目指しているのは「海外」ではなく「永久シード」
19日に行われた「LPGAアワード」に続き、20日に行われたGTPA(ゴルフトーナメント振興協会)ルーキー・オブ・ザ・イヤーも受賞し、ツアーメンバーでは唯一、2日連続で「新人賞」を受賞した稲見萌寧。「このような名誉ある賞を頂けて嬉しく思っています。来年はもっと優勝争いできる選手になれるように頑張りたい」と喜びを語った。
この日は1学年年上の渋野日向子(式は所用で欠席)、河本結や原英莉花に加え、1学年下の古江彩佳と5人での受賞。このうち来季、米ツアー挑戦を決めている河本結や、将来的な海外ツアー参戦を公言する渋野日向子や古江彩佳など、最近はこの20代前後の面々の口から「海外ツアー」というフレーズをよく耳にするようになった。
今季賞金ランキング13位に入り、そんな面々に劣らぬ実力を持つ20歳の稲見はどうなのか……聞いてみた。
「私の今の考えのなかには『海外ツアー』はまったくないですね」とキッパリ。
「これは私がプロゴルファーになってからずっと変わらない目標にしていることなんですけど、私の一番の大きい目標は『永久シード』を取ることなんです。もちろん海外は1回は挑戦してみたいな、という風には思いますし、たとえば来年、どこかの大会で優勝できて海外ツアーに出れる権利を得たら『出ようかな』と思いますけど」
現在、女子ツアーの永久シード選手は樋口久子、岡本綾子、ト阿玉、大迫たつ子、森口祐子、不動裕理の6人。ツアーで通算30勝以上が条件で、2004年に不動裕理が獲得して以来、じつに15年以上出ていない金字塔ともいえる大記録だ。
この間、選手たちの価値観にも変化があり、国内ツアーの勝利数よりも、より世界基準での成果を求める海外志向が強くなっているだけに、20代前後のプロゴルファーの思考では稲見の将来ビジョンはむしろ少数派になりつつある。思考の根底には何があるのか?
まずは何年も日本のトップ争う選手になってから。海外参戦はその後
「やっぱり私は日本人なんで、ずっと長く日本で輝いていたいなって思っているんです。プロになる前に私が憧れ、というか『こうなりたいな』と思ったきっかけが、そのとき2年連続で賞金王になっていたイ・ボミさんだったので。今も『日本で一番になりたい』という気持ちのほうが、『海外に挑戦したい』という気持ちよりも強いですし、一番の大きな目標に近づいていきたい気持ちも変わらないですね」
そんな稲見だが「生涯日本ツアー」を宣言したというわけではない。
「もし来年、世界ランキング75位以内に入れるまでになれたら、米ツアーのQTは受けに行きたいなとは思っています」。
ただ、これはあくまで「自分の力が世界ではどの程度なのか?」を知るためだという。
「日本で1番になるためにも、ずっと1番になり続けるためにも私にはまだまだやらなければならないことがたくさんある。それをひとつずつ乗り越えて何回も優勝争いをして、日本で何年も1番になって……。それからですね。(海外ツアーを)考えるのは」
日本で何年もトップ君臨し続けられないようでは、海外でも通用するはずがない。そんな明確なポリシーが稲見にはあるのだろう。同世代が相次いで海外ツアーへの思いを打ち明けるなか、あくまで来年以降も初志貫徹を貫くつもりだ。