3番ウッドで230ヤードを乗せたことがある。では、失敗した回数は?
練習場でボールを打っていると、ときおり自分でも信じられなくらいのナイスショットが飛び出すときがありますよね。コースでもそうで、グリーン周りの難しいライからチップインした記憶なんかは、何年も語り草にしたりします。私ももちろん、してます(笑)。
練習場でもコースでも、ゴルファーのもとにご褒美のようにやってくる奇跡の一打。その感触と記憶は何者にも変えられませんよね。しかし、野暮を承知で言うならば、上達したいと思うならば、その奇跡の一打の背景にある、おびただしいミスショットも、あわせて記憶しなければなりません。
なぜか。理由はシンプルで、戦略上の齟齬を招くからです。
たとえば、「残り230ヤードから3番ウッドで2オンに成功したことがある」としましょう。その成功体験が鮮やかであればあるほど、「3Wで230ヤードを乗せたことがある」という記憶は「230ヤードは3Wで乗るもんだ」という思い込みへとすり替わります。ポイントは、何%の確率で乗るのか、です。
230ヤードを3番ウッドで乗せるのは、言わずもがな難しいので、アベレージゴルファーであれば5%に満たない数字となるはずです。95%以上の確率で乗らず、それどころかグリーン周りの池やバンカーなどのハザードにつかまる可能性は5%より明らかに大きい数字だったりする。それでも、過去の成功体験が、「いけ!」と背中を押すのです。
私も、そうして数々のボールをゴルフ場の池の底に沈めてきたゴルファーのうちの一人ですが(笑)、多くのゴルファーが過去の成功体験によって戦略上のミスを犯し、スコアを落としているのです。
しかし、そもそもゴルフに同じ状況は2度とありません。距離、ライ、風といった外的要素に加え、スコアの状況、その日のメンタル、体調といった内的要素も日々異なり、似た状況は多々あれど、同じ状況が2度くることはありません。なので、過去の成功体験にとらわれず、常に立ち止まって目の前の1打をジャッジする必要が本当はあります。
同時に、過去の失敗体験にとらわれすぎてもいけないのがゴルフの悩ましいところでもあります。「230ヤードなんて絶対乗せるのムリ。9番かなんかで刻んどこ」みたいなゴルフだと、それはそれで自分の限界を突破することができなかったりもします。
失敗体験も忘れずに目の前の一打をマネジメントしながら、スコアなどの状況が許せば勇気を持って狙う。大切なのは、そのジャッジの精度と、引き出しの数。230ヤードから狙うのか、100ヤード残すのか、30ヤード残すのか。どれが一番確率が高いかをジャッジでき、もっとも期待値の高いショットを選択できる。それがマネジメント力だと言えると思います。
たくさんの失敗体験と少しの成功体験を積み重ねるのがゴルフです。成功体験は大切ですが、失敗体験にも目を向けることで、確率を重視したマネジメントを実行することができるんです。一歩下がって二歩進むみたいなもどかしい話ですが、そうしてもがき続けていると、ゴルフの神様は奇跡のようなナイスショットを「ここぞ!」という場面で授けてくれるような気が、個人的にはしていますが、どうでしょうか。