バナナスライスの昭和、プッシュアウトの平成を経て、令和はどうなる!?
1ヤードでも遠くへ飛ばしたい! それはいつの時代のゴルファーにとっても憧れであり、夢でもあった。ゴルフクラブ、とくにドライバーはそうしたニーズに応えるために“飛距離アップ”に開発の力点をおいて進められてきた。
ボール初速・打ち出し角度・バックスピンという飛びの三要素のバランスを最適化することで、キャリーは(あくまでもその人なりに、ではあるが)伸びるようになった。そんなに飛ぶようにはなっていない!という人もいるだろうが、数年前と飛距離が変わっていないのであれば、それは効果があったとみていいのではないだろうか。加齢とともに飛ばすチカラは衰えているはずなのだから。
ただし、この飛距離アップがスコアアップにつながったのか、ということについては、よくよく考えてみなければならない。バナナスライスと言われた大きな曲がりによってOBするシーンは最近見かけなくなったが、インパクト直後から右にボールが飛び出し、直進弾道で右の林やOBゾーンに打ち込んでしまうケースは非常に良く見る光景となったような気もする。大スライスから大プッシュに球筋が変わっただけで、相変わらず右のOBが怖い! というアマチュアは多いのだ。
実際問題、本当に飛距離アップという願いが叶えられているのならば、ゴルフはさらに“難しいもの”だと感じられるようになっていてもおかしくはない。なぜなら、同じフェースの向きならば、キャリーが伸びるごとにブレ幅が大きくなり、フェアウェイをとらえることが困難になっていくからだ。大きく飛ばし、かつフェアウェイをとらえるには、飛んでいなかったときよりもインパクトでフェースを目標に対してスクェアに当てるシビアさ、確かな“腕前”が求められるのである。
飛ぶようになったのに、スコアがちっとも良くならないのは、飛ぶようになったけど相変わらずいいところからセカンドショットを打てていないから、なのかもしれないのだ。
フェースの向きがコントロールできる、自分なりの長さの上限を知ろう。
単に遠くへ飛べばいいわけではない。やっぱり、狙った方向に飛ばしたい! バナナスライスの昭和、プッシュOBの平成を経て、多くのゴルファーはそう考えるようになってきたのではないだろうか。市場のニーズを示すこんな話がある。
「9月に発売したNEWegg5500ドライバーには、45.25インチモデルと1インチ短い44.25インチの“インパクトスペック”を用意しています。販売開始約2ヶ月を経過した11月時点の売り上げ構成をみると、短い“インパクトスペック”のほうが20%多く売れている状況。当社では46インチがスタンダードだった10年前から、43.5インチのeggインパクトなどを発売してきましたが、長尺と短尺を同時発売し、販売本数で短尺が先行したのは初めての展開です」(プロギア・広報)
相変わらず“飛距離アップ”をうたうドライバーが多いなかで、“ぞっとするほどやさしい”という新たな切り口でPRを続けているNEWegg。ゴルファーもフェアウェイの中で飛んでくれる“安心感”に、実はホッとしているのだと思う。
「長さよりも慣性モーメントと重心アングルの大きさを重視し、平均飛距離を伸ばすことを考えて開発したのがeggインパクトです。ティショットだけで飛距離アップを考えるのではなく、eggアイアンなど2打目以降に使うクラブでも同様にやさしさを重視し、セット全体で着実に平均飛距離を上げていく。そうすることで実質的な大きな飛距離の底上げになると考えています」(プロギア・広報)
実は筆者も個人的な試みとして、40インチのドライバーでプレーしているが普段、我々がプレーする6000ヤード前後のコースセッティングであれば、ティショットは200から220ヤード飛べば十分だと感じている。
そう考えれば、ティショットは毎回ドライバーである必要はないし、300ヤード飛ばそうとするよりもフェアウェイにボールがあった方が、2打目以降の成功率も高く、スコア的にも大崩れなく楽しい一日を過ごせることに気がつけるのである。
クラブの長さは、フェース面のコントロール性に大きく関わっている。フェアウェイという“枠”の中にしっかりと打ち出していける、スクェアインパクトしやすい長さは何インチくらいなのか? 愛用ドライバーを短く持って打つなどして、探ってみていただきたいと思う。この扱いやすい「長さの上限」を知ることが、新しい時代のゴルフを始めるきっかけとなる。