今や45~46インチのドライバーはごく一般的だが、かつては43インチとやや短めのものが主流だった。ドライバーが長尺化した背景から、ギアライター・高梨祥明がドライバーという道具、そしてゴルフの未来について改めて考えた。

この20年でドライバーは、飛ばし特化の“孤高の道具”になった

皆さんは、40インチのドライバーを打ったことがあるだろうか? ちなみに国内売り上げナンバーワンブランド「ゼクシオイレブン」に照らすと、40インチはハイブリッド(UT)のH4(20度/40.25インチ)とH5(23度/39.75インチ)の中間にあたる長さ。

フェアウェイウッドだと最もロフトの大きい9Wでも41.75インチもあり、とても40インチでは収まらない。このようにそもそも40インチはドライバーの長さではないから、40インチのドライバーを打ったことがあるか? と問いかけたところで、“Yes!”という答えは返ってこないだろうと思う。それくらい常識はずれの短い仕様であるということだ。

「ゼクシオ イレブン」のドライバー長さは45.75インチだが、これはプレミアムドライバーの標準的な長さである。アスリートモデルでも45.25インチくらいが現代の標準。ちなみに3Wは43.25〜43インチが主流である。

画像: 国内で人気のゼクシオシリーズ最新モデル「ゼクシオイレブンドライバー」はクラブ長45.75インチ

国内で人気のゼクシオシリーズ最新モデル「ゼクシオイレブンドライバー」はクラブ長45.75インチ

この20年、ドライバーは飛距離アップを目的として大きな変貌を遂げ、大型ヘッド&長尺シャフトの道をひたすら進んできた。その結果、キャディバッグに入っている14本のクラブの中で、ドライバーが突出して長く、そして軟らかく(しなる)、ヘッド(慣性)が大きいゴルフクラブに育っていったのである。

90年代までは、ドライバーの長さは43〜43.5インチが標準的だった。これは1800年代の後半から続く、ゴルフの伝統のようなもの。それが90年代中盤にチタンヘッドが生まれたことで、一気に長尺時代へと突入し現在に至っている。43インチ時代は100年続いたが、45インチ超時代はまだ25年と歴史が浅い。この先、ドライバーの未来はゴルファーのフィードバックが決めるのだと思う。

現在のドライバーを“ディスタンス系”と考えればスッキリする!?

90年代までドライバーは43インチだったが、今やそれが3Wの長さになっている。ヘッド体積からしても、現在の3Wは昔のメタルドライバー程度といえるだろう。この点からいけば、現代のゴルファーだって昔と変わらぬドライバー(現3W)をバッグに入れており、さらにそれよりも飛ぶ“ディスタンス系ドライバー(現1W)”をエクストラで入れるようになった、とみることもできるのではないだろうか。

画像: パーシモンドライバーを現在のクラブセットに紛れ込ませてみると、現在の3Wと長さもヘッド体積も似通っていることがわかる。今のドライバーは30年前にはなかった飛ばしを極めたエキストラクラブといえるのかもしれない

パーシモンドライバーを現在のクラブセットに紛れ込ませてみると、現在の3Wと長さもヘッド体積も似通っていることがわかる。今のドライバーは30年前にはなかった飛ばしを極めたエキストラクラブといえるのかもしれない

そして、その“ディスタンス系ドライバー(現1W)”は、他の13本と必ずしも足並みをそろえてはいない。なぜなら、それは飛ばすために生まれた特別なクラブだからだ。パターやウェッジ、アイアンは遠くに飛ばすのではなく、むしろ飛び(距離)を調整しながら使うクラブである。ユーティリティもショートウッドも少なからず距離を調節して使うクラブの仲間だといえる。もっと飛ばしたければ番手をアップすればいいだけだからだ。

1ヤードでも遠くに。そう考えるのは1Wと3W、つまり現在のドライバーと昔ながらのドライバーだけ。そう考えれば明快なのではないだろうか?

筆者は今、40インチにしたドライバー(ヘッドはマグレガーMc7/14度)でラウンドしているが、こんな常識はずれのティショットクラブを使ってみて気づいたことがある。それは昔のドライバーのスタンダードレングス(43〜43.5インチ)は練習もなしにミート率を上げられるようなイージーな長さではないということである。往年のトッププレーヤーのスキルがあってこそ使いこなせる長さ、それが43〜43.5インチなのではないかと感じるのだ。

画像: 筆者のドライバー(写真上)。ヘッド体積は380ccで長さは40インチ

筆者のドライバー(写真上)。ヘッド体積は380ccで長さは40インチ

40インチというのは、なんとなく現在の自分の状態で“そこそこ”コントロールできる「長さの上限」なのではないかと思う。それ以上の長さを自分の手の内にいれるには、スウィング面でもフィジカル面でも相当なベースアップが必要なのだと思う。ゴルファーそれぞれに、身の丈にあった長さ、があるような気がするのだ。

現在の“ディスタンス系ドライバー”は、長さによる振りにくさ(他のクラブとの使い方の違い)を認めた上で、道具の工夫(主に軽量化・手元重心化)によってその差を埋めようとしているように思える。それを苦肉の策と見ることもできるが、すべてはもっと飛ばしたい! というゴルファーニーズを満たすためと考えれば、言下にこれを否定できるものではない。

大切なのは、道具のあり方を決めるゴルファーのマインドであるということ。長いものを安定して、正確に振るのは、遠くに飛ばすよりも前に、まず“取り扱いが難しい”ということを念頭におく必要があると思うのだ。

コントロールできる「長さの上限」「身の丈にあった長さ」、そんな観点で現在のマイバッグを覗いてみてはいかがだろうか? 筆者の場合は、現状のままなら40インチくらいが「上限」のような気がした。それ以上長いクラブ、たとえば45インチドライバーを同じように振るには、5インチ(12.7センチ)ぶんの努力を自分に課さなければならないと痛切に感じている。

実際、そうしたところで問題は残る。45インチドライバーが他の13本と毛色が違う道具であることは変わらないことだ。ゴルフは14本のクラブを使って、打数をつないでいくスポーツである。前述したようにその打数の大半は遠くに飛ばすのではなく、飛び(距離)を調整しながら進んでいくもの。それは今も昔も変わらないゴルフの本質だ。

ドライバーが“ディスタンス系”への特化を始めて25年。このあたりで少し立ち止まり「ゴルフ」のことを考えてみるのもいいかもしれない。本当に欲しいのは一発の飛びだったのか、それとも狙ったところにポンっと打てるような、扱いやすさだったのか。他のクラブへの影響も加味して、道具のことを考える。そんなタイミングが訪れているような気がしてならない。

繰り返して言うが、決して飛ばし重視の現状を否定するものではない。それを望んでいるのは我々ゴルファーでもあるからだ。だからこそ、この辺で一度立ち止まり、自分の胸に問いかけてみてもいいかもしれないと思うのだ。

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