勝ったのはタイラー・ダンカン
年内のPGAツアー公式戦は先日ジョージア州・シーアイランドで行われた「RSMクラシック」でひとまず終了。年内最後の優勝者は、過去ミニツアーで数試合優勝しただけ、というPGAツアー68試合目のタイラー・ダンカンだった。最終日、上がり4ホールで3バーディを奪い、なんとかウェブ・シンプソンとのプレーオフにこぎつけたダンカンは、プレーオフ2ホール目で決着をつけ、ツアー初優勝を飾った。
「正直言って、今はなんと言っていいかよくわからない。ただここでプレーできて優勝することができたことがとても嬉しい。特にプレーオフではナーバスになったけど、感情をコントロールして、深呼吸し、こうして優勝することができた。心を静かに落ち着けて、自分がやってきたことを信じてプレーしたんだ。ここ2〜3ヶ月は本当に一生懸命に取り組んできたし、こうしてそれが報われてよかったよ」
ダンカンはプロ入り後10年経過しているが、最近やっとコンフェリーツアーからPGAツアーに上がってきたばかりのルーキーで、直近ではバミューダ選手権で18位タイに入ったのが最上位。特に最近ではジムで体を鍛え、パッティングに注力して練習していたという。彼は中西部の出身で、冬場は降雪のため屋外では練習できない環境に育ったが、インドアでパッティング練習やドライバー以外の打球練習を重ねてきた。同じく真冬には大雪でゴルフの練習ができない環境に生まれ育った選手にウィスコンシン州出身のスティーブ・ストリッカーがいるが、同じような環境でゴルフを覚えてきたと言える。
「インドア練習場の下はコンクリートになっているが、ドライバーで打ちたいティの高さに調整できないからドライバーは練習しなかったんだ。ウッドを打つとしても3Wくらいだったかな。現在はフロリダのポンテ・ベドラ・ビーチに住んでいるから、TPCソーグラスで練習できるし、最高の環境だよ」
TPCソーグラスといえば、第五のメジャーと言われるPGAツアー最高峰の「プレーヤーズ選手権」が開催されるコースだが、彼は練習環境を求めてこの地に引っ越してきたという。1年中天候もよく、ゴルフの練習が毎日思い切りできる最高の場所。そういった環境作りも彼の初優勝への大きな好材料となったに違いない。2日間ノーボギーでプレーしたが、これも過去、彼のゴルフ人生では初めてのことなのだという。
「何よりも、自宅から通えるプレーヤーズ選手権に出られることがただただ嬉しい。そしてもちろん初めてオーガスタに行けることも嬉しいね。(優勝したことで得られる)いろんな特典を楽しみにしているよ」
叔父のアンドリュー・ジョンソンもまたプロゴルファーだったというゴルフ一家だが、叔父はネーションワイドツアー(現在のコンフェリーツアー)でプレーしていた選手。叔父を見て育ってきたダンカンだが、マスターズやプレーヤーズ選手権といった世界のビッグイベントを舞台に戦ったことはない。ダンカンは優勝した後のコメントから想像するに、今ひとつ今回の優勝の重みがピンときていないようだが、この1勝がもたらす意味合いは非常に大きく、彼の人生を大きく変える1勝となった、とあとで振り返った時にしみじみと実感するかもしれない。
「世界が変わるとは思わないし、どのくらい変化が起こるのかもよくわからないけど、ただフェデックスカップランキングを登りつめ、シーズンの最後にはイーストレイクでプレーできれば最高だね。これからもやるべきことはたくさんあるが、フェデックスカップ・プレーオフに出場できればこんなに素晴らしいことはない」
ブレンドン・トッドは3日目を終えて首位だったが……
さて、ここのところ大スランプから2連勝を挙げた、時の人ブレンドン・トッドはどうだったのだろうか。
バミューダ選手権、マヤコバクラシックで2週連続優勝を飾っていた、現在絶好調のブレンドン・トッドは、3日目を終えてまたもや首位に立っていた。しかし、最終日は13試合ぶりにオーバーパーの72を叩き、3週連続優勝はならず。もし達成されていれば、2006年にタイガー・ウッズが達成して以来の記録だっただけに、惜しい結果に終わった。
「ちょっとガス欠気味だったかな。優勝のチャンスはあったが、思うようにいかなかった。いいスイングをしていたと思うけど、ちょっと攻め過ぎてしまったかもしれない。風が強く、寒くなってタフなコンディションだった。昨年はここで久しぶりに予選通過を果たした特別な試合だったが、ここでの通過がその後大きな正しい道へ進むステップになったし、ポジティブに捉えられる1週間だった」
来年1月のハワイの試合までは、選手たちもひとまず小休止。プレジデンツカップ に出場する者や、非公式試合に出る者、クリスマス休暇を家族で楽しむ者もいれば、来年に備えてみっちり体力作り・練習に励む者…..もいるだろう。来年明けのツアー再開が楽しみである。