2019年は1年の約5分の1をPGAツアー取材に費やし、世界トップクラスの戦いを肌で感じてきたゴルフスイングコンサルタント・吉田洋一郎が2019年を振り返る。主役はやはりタイガーだった。

タイガーが主役の1年で吉田が見た松山の進化

2019年はPGAツアー10試合を取材しました。練習日からコースに足を運び、最終日までいるというパターンがほとんどでしたから、およそ70日間、1年の5分の1をPGAツアー会場で過ごしたことになりますね(笑)。今年これだけ“生観戦”したプロはほかにいないのでは……と自負しています。

振り返ってみて、今年はタイガー・ウッズのための1年だったというのが実感です。きっかけは言わずもがな、マスターズ。私も現地でその瞬間に立ち会いましたが、今までに感じたことのない、異様なまでの興奮が会場を包みこんでいました。

あの試合、タイガーと優勝争いをしたのが誰だったか覚えていますか? それは、2018年の全英王者、フランチェスコ・モリナリだったのですが、モリナリを持ってしてもその会場の雰囲気に負けた感がありました。

画像: 会場全体を味方につけたタイガーが復活優勝を飾った(写真は2019年マスターズ 撮影/姉崎正)

会場全体を味方につけたタイガーが復活優勝を飾った(写真は2019年マスターズ 撮影/姉崎正)

オーガスタナショナルGCはとてつもなく広大なゴルフ場なのですが、タイガーだけがホームで、ほかの選手すべてがアウェイという環境。詰め掛けた何万人という人の99.9%がタイガーの勝利を祈っています。

パフォーマンスコーチをつけ、日頃からメンタルトレーニングを取り入れているモリナリをも、その空気は崩してしまいました。メジャーの魔力というか、そういったものを思い知った一年でもありました。

松山は絶好調時に肉薄して1年を終えた

日本のエース・松山英樹選手のプレーも春先から最終盤までウォッチすることができました。端的にいえば、春先の不調から、絶好調の一歩手前まで戻した1年と言えるでしょうか。1月末に開幕したウェイストマネジメント フェニックスオープン、その後出場した4月のマスターズで、松山選手のボールは正直よく曲がっていました。逆に、これだけ曲がってよくスコアを作れるな、というゴルフです。

ただ、マスターズの後は徐々に調子を上げていき、スウィング自体も良化し、球筋の曲がり幅も収まってきました。絶好調時、たとえダスティン・ジョンソンに20ヤード置いていかれてもセカンドショットを先に打って涼しい顔で内側につけるような、圧倒的なキレ味まで、あとほんの1、2歩というところでしょうか。

画像: スウィングひとつひとつを丁寧に確認する松山英樹(試合はシュライナーズホスピタル 撮影/姉崎正)

スウィングひとつひとつを丁寧に確認する松山英樹(試合はシュライナーズホスピタル 撮影/姉崎正)

変更点としては、トップでのポージングと呼ばれる間が減ったこと、パッティングのアドレスがややナロー(狭い)スタンスになり、軌道がナチュラルなイントゥインになったことが挙げられると思います。また、最近のインタビューでは、超有名コーチであるブッチ・ハーモンに習ったことも明かしています。これは素晴らしいことだと私は思います。

ブッチは世界中の誰よりも実績のあるコーチです。そんなブッチがいうことは、ほかのコーチが言うことと重みが異なります。「ブッチがそう言ってくれた」ということは心の支えになりますし、それが自分の意見やほかの人の意見と合致していれば「この方向に進めばいいんだ」という確信に至りやすいはずです。

さて、序盤戦は調子が悪かったり、スウィングに微調整を施したりしながらも、終わってみれば出場24試合でトップ10入りは7回。予選落ちはわずかに2回と十分な成績を残しています。ただ、もちろん松山選手は勝利に飢えているに違いありません。来年はオリンピックイヤーですし、松山選手は金メダルの有力候補のひとり。PGAツアーで、メジャーで、オリンピックで勝利をつかむ松山選手の姿を、楽しみにしたいですね。

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