操作性の高いマッスルバックからロフトを立たせたディスタンス系まで、アイアンの選択肢はとにかく幅広い。同シリーズであっても3~4モデルほどラインナップされていて、どれを買えばいいのかと迷いがちだ。そんなアイアン選びの基準を、ギアライター・高梨祥明が改めて考えた。

モデルバリエーション急増! 2019アイアン事情を整理してみた

2019年ももう残りわずかだが、今年は“アイアン選び”についていろいろと考え、またアイアン選択についての原稿もたくさん書いたように思う。現在のゴルフ市場には、驚くほどたくさんの最新アイアンが存在し、“いったいどれを買えばいいのか?”と悩んでしまうゴルファーも少なくないからだ。今回はそのおさらいをしてみたいと思う。

画像: アイアンの場合、同シリーズの中で3~4モデルラインナップするパターンが多い(撮影/有原裕晶)

アイアンの場合、同シリーズの中で3~4モデルラインナップするパターンが多い(撮影/有原裕晶)

最新アイアンの主だった種類(構造)は次の通りである。

【1】マッスルバックアイアン(単一素材/鍛造)
【2】ハーフキャビティアイアン(単一素材/鍛造)
【3】フルキャビティアイアン(単一素材/鋳造)
【4】ポケットキャビティアイアン(複合素材)
【5】中空アイアン(複合素材)

これをロフト角で分類してみると、

ノーマルロフト → 【1】、【2】

ストロングロフト →【3】、【4】、【5】

となる。

ロフト設定は厳密にはモデルによって幅があるわけだが、基本的には【1】、【2】以上にロフトを立てたモデルほど、複雑な構造・製法になっている。なぜなら、ウッドのように深重心化しなければインパクトロフトがつきにくく、ボールが上がらなくなるからだ。

深重心にすれば重心が上がってしまうため、同時に低重心化を図る。これがセットとなっている。また、深重心にするにはフェースが軽い方がよいため、フェースを薄くして割れないチタンやマレージングなどの高強度素材にするのもセオリーである。

まとめると【3】、【4】、【5】は、ロフトを立てて、フェースを薄くすることでボール初速をアップ。深・低重心化でロフトが立っていても打ち出し角度をキープ。これにより、キャリーが伸びる(飛ぶ)ということである。こうすることでメタルウッドのような性格を持ったアイアンとなるわけだ。

マッスルも打てるプレーヤーが、200ヤード打つための7番ではない

メタルウッドのような性格を持ったアイアン。それを通称、ディスタンス系アイアン、なんていったりしている。プロゴルファーや腕に覚えのあるアマチュアテスターが登場し、7番で190ヤード飛んだ! などとPRされている、ここ数年で高い人気となっているカテゴリーだ。

私もこうした最新アイアンを打たせていただくことがあるが、確かに、7番で5番アイアンのような飛距離が出るモデルも多いと実感。先に書いたカテゴリー【1】、【2】のアイアンに照らせば、まさに5番のようなロフトに7番がなっているわけだから、それは当たり前のような気がしないでもない。

画像: 同じ7番でもモデルごとにロフト角がまるで違う、なんてことはザラ。7番で昔の5番並の飛距離が出るアイアンも多数存在する(撮影/野村知也)

同じ7番でもモデルごとにロフト角がまるで違う、なんてことはザラ。7番で昔の5番並の飛距離が出るアイアンも多数存在する(撮影/野村知也)

そしてそう思ってしまった場合、「PWがロフト37度じゃあさ、100ヤードは何番で打てばいいの? 結局、ウェッジを増やさないとダメなんじゃん! 意味ないよね」という結論に、だいたいは至るのだ。去年の今ごろの自分は、確実にそう考えていたような気がする。しかし今年はアイアンについて多くのことを考えたせいか、違う考え方になっている。

それは、ゴルファーにはそれぞれ「7番は何ヤード」という長年染み付いた飛距離のイメージがある、と気付かされたからだ。例えば、ずっと7番は135ヤードだと思ってゴルフをしてきた場合、加齢やその他の要因によって飛距離が落ちてきても容易にはそのイメージを変えることができない(認められない)のだ。

ディスタンス系と呼ばれるアイアンの存在価値は、マッスルバックの7番で175ヤード打てる人が打って、195ヤード飛ばせることではない。飛距離が落ちてきても7番でいつものように135ヤードを打てる、そのためのモデルなのである。おそらく、これを使う人はロフトが何度になっているかなんてまったく興味がないはず。何ヤード飛ぶかが大事なのだ。

「PWがロフト37度じゃあさ、100ヤードは何番で打てばいいの? 結局、ウェッジを増やさないとダメなんじゃん! 意味ないよね」

そう思うなら、他のアイアンを使えばよいのだ。選択に迷うほど、市場には数多くのアイアンが出ているのだから。アイアンはドライバーではない。1ヤードでも遠くに飛ぶことが決していいことではないはずである。それなのに、7番で190ヤード飛んだ、200ヤード飛んだと、元々マッスルでも問題なく飛ぶ人たちが打って、その飛距離をPRに使ってしまうこと。そうしたことが“ディスタンス系”なるアイアンらしからぬ呼称を生み、飛ぶほど進化したアイアンであるかのような誤った認識を広めてしまうことに繋がっているのではないだろうか。飛ぶアイアンほどいいクラブなのであれば、それこそマッスルもCBもいらないではないか。

この一年、多様化するアイアンについて色々考えたり、記事を書いたりしてきたが、それをまとめるならば、こうなるだろう。

最新アイアンのロフトを云々するより、もっとゴルファー自身が“7番で何ヤード打てればいいのか”とよく考え、決めることが大切。

たくさんあるアイアンの中から、それが叶えられるモデルを実際に打って選べばいいだけなのだ。ターゲット違いのモデルを打って、これは飛びすぎだ! これは難しい! と不平をいっても意味がない。これは俺のアイアンじゃない、そう思えばいいだけだ。自分にとってはトゥマッチでも、これがピッタリ! と思うゴルファーが必ずいる。だからこそ、こんなにたくさんのバリエーションがあるのだ。1ヤードでも遠くへ、という基準でのクラブ選びはアイアン的ではない。7番で何ヤード打てるアイアンが欲しい。明確な基準を作って、様々なアイアンを打ち比べて欲しいと思う。

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