スピン性能にこだわったウェッジが続々と登場している
PGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」に出場するため、4年ぶりに来日したタイガー・ウッズ。飛距離ではタイガーを上回る若手が現れてきたものの、未だにゴルフの上手さでは他の追随を許さない。そんなタイガーが、スピン性能にこだわることはよく知られている。
タイガーがゴルフを始めたのは、まだ糸巻きバラタボールが全盛だった時代。当時のゴルファーたちは、バックスピン量の多いこのボールで、いかに吹け上がりを抑えるかに腐心していた。フェースが小さかったパーシモンドライバーのトウ寄り上目の打点で打ったり、意図的なフックを打つなどして、スピンを減らさないと、ボールを遠くに飛ばすことが出来なかったのだ。
タイガーは、そのスピンを減らす技術に誰よりも長けていた選手だ。スピンを減らし、ドライバーの吹け上がりを抑えられたからこそ、デビュー当時から2000年代前半には、他を圧倒する身体能力を存分に発揮できていた。
それから早20年が過ぎ、クラブもボールも随分と低スピン化した。現在のタイガーは、ボールやクラブ選びにおいて、自身が想定する十分なバックスピンを得ることを特に重要視しているという。ウェッジに関しては、ほぼ毎試合、新品に変更し、おろしたてのウェッジの溝性能を好んでいるようだ。
タイガーが現在愛用しているテーラーメイドの「ミルドグラインド2」は、ソールを機械加工で仕上げることで、製造誤差を少なくしたというモデルだ。頻繁にウェッジを変えるタイガーは、高精度で同じクラブを手にできるこの製法を気に入っているという。
タイガーがリクエストしているからだけではないだろうが、「ミルドグラインド2」は、スピン性能にこだわったウェッジだ。溝と溝の間に複雑なレーザーエッジングを施し、フェース面はノーメッキで仕上げている。よく言われていることだが、ノーメッキのほうがスピン性能は高い。鋭く彫られたフェース溝は、メッキなどを施すとどうしても角が丸くなってしまい、幅も細くなってしまう。微細な差だが、無視できない違いがあるのだ。
時を同じくして、スピン性能にこだわったウェッジが、キャロウェイから発売されている。「ジョーズ MD5」がそれだ。溝の掘り方を鈍角にすることで、エッジを鋭くしても、溝のルールに抵触しないという“コロンブスの卵”的な発想で強いスピンがかかる。
「ジョーズ MD5」は溝にフォーカスしたクラブだが、ピンの「グライド3.0」は、溝だけでなく、仕上げにもこだわったウェッジだ。疎水性の高いパールクローム仕上げにより、雨に濡れたラフなど、ウェットなコンディションでもスピン性能が高くなるように工夫されている。
現在、発売されているウェッジは、ほとんどのモデルで溝と溝の間にレーザー彫刻されたテクスチャーが施されており、少しでもスピン性能が高まるように工夫されている。2010年の新溝規制からもうすぐ10年になるが、ここへきてスピン性能を高める数々の工夫が出てきているのは面白い現象だ。タイガー・ウッズでさえ、スピンをギアで増やす選択をしている。このあたりは、アマチュアゴルファーにも真似できる部分ではないだろうか。