グリーン上の「滑り台」の開発者をコーチに
ケンジロウです。ラスベガスのTPCサマーリンよりお届けしております。「シュライナーズホスピタルズforチルドレンオープン」2日目が終わりました。日本人選手は松山英樹が4つスコアを伸ばし7アンダーで35位タイ。小平智は残念ながら6つスコアを落として8オーバーで予選落ちしてしまいました。
さて、今日の話題は、チリの新星、ホアキン・ニーマン選手です。僕はスペインに住んでいたこともあって、スペイン語圏の選手がいると妙に話しかけたくなっちゃうんですが、チリ人のホアキン・ニーマンもそんな僕好みの一人。
2年前からPGAツアーに出始めた彼ですが、僕が彼をつかまえてスペイン語で話しかけると、ニヤッとした顔になり、いつも楽しい会話になります。彼とはすっかり仲良くなっていたので、今回のミリタリー・トリビュートでのPGAツアー初優勝は本当に嬉しかったですね。
元々世界アマランキング1位でジュニア時代から将来を嘱望されていた選手。昨年プロ入りしましたが、やはりプロの厳しい世界でもまれて、思うような結果を出せませんでした。今年ようやくその才能が開花したのかもしれません。
でも今回優勝を果たせた一番の要因はなんだったのか? 昨シーズンまでとの違いは何だったのか?
初優勝のお祝いの言葉をかけにいきつつ本人に話を聞いてみました。
「PGAツアーで勝つなんて信じられないよ。子供のころからの夢だったからね。コーチのミゲルと一生懸命練習してきたことが実を結んだよね。去年に比べて変わったところかい? パッティングの練習の仕方を変えて、パットのスタッツがすごくよくなったんだよね。『パーフェクト・パター』という練習器具を使って、球の転がりのスピードとラインを正確に測ってから練習するんだ。毎日試合前にやるし、終わってからもやるんだよ」(ホアキン・ニーマン)
なるほど。それだけパットの数値を劇的向上させた「パーフェクト・パター」とは何なのか?
最近ツアー会場の練習グリーンでよく見かけるのが、小さな滑り台のような器具からボールを落として転がりを見ているシーン。この小さな滑り台が「パーフェクト・パター」なんです。
一定のところからボールを落としてカップに入る転がり方の正解を探し、ラインを可視化して、そこから練習することで、ストロークや距離感の向上に役立てようという器具なんです。
昨シーズンのウェルズ・ファーゴからニーマンのパットをコーチングすることになったスペイン人のラモン・ベスカンサさんに話を聞きました。彼がパーフェクト・パターの開発者のようです。
「最初はグリーンを読むことをメインとした器具として開発したんだよ。グリーンのスピードと曲がり具合が明確にわかり、読みを可視化できる。そこからいろんなドリルが生まれきたんだ。ラインがわかることで、ミスしたときにそれがストロークのミスなのかほかの要因なのかフィードバックできるのが大きいんだよ」
なるほど。パッティングのとき、ライン読みのミスかストロークのミスか、わからないときありますものね。
ではニーマンはこの「パーフェクト・パター」でどんなドリルをやってきたのか?
「アライメントをよくやったよね。パーフェクト・パターでまず球を転がしてラインをセットし、グリーン上にラインの線を引いて、その線に対してしっかり立てる練習をしたよ。最初に教えたころは、彼は右を向く癖があったからね」
と説明している横で、ニーマンはグリーン上に引いた線の上をなぞるようにして球を打っていました。
「今はだいぶ真っすぐ立てるようになったから、“ステイキャリブレイテド”と呼んでいる練習をしているよ。アライメント、ストローク、スピード(タッチ)がすべて安定するようなドリルなんだ。いいストロークしてもアライメントが少し悪かったり、スピードが少し悪かったりしただけで外れちゃうからね。今はいい練習ができているから試合でも何の疑いもなく打てている。結果にそれが出ているよね」
その後ニーマンはラモンさんの指導のもとグリーン上で1時間近く練習をしていました。ニーマンの2勝目、意外とすぐかもしれないですね~。
ちなみにラモンさんのもとには、コロンビア人のファビアン・ゴメス、メキシコ人のイブラヒム・アンセルなどなどスペイン語圏の選手がこぞって習いにきているみたいですよ。
写真/姉﨑正