、馬力が違うと思わされてしまうような選手でした。これを、今の日本人選手はできていますね」
思えば渋野の全英女子最終日バックナインでのスコアの伸ばし方も“爆発”とたとえるのがしっくりくる。観戦する側の我々にとっても、ここぞという場面での逆転劇を期待できるからこそ、見ていて面白いというもの。こういった日本ツアー全体のレベルの底上げによって切磋琢磨され、渋野の海外メジャー制覇という結果に至ったのではないか、と天沼は分析する。
また、若手が活躍する背景には、「明確な目標」としてオリンピックがあることも大きいのではないか、という。
「(オリンピックは)若い子たちが夢を持ってるところもあると思うので、それは感じますよね。若さゆえにその波にも乗れるというか。もし自分が20代で活躍してる頃に日本でオリンピックやるってなったら、たぶんその波には乗りたいと思ったはずですから。あとは、ゴルフに限らず他のスポーツでも若い子たちが活躍しているじゃないですか。そういう影響もあると思います」
「一方で」と天沼は続ける。
「先ほどのレベルについての見解はレギュラーツアーでのこと。ステップに関しては正直に言えば、レベルが劇的に上がっている感じはしません。ステップに出てる子とレギュラーに出てる子との差が開きすぎているっていうのはすごく感じますね」
ステップアップツアーでも4日間競技が開催されるなど、レギュレーションの改善が進んでいるもののやはりレギュラーツアーとの溝は依然としてあり、それが顕著になっていると天沼は指摘する。
ともあれ、時代の変化によって女子ツアーは進化し、見応えのあるものになっていることは間違いないようだ。今週開催の日本女子プロ選手権には渋野をはじめ、米女子ツアーに参戦している畑岡奈紗も出場しレベルの高い優勝争いが見られるはずだ。