松山を彷彿とさせる劇的勝利
男子ツアー「三井住友VISA太平洋マスターズ」を制した金谷拓実選手。東北福祉大学の先輩・松山英樹選手以来8年ぶりとなる、アマチュア優勝となりました。
奇しくも松山選手が優勝したときと同じ「太平洋クラブ御殿場コース」で、最終ホールをイーグルで締める展開。以前からその実力が注目されていた選手ではありますが、今回の劇的な勝ち方は男子ツアーを大いに盛り上げてくれましたね。
幼少期から常に実績を出し続けていた金谷選手。日本アマチュアゴルフ選手権では最年少となる17歳での優勝も成し遂げました。センスやポテンシャルは非常に高いものを持っていましたが、池田勇太選手と優勝争いを繰り広げ1打差で競り負けてしまった2年前の日本オープンから、その悔しさをバネに練習やトレーニングに取り組んでいたようです。
試合の開催週、練習ラウンドの合間でもバーベルを持参し、ナショナルチームのメンバーとともにしっかり体に負荷をかけるトレーニングを行っていました。トレーニングの効果か、大学入学時より10キロも増量しています。ゴルフは急に上手くなるものではありません。目標を設定して普段から地道な努力を積み重ねた結果が今回の優勝へとつながっているんです。
また、所属するナショナルチームで学んだ戦略もプレーに一役買っています。グリーン上で上りの真っすぐのライン、いわゆる“ゼロライン”。そのライン上にボールを運ぶために、セカンドやティショットの狙い所を逆算していく綿密なマネジメントです。
練習ラウンドの段階で想定されるピン位置周辺の傾斜を専用の計測器で測り、しっかりゲームプランを練っている。こういった下準備が、崩れない安定感と戦略がハマったときの爆発力を生んでいます。
下半身重視のスウィング
金谷選手のスウィングを見ると、しっかり振ってもブレない下半身の強さが印象的です。バックスウィングは下半身で始動し、その動きに上半身が付いてくるような形。上下の捻転差をスウィングの初期段階から作っています。
トップから切り返しの動きも非常にスムーズ。ヘッドがターゲットのやや左を向くレイドオフの位置からしっかりスウィングプレーン上に乗っています。インサイドからクラブが入ることで、エネルギーロスのないインパクトへ向かっていきます。
ダウンスウィングも下半身から動き始め、腕が体に巻き付くように下りてくる。体の回転を活かしたスウィングです。これは上半身に力が入っていないからこそ作ることができる捻転差のおかげと言えますね。
インパクト後のヘッドに注目してみると、フェースターンが抑えられていることがわかります。体の回転でボールをつかまえているので、手を返す動きはフォローに入ってから。このターゲット方向に押し出すようなスウィングは、最新の大慣性モーメントドライバーとも非常にマッチしていますよね。
今大会4日間の平均飛距離は284.38ヤード。ナショナルチームでの経験から海外での飛距離の重要性を実感している金谷選手にしてみれば、飛距離をもっと伸ばしていきたいところではあると思いますが、たとえば地面反力をとりいれるなど、飛距離の伸びしろはまだまだありそうです。
現在大学在籍中の金谷選手が今回の優勝を受けてプロ転向するのか、それともアマで続けるのかが気になるところですが、いずれにせよ行く末が非常に楽しみな選手ですね。