今年50歳を迎えるPGAツアーの大ベテラン、フィル・ミケルソン。ここのところ沈んでいた彼の調子が2020年、上向きになりつつある。天才レフティの現状を、海外取材経験20年のゴルフエディター・大泉英子が分析する。

2020年、上り調子の天才レフティ

49歳のフィル・ミケルソンが再び息を吹き返している。

今年のAT&Tペブルビーチ・プロアマは、カナダ人のニック・テーラーが完全優勝を果たし、ツアー2勝目を飾ったが、ディフェンディングチャンピオンのミケルソンの健闘も光った。最終日は4バーディ、1ダブルボギー、4ボギーと出入りの激しいラウンドとなったが、それでも3位タイに入賞。「優勝できなかったのは残念だが、それでもこの成績には満足している」と語った。

画像: 直近2試合連続で3位フィニッシュと、調子を取り戻しつつあるフィル・ミケルソン(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

直近2試合連続で3位フィニッシュと、調子を取り戻しつつあるフィル・ミケルソン(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

「ここ2週間でだいぶ良くなってきた。(ヨーロピアンツアーの)サウジインターナショナルとペブルビーチで3位に入り、自信も取り戻せてきている。自分が今までやってきたことに対して、これで良かったんだ、という思いと、今後に向けてやる気もみなぎってきたよ。今回勝てなかったのは残念だけど、勝てるチャンスがまだあるということ自体はよかったよ」

昨年はペブルビーチで優勝したあとは鳴かず飛ばずの成績でさっぱり。今年に入っても自身がホストを務めたアメリカンエクスプレスと地元のファーマーズインシュランスオープンで予選落ちを喫し、自信を失い、ネガティブな思考になっていたという。

それが、サウジアラビアの試合ではすっかり調子を取り戻し、ダスティン・ジョンソン、ブルックス・ケプカ、セルヒオ・ガルシアら強豪揃いの中、3位に入賞。サウジアラビアでは招待選手として歓待を受け、アラビア文化に触れて大いに遠征を楽しんだようだが、自身のプレー自体も道具やスイングの調整がうまくまとまり始めたようで、好成績につながった。

また、食事に注意したり、トレーニングや練習に以前にも増して真剣に取り組み、現在では全盛期に比べてもヘッドスピードは上がり、飛距離もアップ、全てにおいて若かりし頃よりも進歩しているのだという。

もともと「右から左の風が苦手だ」というミケルソンだが、風の強いペブルビーチで、苦手な風の中でも低く抑えたコントロールショットがうまく打てた場面もあったそうで、「ここのところ、ネガティブな思考もないし、もっと積極的に考えられるようになった。マインドコントロールもできている」と胸を張る。

そして彼の自信の現れとプライドは、こんな会話にも現れている。

グランドスラム達成まで、全米オープン優勝を残すのみとなっているが、今年は今日現在、世界ランク55位と出場する資格がない。ペブルビーチの試合を迎える前は72位だったので、現場にいる記者が「もしUSGAから特別推薦を受けることがあったら、全米オープンに出たいか?」と聞かれたところ

「特別推薦は受けない。自分自身で出場権を獲得するか、予選会に挑戦する。そもそもUSGAはそんな風に推薦してくれるような団体じゃないし、そのようなものは欲しくない。同情されて出るなんて嫌だからね。自分自身が全米オープンに出るにふさわしい選手なら、自分でそのスポットを勝ち取ればいいだけだ」

ときっぱり。彼のプライドと、今の調子の良さがこの発言につながっている。

ペブルビーチの開場当初のキャディの中に、ミケルソンの祖父がいて、彼は常に1ドルコインをポケットに忍ばせていた。どんなに貧乏でも、このコインがあることをポケットの中で感じ、どんなにひもじい思いをしても、この1ドルを使うことはなかったのだという。

今ではゴルフ界きっての裕福なミケルソン家のゴルフストーリーは、貧しかった祖父がペブルビーチでキャディを勤めていたことに起源を有するが、この1ドルコインと同様に、どんなに調子が悪くても、ここまで自らが築き上げてきた「自信」「プライド」と「向上心」を失わない限り、50歳を迎えても進化するフィル・ミケルソンを見ることができるように思う。

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