「今」結果を出したいならばやさしいクラブは“アリ”
上達するに従って、難しいクラブを使いたくなるのはゴルファーの人情ですよね。アイアンをポケットキャビティからハーフキャビティにしたり、ドライバーもプロモデルにしたり、リシャフトをしてみたりと、もっと上を目指すためにクラブを見直すのは自然なことです。
ただ、悲しいかな、なかなかそれが結果を伴わなかったりもします。難しいクラブはやはり難しいということもあり、スコアはどうしても伸び悩む。それで何年か停滞期を過ごすと、「やっぱりやさしいクラブのほうがいいかも……」と考えが変わってきたりします。
実はこれは私自身が歩んできた過程でもあります。そして私には、そこそこ上手くなり、プロモデルでビシッと揃えていた頃、大型でミスヒットに強い“やさしいアイアン”をたまたま手に取ったところ、明らかにパーオン率が上がり、望外の好スコアが出たという成功体験があります。
ですので、「今」結果を出したいのであれば、やさしいクラブに替えるというのは大いに賛成です。誰よりも結果を求めるプロたちが、思ったよりもやさしいクラブを使っているのは大いに参考にしたいところです。
ただ一方で、アマチュアゴルファーがさらに上を目指そうとした場合。常時70台でプレーするといったレベルを目指すのであれば、やはり難しいクラブは必要。それには理由があります。たとえば残り180ヤードの状況。ユーティリティであれば、多少ミスしても問題ありませんし、軽く振って乗せることができます。
ただ、その体験を積み重ねると、やはり5番アイアンを頑張ってビシッと振り抜く、といったことをやらなくなってしまうんですね。普段のラウンドもまた練習だと考えた場合、ちょっと頑張って振ったときにはじめていい当たりが出るという取り組みは、日常的にやっておきたいのです。それに、必要ないという人もなかにはいますが、弾道を左右に打ち分けたり、高さを低く抑えたりといったことは、ある程度上級者向けのクラブでないとやりにくいですからね。
また、それとは別に「飛ぶクラブ」にはつねに警戒したほうがいいと思います。アイアンでもドライバーでも、飛距離が簡単に出るクラブというのは、総じて低スピン。スピンが少ないといわゆる一発の飛びは出ますが、球筋のコントロールはもちろん、弾道自体の安定度が犠牲になります。
フィッティングなどでもっとも見栄えのいい数字が出るのはスピン量の少ないドライバーである場合が多く、そういったクラブは往々にしてコースで結果に結びつかなかったりします。クラブを選ぶ際は、「飛ぶ」「やさしい」はどちらも魅力的ですが、それぞれ「安定感」と「振る努力」が犠牲になる可能性を秘めている。そのことを忘れたくないですね。