行きつけのフィッターが渋野とピンを結び付けた
「日向子ちゃんを紹介されたのは、中学2年生のときです」
当時、ヒマラヤスポーツ岡山豊浜店でフィッティングをしていた向井誠さんが、はじめて会ったときの渋野のクラブは、お父さんからのお下がりだったと言う。
「ゼクシオのセットでした。アイアンはSのスチールシャフトが挿さっていたのを覚えています」
パワーがある分、アイアンは現状で問題ないが、ドライバーを替える必要を感じたという。
「ヨネックスのEゾーンを勧めたところ、ちょうど合ったようです。当時の彼女はヘッドスピードが46m/sを超えていました」
翌年、岡山ジュニア3連覇を果たし、作陽高校へ進んだ渋野にピンを紹介したのも向井さんだ。
「彼女は当時、あまりピンのことを知らなかったようですが、彼女のパワーを生かせるのではと思い、勧めました。最初のピンのドライバーはG30に純正のSシャフトでしたね」
高校1年生の夏。将来を変える大きな出会いだ。
3番ウッドより下はすべて“ピンを狙う”
高校1年生の夏、フィッターのすすめでピンのドライバーを使うようになった渋野。「道具にこだわりはなく、与えられた道具に合わせるタイプ」と先述の向井さんは言うが、すぐにしっくりきたようで、ほどなくしてFWやUTでも積極的にピンを狙う攻撃的なスタイルが完成された。
「3Wは飛ばす番手、5W以降はピンを狙う番手という使い分けをしているようです。3番だけLSTにしたのも、低スピンで飛距離を稼ぎたいという理由からです。対し5WやUTは打ち出しの高さを優先させています」
とは、向井さんの紹介で、すぐさま岡山の渋野に会いに行ったという、ピンの穂積真嗣さん。
「スウィング改造の過程で、球の高さが出なくなった時期がありました。それもあり、やさしいヘッドと球を上げやすいシャフトの必要性が高まったんでしょう。UTのシャフトを替えた理由も同様です。今では彼女の武器のひとつです」
道具の力を引き出しクラブで“無理しない”
アイアンは現在、i210という比較的やさしいモデルを使用している渋野。その考えの根底には“高速グリーンで球を止めたい”という考えがある。
「中学3年間で彼女は、岡山県ジュニアで3連覇しましたが、優勝者はステップアップツアーの“山陽新聞レディス”に出場できるんです。おそらくそこで球を高く上げる必要性を感じたんでしょうね」(向井さん)
ツアー仕様の高速グリーンでも球が止まるよう、渋野はアイアンにも“楽に上がる”ことを求めており、現在、ピンで渋野を担当する浦山康雄さんによれば、その考えは今でもクラブ選びの根幹を成すという。
「i210は操作性とやさしさを備えているというところで1年ほど前から使っていますが、より高い球で止めたいという理由から、昨シーズンよりシャフトはMCIの80Rに替えています。これは“クラブに振られるように打つことで、道具の力を引き出し、楽に球を上げる”という青木(翔)コーチの教えも大きいと思いますね」(ピン・浦山さん)
とは言え、ただ簡単さを求めるだけでもなかったようだ。
「でも、彼女が最初に選んだのはプロ好みの“S55”でした。なんでアイアンだけ難しい方に!? と驚きましたが(笑)、“カオに惚れた”って言うんです。いま考えると、シビアなクラブで自分を成長させたいということもあったのでしょうね」(向井さん)
“クラブで無理をしない”という考えに合った14本。ピンを得た渋野の快進撃は、まだ続きそうだ。
【渋野日向子の14本】
1W:ピン G410 プラス(10.5度、スピーダー エボリューションⅥ 569、硬さSR、44.75インチ)
3W:ピン G410 フェアウェイウッドLST(14.5度、スピーダー エボリューションⅥ 569、硬さSR、43インチ)
5W:ピン G410 フェアウェイウッド(17.5度、スピーダー エボリューションⅥ 569、硬さSR、42.5インチ)
3UT・4UT:ピンG410 ハイブリッド(22度・26度、ダイヤモンド スピーダー HB-7、硬さS、39.75インチ・39.25インチ)
5I~PW:ピン i210 アイアン(MCI 80、硬さR)
AW:ピン グライド フォージド ウェッジ(51度、KBS ツアー90、硬さR、35.5インチ)
SW:ピン グライド フォージド ウェッジ(55度、KBS ツアー90、硬さR、35.25インチ)
PUTTER:ピン シグマ2アンサ―
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