ダウンでは左右の足を「外に回す」のが正解
プロコーチ・大西翔太が最新ゴルフ理論をその身で体験する本企画。今回は、同じくプロコーチ、“フジモンティ”こと藤本敏雪の元を訪ねた。
プロアマ問わずアメリカで大人気のティーチングプロであるジョージ・ガンカスが提唱するゴルフ理論に惚れ込み、渡米して直接教わったという藤本。その知見を日々のレッスンに活かすだけでなく、自身のインスタグラム上で公開しているインスタントレッスン動画も話題を集めている。
かくいう大西もレッスン動画の視聴者のひとりで、「キレイですよね、フジモンティさんのスウィングって。クラブを寝かすシャローなところと常に下半身を積極的に使っている感じが」と“生フジモンティ”に興奮が隠せない様子だ。
さて、藤本が学んだジョージ・ガンカススウィングといえば、下半身の動きを抑えて上半身を深くねじるという従来のスウィングとは異なり、下半身をバランスを崩さない範囲で積極的に動かしていくのが特徴的。大西のアイアンスウィングをチェックした藤本がまず指摘したのも下半身の動きだ。
藤本によれば、大西のスウィングは「腰の回転が強いタイプ」。大西自身にも心当たりがあるようで「すごく腰が引けるクセがあったんですよ。それが嫌で左に乗ろう、左に乗ろうという意識があるんですよね」と言う。
7番アイアンで平均180ヤード前後と飛距離も十分だが、最新理論と照らし合わせればまだまだ改善の余地はあるようだ。藤本がまず指摘したのはバックスウィングでの動き。
「(大西さんの場合は)ダウンスウィングで、結構早めに右足の内旋が入っています(写真A)。なので地面を踏みこむことで生じる地面反力を活かす動きがちょっと弱くて、結果的にトルク(回転力)の力を使えていないんです」(藤本)
藤本によれば「足裏からの力が回転に変わり、トルクが生まれる」のだという。下半身の回転というと腰の動きを意識しがちだが、実際は腰を速く回すだけではトルクは生じないうえ、スピンアウト(回りすぎ)してしまう危険もあるのだ。
では、しっかりトルクを生むための下半身の使い方を藤本に教えてもらおう。
「切り返しから足の裏で地面をねじって削るように踏み込んで、両足とも外旋させるんです。ダウンスウィングで左足は自然と外旋しますから、それに対して右足側は付いていかずに踏ん張るイメージです。この下半身の動きによって蹴り上げたときに得られる地面反力が強まり、上半身をより強く回転させることができます」(藤本)
外旋とは外側に向ける動きのことなので、こうすると特徴的な“ガニ股”のようになる(写真B)。右足の動きに関していえば、ダウンで右足を内旋させていた大西にとっては真逆のイメージだ。
そして、シャフトが地面と水平になるポジションまでクラブが下りてきたら、踏み込んだ右足で地面をプッシュして一気にフォローへ向かっていく。この足裏の力が回転へと変わるわけだ。
スウィングに必須の動き「サイドベント」を覚えよう!
もうひとつ重要なのが、ダウンスウィング中に右わき腹を縮めるサイドベントという動きだ。
「右のサイドベントはゴルフスウィングにおいて絶対必要な動きです。右わき腹が伸びたままだとアウトサイドイン軌道でインパクトすることになりますからね」(藤本)
しかしほとんどのアマチュアは「(右サイドベントの動きで)右側の骨盤、上半身まで一緒に下がってしまっている」のだという。これを防ぐためにはあらかじめ「右側の骨盤に対して左側の骨盤が低い状態を作っておきましょう」と藤本。
「左側の骨盤を下げておくことで、ダウンスウィングで右サイドベントをしても骨盤はフラットな状態を作れます。そのために、まずはアドレス時の左足のつま先を今までよりも開いてみましょう。スクェアスタンスが12時方向だとしたら、10時半方向を向くくらいのイメージです」(藤本)
切り返しからダウンスウィングを正しい形で迎えるために、アドレスの形から変えていくというわけだ。バックスウィングでのクラブの上げ方にも工夫が必要だと藤本は言う。
「バックスウィングでは斜め右上に向かって上げるイメージで、立てた雑巾を絞るように体をねじりながらクラブを上げましょう。こうすれば自然と左骨盤が低く右骨盤が高い状態になるので、ダウンスウィング側で左骨盤を下げていくイメージが作りやすいです。体を上方向に伸ばすことで、切り返しで体を沈み込ませるための準備にもなっています」(藤本)
藤本のレッスンを受け、再度アイアンショットに挑戦する大西。なんと7番アイアンでトータル192ヤードと、より効率的に飛ばすスウィングを手に入れることに成功。大西自身も、以前のスウィングとは体の使い方がまるで違うことを実感したようだ。
「バックスウィングでの体のねじり方が全然違うんですよ。足から背中にかけての筋肉が引き延ばされて、体幹部をトレーニングしているような感覚です」(大西)
「そう、ジョージ・ガンカス系のシャローイングスウィングって体全体を使うんですよね。バックスウィングのテンポ的にはギュ~ッとゆっくりねじり上げて、そこから一気に地面を踏んで加速させる。PGAツアープロのスウィングを見ても、始動ではじんわり上げている方が多いんです」(藤本)
プロを育て支える大西は、絶えず最新理論を学び吸収していかなければならない立場。とはいえ、キャディも務める大西は選手と同様に、シーズン中は試合や移動に追われる身。こうしてオフシーズン中に学び、新たな引き出しを得て、2020年シーズンへの準備を着々と進めているようだ。
協力/PGST