ゴルフ業界における‟AI(人工知能)技術“の進出が目覚ましい。今年はキャロウェイが新ドライバーの開発に活用したほか、本間ゴルフがウエアの商品展開にこの技術を起用。PGA(日本プロゴルフ協会)は、さらにAIと5G(第5世代移動通信システム)、双方の技術と活用した新たなレッスンプロジェクトを発表。ゴルフ商品開発におけるAIブームを追った。

ゴルフ界のあらゆる分野に”AI革命”の跡

2019年はゴルフ業界の“AI元年”だったのかもしれない。記憶に新しいのは、キャロウェイが2月に発売したドライバー「EPICフラッシュ」。AIが設計したフェースにより、反発性能を限界まで高めたというのがウリ。AIが設計したフェースは話題となり、ヒットとなった。

メーカーによると、反発性能を限界まで高めただけでなく、これまでの人間の技術者たちが行ってきた「新しいモノを生み出すための‟手間“も正確性を落とすことなく、劇的に簡略化することに成功した」(担当者)という。

画像: キャロウェイ「EPICフラッシュ」のフェース面はAI技術を投入して、1万5000回以上のシミレーションを行い、ボール初速の最大化するためのベスト形状を実現した

キャロウェイ「EPICフラッシュ」のフェース面はAI技術を投入して、1万5000回以上のシミレーションを行い、ボール初速の最大化するためのベスト形状を実現した

「AIを駆使すれば、人間が8~10回分のデータを取る労力で、じつに1万5000回分のデータを得ることもでき、客観的な正確性という意味でも、これまでにない確信が持てるクラブになりました」(担当者)と話す。

本間ゴルフはAIモデルを起用

AIを「どの分野に導入するか?」が、メーカーによって異なるのも興味深い。

本間ゴルフは、19年の秋冬モデルのウエアの商品展開に、この技術を投入。GANアルゴリズム(敵対的生成ネットワーク)というAIの汎用的な機能を駆使、実際には存在しない架空のモデルに、新商品のウエアを着せることができるゴルフ界では初の商品展開の手法を披露した。

画像: 19-20「秋冬コレクション」に架空の”AIモデル”を起用した本間ゴルフ(メーカー提供写真)

19-20「秋冬コレクション」に架空の”AIモデル”を起用した本間ゴルフ(メーカー提供写真)

「これまではモデルの人数や撮影する量、モデルの人数にも限界があり、全てのコレクションをモデルが着用した形で紹介することに限界がありましたが、AI技術を駆使することによって、考え得る全てのコーディネートを見せることが可能になりました」(本間ゴルフ担当者)。

ゴルフ界ではウエアの商品展開では「初」の試みだが、他業界では、すでに商品展開において本間ゴルフのような手法はスタンダードになりつつあるという。

今回のキャンペーンで本間ゴルフと共同開発を行ったAIのシステム開発やコンサルティングを手掛けている株式会社データグリットの担当者によると「これまでにも、ゲーム、広告、映像、ファンション、医療、保健などの各業界のデータホルダー企業とプロダクトやサービスにおける共同開発、及び製品化を行ってきています」と話す。

画像: AIモデルの起用により、色やコーディネートの組み合わせや、選択肢も瞬時にかつ最大限に見せることが可能に(メーカー提供写真)

AIモデルの起用により、色やコーディネートの組み合わせや、選択肢も瞬時にかつ最大限に見せることが可能に(メーカー提供写真)

ウエア選びにおいて、色の種類など選択肢を用意し、実際にコーディネートした結果を購入前から顧客が確認できるシステムは、まさにテクノロジーの成せる技と言えるはずだ。

最新技術の導入は若者をターゲットにした新規ゴルファー獲得戦略のひとつ

また、これまでにない形式で商品展開を行う狙いもあるという。

「少しでも、面白い試みや、新しいことをしていると感じていただき、普段ゴルフに触れない若い人のゴルフへの先入観が無くなり、少しでも興味を持つきっかけになっていただければと」(本間ゴルフ担当者)。20代の若者層など、ウエアの販売を通じ、これからゴルフを始める層への購買意欲を刺激して、新規顧客獲得をというわけだ。

新たな競技人口獲得の面でも、AI技術はゴルフ業界に大いに役立つツールとなりそうだ。

PGA(日本プロゴルフ協会)は9月に大手会社大手のNTTドコモと共同研究・開発を行っていくことを発表。NTTドコモ社の第5世代移動通信システム(5G)とAIを活用し、これまでは指定のゴルフ場施設以外では受講が不可能だったティーチングプロ育成のためのレッスンプログラム「PGAメソッド」を、2つの技術を駆使して可能にする構想を披露。12月には共同で実用化にむけた実証実験も行うという。

ギア開発にとどまらず、商品購入の選択肢やプロ育成まで……。ゴルフ界のあらゆるシステムやプログラムにAIの‟技術革命“は確実に浸透してきている模様だ。

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