高いアプローチ技術
2020年の注目女子プロとして、私がまず挙げたいのが三ヶ島かなです。2019シーズンでもトップ10入りが8回、賞金ランクも24位と安定して好成績を叩き出しており、松田鈴英らと並んでもっとも初優勝に近いと言われる選手です。本当にいつ勝ってもおかしくないポテンシャルを持っていると思います。
曲がらないドライバーショットも大きな武器のひとつですが、何より三ヶ島の安定感を作り出しているのは、アプローチの技術。もう半端じゃなく上手いんです。聞けば、普段練習で回るコースは全長約7000ヤード。女子プロの飛距離ではパー4はほぼ2オンできませんから、必然的にアプローチをたくさんこなすことになり、「気がついたら上手くなっていた」そうです。
そんなアプローチ巧者の三ヶ島に、上手に寄せるコツを聞いてみると、「まずライを見て、ボールのどこにクラブが入るかをまず見極める。ボールの高さだったり、低くしか出せないかなどを検討。グリーンにキャリーさせたらピンにどう寄っていくかをイメージします」と教えてくれましたが、これがまあいつもドンピシャに寄るんです。そして、状況に対応したアプローチの引き出しも非常に多いのも素晴らしい。
昨年10月の「マスターズGCレディース」で三ヶ島選手と回った渋野日向子が、そのアプローチがあまりにも上手過ぎて、翌週の「スウィンギングスカートLPGA台湾選手権」の会場でもずっと話題に出していたほどです。
今シーズンから青木翔コーチと契約
ショットの正確性、そしてアプローチという非常に強い武器を持っている三ヶ島が、初優勝を勝ち取るための最後のピース。それが渋野日向子を指導していることで知られる青木翔コーチなのではないかと睨んでいます。と言うのも、昨シーズンまではお父さんと二人三脚でツアーを戦ってきた三ヶ島ですが、2020年シーズンから青木コーチと契約したんです。
ショット力はある。アプローチもある。ただ、バーディを奪う力がもっと欲しい。そのためには渋野選手のようにピンを攻めていくゴルフが必要です。言うなれば、守備型から攻撃型への変化です。変化というと大げさかもしれませんね。攻撃型ゴルフを取り入れるといったほうが正しいかもしれません。
ツアーのレベルは年々上がり、全ホールではなくとも、果敢にピンを攻めなければ勝てない試合も増えています。グリーンセンターに乗せて2パットではなく、ピンを狙ってワンパットで仕留めるゴルフへの変化。ピンをデッドに狙うゴルフが持ち味の渋野選手を指導している青木コーチですから、この契約は三ヶ島にとってプラスになるはずです。
ピンを狙うための考え方や技術、上手くバーディチャンスにつけたとき、それをワンパットで仕留める技術。もちろん、バーディも増えるがボギーも増えるというデメリットもある諸刃の剣にはなるでしょうが、そこを超えて1度勝ったら、もともと高い技術を持つ三ヶ島選手のこと、どんどん勝ち出す可能性があると思います。
「柏原(明日架)さんは(初優勝まで)6年かかりましたがそのあとすぐに2勝目を挙げました、私も気っと同じタイプ。何年かかるかわからないけど、1勝できたらどんどん勝てる気がしています」三ヶ島選手自身、以前そう語ってくれましたが、私もそう思います。オフの間にしっかりと力をつけ、新しいシーズンは“新生・三ヶ島かな”の姿を楽しみにしたいと思います。