史上4人目となるアマチュア優勝を挙げた金谷拓実のセッティングをみると、アイアンセットの上に飛び系アイアンが入っている。“コラボアイアン”のメリットとは? ゴルフトレンドウォッチャー・コヤマカズヒロが考えた。

i210の5番の上にG700の5番をセット

「三井住友VISA太平洋マスターズ」で史上4人目のアマチュア優勝を果たした金谷拓実。彼の特徴的なハンドアップスタイルのパッティングを二回に分けて紹介したが、アイアンのセッティングも一風変わっている。

14本全てをピンのクラブで揃える金谷。アイアンは、渋野日向子、鈴木愛など女子プロにも使用者が多い「i210」を5番からW(PW相当)まで入れていて、その上に飛び系アイアンの「G700」の5番を入れている。5番アイアン2本セッティングなのだ。

画像: ピン i210を5~Wまで入れ、その上にはG700の5番アイアンを使う金谷拓実(写真は2019年の 三井住友VISA太平洋マスターズ 撮影/姉崎正)

ピン i210を5~Wまで入れ、その上にはG700の5番アイアンを使う金谷拓実(写真は2019年の 三井住友VISA太平洋マスターズ 撮影/姉崎正)

カタログ値を見てみると、「i210」の5番アイアンのロフト角は26度。「G700」の5番は21.5度だ。その上は「G410ハイブリッド」の19度が入っていて、ロフト角だけ見ると、あまり均等な感覚ではないが、クラブの特性を加味して、金谷なりの飛距離の階段を作っているのだろう。

PGAツアーの屈強な選手の中には、アイアンセットの上に、中空やキャビティタイプのよりやさしいモデルの3番を入れるケースが少なくない。これは、難しいロングアイアンの距離をより高い弾道で止めることと、ミスの許容性をあげることが目的だ。

画像: 金谷が5番だけ採用している飛び系アイアン「ピン G700」

金谷が5番だけ採用している飛び系アイアン「ピン G700」

金谷も同様の意図があると思われるが、海外選手に比べてパワーでは劣ることもあり、5番アイアン2本という特異なスタイルになったと思われる。「三井住友VISA太平洋マスターズ」の最終日、最終ホールではこの飛び系「G700」の5番でセカンドショットを放ち、優勝を決めるイーグルへの布石とした。

そのショットは低いフェードで、正直、ミスショット気味にも見えたが、それでもグリーンに届き、段の上まで駆け上がってチャンスにつけた。この、ミスしてもしっかりと距離が稼げる許容性の高さが、飛び系アイアンの大きな利点のひとつだ。

実は、遡ること一年半、筆者もこの飛び系アイアン「G700」とのコンボセットを試したことがある。それは昨年の全日本アマチュアゴルファーズ選手権の地区決勝で、バックティからのプレーではどうしても距離が残りがちなので、175〜200ヤード弱の距離を少しでも楽に打ちたいという発想からだった。それまではこの距離で、UTを入れたり、ロングアイアンを入れたりしたが、成功率が低く、距離の差も出にくかった。

画像: トレンドウォッチャー・コヤマが採用した6番と7番がそれぞれ2本ずつ入ったセッティング

トレンドウォッチャー・コヤマが採用した6番と7番がそれぞれ2本ずつ入ったセッティング

いつも使っている軟鉄鍛造アイアンは6番から入れて、その上に「G700」アイアンの6番と7番を入れた。番手の並びは「6、7、6、7、8、9…」と続く、6番と7番が2本入る奇妙なセッティングだ。練習ラウンドではフルバックから「73」と望外のスコアが出て、これはいけるのではと思ったものだ。

結果、予選は通らなかったのだが、「G700」は活躍してくれた。一般的なアマチュアにとって、180〜190ヤードが残るショットを高確率でグリーンオンするのは望むべくもないが、軽く打っても、キャーンという威勢のいい高い打音でしっかりと距離を出してくれるし、ミスヒットへの許容性も高い。UTと違って、アイアンならではの方向性の良さもある。

しかし、恐る恐る打っていた最初は良かったのだが、「G700」があまりにも他のクラブと挙動が違いすぎて、最後まで違和感が拭えなかったため、結局、早い段階でコンボ作戦は諦めてしまった。

「G700」は、かなり重心距離が長く、筆者の場合は右に飛ぶことが多かった。そのため、このクラブを持ったときはフェースを開きすぎないように、かと言って閉じすぎないように注意して打っていたのである。いかにもセットの流れが悪かった。

コンボアイアンでセッティングするカギは、出来るだけ同じ感じで振れるように調整することだ。ヘッドの挙動も近いものが好ましい。シャフトが同じでも、ヘッドが違うと同じ感じでは振れない場合もあるので、その調整は繊細なものになる。

金谷はそのあたりの調整が上手そうだ。道具の機能をうまく活用してウィークポイントを補っている。このあたりは我々、アマチュアも見習えるだろう。

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