2週連続優勝、鈴木愛はやっぱり強かった
先週の「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」に引き続き、日本で開催された米女子ツアー「TOTOジャパンクラシック」も制した鈴木愛選手。彼女の強さはご存知の通りでしょうが、強豪ひしめく今回の試合で2位のキム・ヒョージュ選手に対し3打差をつけての優勝は、非常に価値のあるものだと思います。
TOTOジャパンクラシックを制した鈴木愛(写真は2019年のmeijiカップ 撮影/岡沢裕行)
鈴木選手が勝てた理由、そのひとつめは「パット数」です。3日間の平均パット数は26.33という凄まじい数字。平均パット数2位のキム・ヒョージュ選手も27.00と素晴らしい数字ですが、それをさらに上回っています。バーディ数も1位で、3日間でボギーは1つだけ。それはもう強いですよね。
一方、パーオン率は42/54で13位と、決してずば抜けてはいない。つまり、グリーンを外した際にアプローチを寄せ、1パットで決めているからこそ、平均パット数が減っているのです。そう、ふたつめの強みは「アプローチのうまさ」です。
試合が行われた瀬田ゴルフコース北コースは名設計家の上田治が手がけたコース。砲台グリーンが多く、グリーンを外すとボールを上げるアプローチ、ピンが奥なら段を転がし上げるアプローチと、様々なバリエーションが求められらます。グリーンが早くて傾斜が強いので、奥につけるとピンには近くても、非常に難しいパットが残ってしまいます。
彼女のアプローチが光ったのは2日目の18番ホール。一番奥にピンが切られ、バックスピンがかかりすぎると戻ってきてしまうような難しいポジションに対してのアプローチショットでは、あえてスピンのかかりすぎない54度のウェッジを選びコントロールショット、ピンのそばにぴたりと寄せてバーディを奪いました。その判断力と技術力は、やはり鈴木選手のレベルの高さを物語っています。
そのアプローチにつながるのが「アイアンショットの精度の高さ」です。パー5ならしっかりバーディをとれるエリア、パー4なら外してもパーをとれるエリアにボールを運べているんですよね。
これはスウィングのテンポが変わらないため。手先でなく、下半身の大きい筋肉を活用して打つことで不変のテンポを生み出しています。これらが、優勝争いのなかでも変わらずにプレーできていたことにつながっているでしょう。
TOTOで見えた世界の選手たちの対応力
TOTOの最終結果を見ると、2位以下には米女子ツアーの選手がひしめいています。米女子ツアー選手と日本の選手との差は、アプローチとパッティング、いわゆるショートゲームと、アイアンショットの精度でしょう。米女子ツアーでは最終日にピンを積極的に狙ってスコアを伸ばさないと優勝できないような試合展開が多く、実際に2位のキム選手は最終日を6アンダーで回っていますし、3位のミンジー・リー選手も4アンダーです。
練習日では慣れない日本の高麗芝の感触を確かめながら様々なバリエーションのアプローチ練習をしている米女子ツアー選手の姿が印象的でした。世界の様々なコースでプレーしている経験から、引き出しの多さや芝への対応力が非常に高いんです。
そういった意味では、彼女たちにスコアの伸ばし合いで競り勝った鈴木選手は、もちろん長距離移動や芝への適応といった環境面の難しさはあれど、十分米女子ツアーで戦っていける実力を現時点で持っていると言えます。
2週連続優勝によって賞金女王の座へ大きく前進した鈴木選手。目下その称号に一番近い位置にいるシン・ジエ選手との差は、700万円弱。ただ、賞金ランク3位の渋野選手との差も、約700万円。今のところ渋野選手が一歩遅れているような印象もありますが、このままでは終わらないでしょうし、なにが起きてもおかしくない賞金差です。
残る試合は3試合。いまだ日本女子ツアーでの賞金女王の称号を手にしていないシン・ジエ選手と、去年逃してしまった称号を再び取り戻したい鈴木選手、ツアールーキーにして賞金女王へ手が届く位置にいる渋野選手。この3名が最終日最終組、一堂に会する、なんていう可能性も十分ありそうですよね。そのときにどんなゴルフを見せてくれるのか、非常に楽しみです。