ターゲットに対して真っすぐ打ち出し、落ちぎわで左に切れるのが「ドロー」
みなさんは、ドロー、フェードという球筋をどのように思い描くでしょうか。右方向に打ち出されたボールが空中で左にカーブし、ターゲットラインに戻るのがドロー。その逆がフェード。以上のようなところが、多くの人が思い描くドロー、フェードのイメージでしょうし、それは間違っていません。ただし、そのイメージには、今後“過去の”という注釈がつく可能性があります。というのも、ZOZOチャンピオンシップで観測したところ、そのような球筋のボールを打つ選手はほぼいなかったのです。
では、彼らはどのようなボールを打っていたのでしょうか。それは、ターゲットラインに対して真っすぐ打ち出していき、落ちぎわで右または左に切れていくようなボール。ストレートボールに近い、ほんのわずかな“変化球”でした。
このような変化が起こっている背景には、やはり、ゴルフギアの進化が影響しています。ドライバーのヘッドがパーシモン(木)だった時代、プロたちはアウトサイドイン軌道でスウィングしてフェース中心より先(トウ側)で球を打ち「ギア効果」と呼ばれる現象を利用してボールにフック回転を与えていました。それによりスピン量を減らし、飛距離を伸ばすことができたからです。
以前、青木功プロにインタビューした際に、この事を質問しましたが、「フェースの向きは関係ない。どこに当てるかで弾道を作るのがパーシモンだ!」と答えて頂きました。現代の弾道解析器で大切とされる、ヘッド軌道とフェース向きの関係とはまったく異なる技術でナイスショットを打っていたのです。
しかし、今の慣性モーメントの大きいドライバーでは、スウィングプレーンに対してフェースをスクェアに戻し、フェースの芯でボールをとらえる。それが、飛距離を伸ばし曲がりを抑える最適解となっています。
オンプレーン&インパクトフェーススクェア&芯でのコンタクトがベースとなるため、打ち出しはストレートな弾道になり、ホールのレイアウトやピンの位置にあわせて、わずかなカーブで右サイドか左サイドにボールを置いてくるドライビング技術が現代のツアーでは主流となっているのです。
今回見たPGAツアーの選手たちは、その新しい技術への移行が完璧にできていました。その代表例が、ロリー・マキロイでありマシュー・ウルフです。とくにマキロイの超高弾道ドローは、新世代スウィングのひとつの頂点のような完成度と言えます。
タイガー・ウッズも一時は大型ヘッドへの対応に苦慮していましたが、いまや完璧にアジャストさせてきています。ホールによって球筋を打ち分けるボールコントロールの技術は、改めて世界一ですね。一方、旧来型の球の曲げ方をしている選手は、バッバ・ワトソンやフィル・ミケルソンくらいかもしれません。
意図的に芯を外してギア効果で球を曲げるパーシモン時代の技術はいまや絶滅危惧種。我々ティーチングプロも、頭の中身やレッスンの内容を、この新しい潮流に合わせてアップデートしなければならないと強く感じます。
最後に、これは余談ですが、慣性モーメントが大きいドライバーを「曲がらない」と言えるのは、オンプレーンでフェースがスクェアな状態でインパクトするのが前提です。その意味で、トッププロにとって非常に恩恵の大きいクラブだと言えます。
プレーンからクラブが外れたり、インパクトでフェースが開いてしまうスウィングでは、大慣性モーメントのドライバーでもボールは曲がります。そういうミスが出やすいゴルファーは、コントロールしやすいよう長さや重さを調節したり、フェースが開いてしまう場合はシャフトのしなり戻りでフェース面を戻すといったアジャストが必要。それがクラブ選びの際には重要だと思いますので、参考にしていただければと思います。
撮影/姉崎正