「1ヤードでも遠くに飛ばしたい」と願うアマチュアゴルファーは少なくない。そこでギアライター・高梨祥明は“カウンターバランス”注目し、2020年以降のクラブの進化を改めて考えた。

1ヤードでも遠くへ! を叶えるためにやめられないことがある

話題作「ゼクシオ イレブン」が、ウェイトプラス(シリコンラバーブッシュ)というオリジナルグリップを開発し採用したことで“カウンターバランス”というワードを頻繁に目にするようになった。

画像: 今年発売された「ゼクシオイレブン」

今年発売された「ゼクシオイレブン」

“カウンターバランス”とは、クラブの手元側に重量を配分し、スウィングウェイトを軽くするためのチューニング法。これ自体は古くから試されてきたテクニックだが、「ゼクシオイレブン」の場合はグリップエンドに10gのカウンターウェイト(シリコンラバーブッシュ)を追加するだけでなく、限界とされていたシャフトのさらなる軽量化に挑戦、Rシャフトで37グラムという超軽量化を達成することで、手元加重ぶんの総重量アップを最小限に抑えている。この辺りが重さを足すだけだった従来のカウンターウェイト手法との大きな違いがあるといえる。

では、この“カウンターバランス”はどのような効果があるのだろうか。ご推察の通り、ヘッドが軽く感じ、振りやすくなるのである。これは先週も書いたが、短くクラブを持って振ったのと効果としては同じ。振りにくかったクラブを振りやすくするための工夫だと思っていただければいいだろう。

日本で最も売れている「ゼクシオ」がカウンターウェイト手法を採用したこと。それは今後のゴルフクラブ開発にとって計り知れない大きな意味を持つ(と個人的には思っている)。なぜなら、現在のドライバースペックが、そのままでは“振りにくい”ということをクラブメーカーが半ば認めたカタチになるからだ。

画像: ゼクシオイレブンがオリジナルグリップ“ウェイトプラス”を開発した(撮影/三木崇徳)

ゼクシオイレブンがオリジナルグリップ“ウェイトプラス”を開発した(撮影/三木崇徳)

何度も書いているように、90年代中盤からドライバーはヘッドが大きく、シャフトが長く、しなやかに、そして軽量にと大きな変化を遂げてきた。それはなぜか? そうすることで1ヤードでも遠くへボールを飛ばしたい! というゴルファーの夢を叶えようとしたのである。

ここで現在のドライバーを文中だが分解してみたい。

■460ccの大型ヘッド

・慣性モーメントを大きくすればインパクトエネルギーが大きくなる。
・慣性モーメントを大きくすれば広い打点で上記の効果が得られる。
・薄くてたわむフェースにすればエネルギーロスを抑えることができる。

■軽量・長尺・軟シャフト

・シャフトを長くすれば、ヘッドスピードが上がる。
・シャフトを軽くすれば、長くしても軽快に振れる。
・シャフトをしなやかにすれば、トップで切り返しやすくなる。
・シャフトをしなやかにすれば、インパクト直前のしなり戻りを使ってヘッドを走らせることができる。

このように、改めてドライバーパーツそれぞれの開発目的を書き出してみると、現在のドライバーがいかに最大飛距離のアップ、そして許容性を高めることによる平均飛距離のアップに特化して作られているかがお分りいただけると思う。まさしく“飛ばし要素の塊”である。

長いクラブは同じヘッド重量であっても重たく感じるし、硬いシャフトより軟らかいシャフトのほうがやはりヘッドの重さを感じやすい。とくにそれはトップスイングで切り返しのしにくさにとなって表れる。

「ゼクシオイレブン」はこの現代ドライバーのデメリットに着目し、グリップエンドにウェイトを集めることで、長さも、しなやかさも、ヘッドの大きさも飛ばし仕様のままで振りやすさを向上させようとしているわけである。

実際、ダンロップの研究では新グリップにしたことで、トップの切り返しにかかる負荷が約40%軽減できたという。

ボールを飛ばすのは自分。クラブの進化はマイナスを減らすためにある

素人考えでは、振りやすさを向上したければヘッドを軽く、シャフトを短く、硬くすればいいと思うが、クラブメーカーはそうはいかない。それでは飛距離が落ちると考えるからだ。長々と説明してきたとおり、その逆こそがこの20年の進化の道筋であり、飛ばしの源。これを捨てることはできないだろう。

「マイナスを減らすから、結果プラスとなる。」

これは、私が新しいゴルフクラブを見るときにもっとも大事にしている視点である。フェースの反発、たわみ効果も、マイナス(ロス)を減らすための手段であり工夫である。今回のカウンターバランスもそうだ。長尺クラブのマイナスを減らすことで、結果としてはプラスとなる(人もいる)。

いずれにしても、それ自体がエンジンの役割となるわけではない。今も昔も、ボールを遠くに飛ばす動力源はゴルファー自身にしかなく、ゴルフクラブはそれを効率良くボールに伝えるために進化してきた「道具」なのだ。

新しい年がまもなく始まる。1ヤードでもボールを遠くへ飛ばしたい! そう願うのであれば、エンジンである自分を高める努力をするのがもっとも効果的だ。その場合のキーワードも、マイナスを減らすこと。そうするだけで我々アマチュアの飛距離は劇的に伸びる。もっと遠くに飛ばすチカラが我々には備わっているし、最新のクラブを活かせばそのエネルギーを効率良くボールに伝えることができる。

最後に、長いクラブが振りにくいままではそれ自体がロスとなる。短く握る、短いクラブにするなどして振りやすくすることも、マイナスを減らすための「選択肢」であることをお忘れなく!

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