練習用と本番用のウェッジを分ける選手、毎週ウェッジを替える選手も
ロジャー・クリーブランドといえば、ボブ・ボーケイと並んでウェッジ作りの第一人者ともいえる人物。中でも現在のウェッジの原型ともいえる1988年に発売されたティアドロップ型ウェッジ「ツアーアクション588」はゴルファーなら一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
現在はキャロウェイで活躍中。新製品のジョーズウェッジも手掛けています。そんな彼が、ブリヂストンオープンの練習日、ドライビングレンジに姿を現しました。練習を始めた中里光之介選手のウェッジショットを見て「ウェッジワークが上手いね」と感心しながらも、PGAツアーでの現状を話し始めました。
「日本の選手はウェッジを比較的長く使うようだけど、PGAツアーでは58度や60度のハイロフトのウェッジは、どんなに使っても6週間で交換しているよ。中には練習用と試合用に使い分ける選手や1週間ごとに交換する選手もいる。それだけスピン性能にこだわっているんだ」(クリーブランド)
ショットでは果敢にピンを攻め、外したら難しいアプローチを寄せてパーでしのぐ。そのような戦いが求められるPGAツアーでは、ハイロフトウェッジのスピンは生命線。だからこそ、「最大でも6週間」しか使わないということになるのでしょう。
ところが、日本ツアーの場合事情が若干異なります。あるツアーレップ(メーカーのツアー担当者)は言います。
「選手の中には、スピンのかかり過ぎを嫌がって、わざとバンカーで練習してから試合で使う人もいます。国内の場合、米ツアーとのセッティングの違い、試合数の違いが大きいですね。多くても年間4本か5本でしょうね」
また、別のレップもこう証言してくれました。
「国内男子は年に3本くらい。500球以上打つとスピン性能が落ちてくるというか、スピンがかかり過ぎなくなるので、それくらいになるまで馴染ませてから使う選手が多いですね」
国内の場合、スピンはむしろかかり過ぎないほうが好まれるようです。馴染む頃に替えるPGAツアー、馴染んだ頃から使う男子ツアー、ほとんど真逆といっていいかもしれません。
とはいえ、古い話ですが私は毎週ウェッジを替えていた選手を知っています。ジャンボ尾崎プロです。ジャンボさんは、新しいウェッジを一本選んで試合で使うと、翌週にはまた新しいウェッジを手にしていました。使わなくなったそのウェッジを若い選手が取り合った、なんていうシーンを目撃したこともあります。ただ、今の日本ツアーではそういった話は聞きません。
「PGAツアー選手のウェッジの練習時間はかなり長いから、溝が減るのも早いんだよ。4ホールくらいパーオンを逃しても、『68』や『67』で回れるのはグリーン周りでの技術が高いから。だからもっと練習しなさい」
ロジャーさんは、中里選手にそうアドバイスしていました。
教わった中里選手自身は、「なるべくクラブは新しいものを使うようにしています。新しいテクノロジーが搭載されているのもそうですし、手に馴染み過ぎると替えられなくなって、割れたりトラブルが起きたときに苦労することもありますから」と言います。とはいえ、PGAツアー選手のウェッジのスピンに対するこだわりには、刺激を受けた様子でした。
間近に迫ったZOZO選手権では、日本選手とPGAツアー選手のウェッジワークの違いにも注目してみると、面白いかもしれません。