アスリートモデルながら、ロフトはスタンダードよりわずかにストロング。飛び系と昔ながらのロフト設定の中間のアイアンが最近人気を集めている。人気の秘密を探るべく、ギアオタク店長ことクラブフィッター・小倉勇人が代表的な4モデルを試打。性能を解説してもらった。

飛び系とアスリート系の中間モデル

市場で人気のアイアンと言えば、飛距離性能の高いモデル、いわゆる「飛び系アイアン」と呼ばれるモデルだ。飛び系アイアンは、7番アイアンでロフト角26度前後と、飛距離を最大限に追求したモデルが主流だが、最近ではロフト角29~31度に設定し、なおかつ形状はアスリートモデルというアイアンが売れているそうだ。

画像: ロフト29~31度の“ちょい飛び”アイアン4モデルを試打!

ロフト29~31度の“ちょい飛び”アイアン4モデルを試打!

アスリート向けアイアンのロフト設定は同じく7番アイアンで33~35度だから、飛び系とアスリート向けのちょうど中間に位置いわば「ちょい飛びアスリートモデル」だ。これらのモデルの人気の秘密は何なのかを探るべく、クラブフィッターの小倉氏に試打、検証をお願いした。

飛びと操作性のバランスがいい「RMX120」

最初に試打したのは、ヤマハ「RMX120」。ヘッド素材にクロムモリブデン鋼を使用しているポケットキャビティでロフト角設定は7番で31度だ。

画像: ヤマハ「RMX120」(7番、ロフト角31度)

ヤマハ「RMX120」(7番、ロフト角31度)

普段自分が使っているアイアンは「7番で35度のアスリート向けモデル」だという小倉氏。それと比べると「1番手ぶん、10ヤードは楽に飛びますね」という。

「飛距離も出るし、それでいて弾道の高さは自分のクラブより若干高い。さらに打点のミスにも強い上に打感も良く、ドロー、フェードとある程度の弾道操作はできる。非常にバランスの良いモデルですね」と高評価だった。

“非常にいい顔”とは裏腹な飛距離性能が魅力「Xフォージドスター」

次に試打したモデルはキャロウェイの「Xフォージドスター」。アスリートに好まれる軟鉄鍛造(フォージド)キャビティで、単一構造の中で最大限の飛距離とやさしさを追求している。ロフト角設定は7番で29度だ。

画像: キャロウェイ「Xフォージドスター」(7番、ロフト角29度)

キャロウェイ「Xフォージドスター」(7番、ロフト角29度)

構えてみると「顔が非常にきれいですね」と見た目の良さに言及する小倉氏。

「アスリートモデルと同等なシャープな形状をしていながら一回り大きくすることで安心感もあります。打感はさすが軟鉄鍛造という柔らかい感触。このモデルも高さがしっかり出て距離も自分のモデルより10ヤードぐらい飛びました。操作性も十分です」とこちらのモデルも高評価だ。

8番の高さと“プラス半番手”のいい具合の飛び! 「P790」

次にテーラーメイドのP790を試打。中空構造を採用したモデルでフェースの反発を落とさずに打感、打音を向上させるためスピードフォームと呼ばれる充填剤が注入されている。ロフト角は7番で30.5度だ。

画像: テーラーメイド「P790」(7番、ロフト角30.5度)

テーラーメイド「P790」(7番、ロフト角30.5度)

「シャープな形状ですが、若干ブレードが長い印象がありますね。いかにも曲がらなそうです」

打ってみると「弾道が高い!」と驚く小倉氏。

「自分の8番アイアンぐらいは高さが出ます。それと他のモデルと比べると直進性が高く、若干つかまりを抑えてある印象があります。飛距離は自分のモデルと比べると半番手ぐらい、5ヤード程度でしょうか。アイアンは左に飛ぶとロフトが立つので思った以上に飛距離が出てしまうことがあります。そういったミスを抑えた仕様になっていますね」

アスリートやプロが嫌がるミスをなくしつつ、やさしさを追求したモデルと言えそうだ。

直進性が高く、飛距離性能も高い「T200」

最後はタイトリストのT200。ロング~ミドルアイアンにヘッドの1/3を超える重量のタングステンウェイトをトウ、ヒール両サイドに配置し、左右のブレを抑えた設計になっている。ロフト角は7番で30度。

画像: タイトリスト「T200」(7番、ロフト角30度)

タイトリスト「T200」(7番、ロフト角30度)

「このモデルもシャープな形状ながらブレードが長めに設計されていますね。直進性が高そうな見た目です。打ってみるとつかまりを適度におさえてある印象で左のミスをしにくいです。スウィング軌道通りの球筋で曲がりが少ない直進性の高い弾道が打てますね。今回のモデルの中ではシャフトが軽量という事もありましたが一番飛びました」

全モデルを打ち終わった小倉氏に、今回の“ちょい飛び”アイアン4本の性能を総括してもらった。

「今回試打したモデルでは、ヤマハのRMX120、キャロウェイのXフォージドスターは適度につかまり、多少操作もできる仕様。一方テーラーメイドP790、タイトリストのT200はややつかまりを抑えた仕様で直進性を重視した設計になっていると感じました」

アスリートモデルと同じ長さで打ちやすく、おまけに上がってちょっと飛ぶ

実際に打ってみて「人気が出るのも納得です」と小倉氏は言う。

「どのモデルも飛び系アイアンに多い長尺仕様ではなく、アスリート向けアイアンと長さはほぼ同じに設計されているのでミートのしやすさは変わらず、それでいて飛距離が少し飛び、ボールも上がる。そういう意味ではゴルファーのレベルをあまり問わない仕上がりになっています。これなら購入された方も大きな不満にはなりづらいので売れているのも納得できます」

アスリートモデルっぽい見た目で、やさしく飛ばせて飛距離も出るし、コントロール性能もある程度は有している。非の打ち所がなさそうだが、「あえて言うなら……」と小倉氏。

「スライスを抑えたい、ボールをしっかり操作したいなど、明確な意思を持ち、結果を欲するゴルファーにとっては少し物足りなく感じるかもしれませんね」

とは言え弱点らしい弱点はそれくらい。むしろ、多くのアマチュアにとって大きな武器になってくれる新ジャンルと言えそうだ。

協力/ユニオンゴルフクラブ

画像: 完・ちょい飛びアイアン www.youtube.com

完・ちょい飛びアイアン

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