今年3月、前週6位と活躍したことから興味を覚え“新人女子プロ・渋野日向子”を取材したプロゴルファー・中村修。それから約8カ月、渋野は賞金女王争いの真っ最中にいる。その過程を追ってきた中村が、誰も予想できなかった成長の裏側にある、地道な努力について語る。

「まだまだ下手くそで足りないところばかりだと思ってます」

渋野選手に初めて取材したのは今年3月のこと。彼女にとっての今季初戦となった「ヨコハマタイヤゴルフトーナメントPRGRレディス」での6位に入る健闘に、ふと興味を覚えたからでした。

画像: 今季5勝(1勝は全英女子オープン)を挙げた渋野日向子(写真は2019年の資生堂アネッサレディスオープン 撮影/岡沢裕行)

今季5勝(1勝は全英女子オープン)を挙げた渋野日向子(写真は2019年の資生堂アネッサレディスオープン 撮影/岡沢裕行)

青木翔コーチとは以前から顔見知りだったこともあり、翌週「Tポイント×ENEOS ゴルフトーナメント 」の会場で話を聞いてみると、渋野選手はこんなことを話してくれました。

「まだまだ下手くそで足りないところばかりだと思ってます。でも、考えすぎずに思い切り振るドライバーが持ち味かなとも思います」

青木コーチは「今後3年間でプロとしての体づくりや、アプローチなど基本的なところを高めていく」と話していました。このころのことを思い出すと、なんだか早くも懐かしいような気持ちになります。

渋野選手に話を聞くきっかけとなった「PRGRレディス」を制したのは鈴木愛選手。当時、ツアー会場で遠慮がちに練習場所を探していたツアールーキーは、今、その鈴木愛選手と賞金女王を争うライバルとして戦っています。

強い相手に挑み、成長する姿は、まるで漫画の主人公!?

渋野選手を見ていると、まるで漫画の『ドラゴンボール』や『北斗の拳』を読んでいるような気分になるときがあります。これらの漫画の主人公は、憧れの人や、目標とする人に挑み、ときに敗れ、打ちひしがれながらも挑戦をやめず、成長し、ついには強敵をも倒していきます。渋野選手は、そんな主人公たちに印象が重なるのです。

画像: 渋野は「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」で初優勝を飾った(撮影/岡沢裕行)

渋野は「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」で初優勝を飾った(撮影/岡沢裕行)

本人が言っていたように、「足りないところばかり」だった3月から、ショット、パッティング、アプローチ、メンタル……強いところを伸ばし、弱いところを練習で克服し、次々と目標をクリアして、ルーキーながら賞金女王が狙える位置にまで登ってきました。

先週の「大王製紙エリエールレディス」では「前週に予選落ちしたことで、考える時間ができで、賞金女王のことを考えずに自分のためではなく応援してくれるファンやサポートしてくれるみんなのために頑張ろうと思った」と語っていました。「みんなのために」という気持ちで鈴木愛選手とのデットヒートを制し、優勝をつかみ取るのですから、その人間力に感動すら覚えます。

フェースをスクェアに当てるセンスが抜きん出ている

日本女子オープンからは、台湾での試合も含め、彼女が出場した全試合の全ラウンドを都合がつけば練習日も含めてつぶさに見て来ました。その中で感じるのは、渋野選手はターゲットに対してフェースをスクェアに当てるセンスが抜きん出ているということです。これは、幼少期からソフトボールをやってきたことで得られたバットコントロール、そして狙ったところに投げるピッチャーの経験が育んだものだと思います。

画像: 彼女のプレーを一目見たいと多くのファンが会場に押し寄せた(写真は2019年の 日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯 撮影/岡沢裕行)

彼女のプレーを一目見たいと多くのファンが会場に押し寄せた(写真は2019年の 日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯 撮影/岡沢裕行)

思い切りの良い飛ばし、強気のパッティングも素晴らしいですが、私は彼女の芯に当てる技術、ショットのブレない方向性こそが最高の武器だと思います。

G410ドライバーとの相性も抜群にいい

渋野選手は、ダウンスウィングの早い段階でフェースをボールに向ける、フェースローテーションの少ないスウィングをするタイプで、アドレスではハンドダウン(手の位置が低い)に構えます。特徴的な構えに対して、使用中の「G410プラス」ドライバーのネック調整機能を使ってライ角を3度フラットにすることで対応しているのですが、昨年までのモデルではこの対応ができず、コントロールしきれない部分もあったと言います。

画像: ハンドダウンに構える渋野日向子はライ角を3度フラットにしている(写真は2019年のTOTOジャパンクラシック 撮影/岡沢裕行)

ハンドダウンに構える渋野日向子はライ角を3度フラットにしている(写真は2019年のTOTOジャパンクラシック 撮影/岡沢裕行)

「G410」はフェースの開閉を行わないスウィングに合い、弾道のブレが少ないのが特徴のドライバー。このドライバーの登場年と自身のルーキーイヤーが同じということも、渋野選手の持って生まれた星の強さでしょうか。

8カ月前と変わらない素直さがあるからこそ、練習に打ち込める

自然に恵まれた岡山で育ち、飾らない二十歳の女の子。そんな印象は今でも変わりません。もちろんテレビ取材などをこなすうちに話す言葉を選んだり、洗練されてきてはいます。ですが、今でもわからないことには「わかりません、すみません!」と答えますし、記者が教えてくれた耳寄りな情報には「そうなんですか、知らんかった、ありがとうございます!」と答えるなど、とにかく素直な点は少しも変わりません。

画像: 賞金ランク3位で迎えた最終戦。果たしてどんなプレーを魅せてくれるのか、渋野日向子に注目だ(写真は2019年のNEC軽井沢72ゴルフトーナメント 撮影/大澤進二)

賞金ランク3位で迎えた最終戦。果たしてどんなプレーを魅せてくれるのか、渋野日向子に注目だ(写真は2019年のNEC軽井沢72ゴルフトーナメント 撮影/大澤進二)

その素直さが、トップ選手との技術の差を埋めるため、膨大な時間を練習に費やせることにつながっています。彼女は決して近道や一段飛ばしで階段を登ってきたわけではなく、日々の努力によって、一段一段階段を登り、海外メジャーを含めた年間5勝を挙げ、今週の最終戦を賞金ランク3位で迎える位置までたどり着いたのです。

成績だけを見るときらびやかですが、その背後には、使い潰したウェッジが今シーズンだけで6本とか7本目になるほどの練習量がある。もちろん、本人だけの力ではなく、それに付き合うコーチや、周りのサポートも彼女の力になっています。

今週はいよいよ最終戦。一体どんなフィナーレを見せてくれるのでしょうか。目を離さずに見届けて来ます。

This article is a sponsored article by
''.