転機は30代後半で患った「盲腸」がきっかけ
賞金ランク上位者に与えられる賞金シード。そのハードルを今季まで22年の長きに渡り超え続けてきたのが、藤田寛之だ。
「誰も僕がここまで、とは予想してなかったんじゃないですか? 自分でもビックリです」(藤田)
実はこの「22年」が近年では、連続賞金シード権獲得の“壁”になっていた。昨年、手嶋多一が「22年連続シード」で記録ストップ。今季は同じ「22年連続シード」の谷口徹も現在賞金ランク100位とこの記録が途切れることが濃厚(ただし、谷口は昨年の日本プロ優勝の資格で5年シードを持っている)。
「シード権というのはやっぱりみんなが獲りたい。今では自分も年間の第1目標に掲げています。なにが欲しいって言えば、シードが欲しいですからね、プロゴルファーは(笑)。地味な記録かもしれないですけど、1年でも長く続けたら、とは思っています」
では、長く活躍できる秘訣は何なのか? 転機は30代後半で迎えたシーズン。盲腸にかかり、病気により体重を落とすと、一気にパフォーマンスを落とす。その後、体の各所にケガや故障を抱えることになったという。
「そのときはもう、あと何年(賞金シードを続けられるか)? ではなく、来年もしかしたら……というぐらいだった」
それまでは「ただ何となく」だったウエイトトレーニングやケアに対し本腰を入れ、体のメカニズムや構造などの知識を学び、トレーナーと契約し、決められたメニューを必ず継続して行うようになったという。今ではヨガにも熱心に取り組む。
「それからですね。ゴルフも体に関しても『継続』を意識し出したのは。もともと僕は体が小さく、筋肉量も少なかった。今になったら分かるけどコンディションとか体力的な面は、加齢でベースがどんどん削られるけど、40歳を超えると実はもっと必要な要素になる。その前からコツコツとやったぶん今、少し人よりも長持ちする体になったのだと思いますね」
手嶋と故・杉原輝雄氏を抜き、来季は歴代単独2位の23年連続での賞金シードでツアーに出場。残るはジャンボこと尾崎将司の「32年連続シード」という厚い壁が残る。
「知ってますよ。ジャンボさんでしょ? でも、そこを意識するのではなく、今まで通り1年1年、1日1日の積み重ねでしかないから。記録は結果的なもの。そのためにゴルフをやっているわけではないですが、まだ気持ちのモチベーションはある。また勝ちたい、上位に行きたい、というね」
身長168センチのゴルフ界の小さな巨人がいつまでこの偉大な記録を継続するのか? 来年のツアーの見どころのひとつになるに違いない。