自分のナチュラルな体の動きに合ったスウィングが分かる
PGAツアーに目をやると、タイガー・ウッズやジャスティン・ローズのようなお手本のようなスウィングを持つプレーヤーがいる一方で、ダスティン・ジョンソンやジャスティン・トーマスといった個性的なスウィングの選手もトッププレーヤーとして活躍している。もちろん、グリップの握り方やトップの位置は人それぞれだ。
プロたちのスウィングが千差万別な理由のひとつは、昨今のテクノロジーの進化で様々な計測器が生まれ効率的なエネルギーの出力の仕方が解明されたこと、そしてもうひとつ、バイオメカニクスに精通したインストラクターの出現により運動動作の裏付けがなされたこと。すでにトッププロの世界では、型にはめるようなスウィング指導ではなく、ゴルフスウィングをより深く理解し、かつプレーヤーの身体的特徴を踏まえたインストラクションが不可欠になっているわけだ。
「コーチの役目はプレーヤーをヘルシーで高いパフォーマンスを長く続けられように指導すること。そのためにはその人にマッチしたスウィングを提案することが不可欠だ」
そう語るのは米国のティーチングプロ、マイク・アダムス氏。バイオメカニクス(生体力学)とスウィング力学の2つの視点からスウィングを紐解くティーチングメソッド「バイオスウィングダイナミクス」の第一人者でもある彼は、多くのスウィングデータを基に、スウィングタイプを選別できるスクリーンテストを構築。その人にとって無理のないスウィングを指導することで、パフォーマンス向上につなげているのだという。
今回は5年ぶりに来日したアダムスが開講したセミナーで明かされた、だれでも簡単に自分のスウィングタイプが分かるテストを4つ紹介しよう。
身長よりも広げた両腕が長いなら、トップはアップライトに
まず第一のテストでは、身長と、両腕を横に広げたときの長さを計測。このテストで分かるのは、テークバックの上がりやすい方向、そしてトップ位置の傾向だ。
身長よりも腕が長ければ、腕が動く運動量が大きいためトップはアップライトに。同じであれば中間、腕のほうが短ければフラットなトップになるのが自然だとマイク氏。
前腕と二の腕の長さでダウンの軌道がわかる
次のテストでは、前腕と二の腕の長さを比較。この結果によって、ダウンスウィングで通る軌道が導き出される。
前腕の方が長ければ、ダウンスウィングの軌道は肩口から降りてくる軌道を描き、短ければ腰より下から。同じであればその中間から降りてくるのが自然な動きだという。
手のひらの向きで右手の握りがわかる
続いて、右手の握り方のタイプを判別するテスト。まず、手のひらを合わせて両手を下げ右手を少し下に。パートナーに肩をおさえてもらって固定した状態で手元をテークバックの方向に動かし、その時の右手の平の向きをチェックしてみよう。
右手の平が地面を向いていれば「オントップ」、空を向いていれば「アンダー」。その中間は「サイドオン」と分類され、これによって右手の握り方、そしてスウィング軌道までもが分かってしまうという。
「右手の握り方によってスウィング軌道は大きく影響されるし、そうあるべきだ。(なぜなら)できるだけ考えずに振れるようになることが重要で、その人にとってよりナチュラルな動きであることが必要だから」(アダムス)
とのこと。これは右手の握り方によって「手首のヒンジの使いかたが変わる」のが大きな要因だという。オントップであれば右手はかぶせたように握り、テークバックでクラブヘッドは外に上がりやすく、ダウンスウィングで右ひじは体の後ろ側からわきに沿うように降りてくるアウトサイドイン軌道。
下から握るアンダータイプであればクラブを下から開いて握るような形になり、ダウンスウィングで右ひじは体の前に入るように降りてくるインサイドアウト軌道。サイドオンならその中間でオーソドックスな握り方で、イントゥイン軌道が基準になるという。
テークバックの動きでスウィング軸をチェック
最後に、スウィング軸をチェックしてみよう。クラブを横向きに持ち、太ももに当てた状態でテークバックの動きをしてみると、その人のスウィング軸が判別できるという。左サイドを軸にした「フロントポスト」タイプ、体の中心を軸にした「センターポスト」タイプ、そして右サイド軸の「リアポスト」タイプの全3タイプだ。
PGAツアープロで言うなら、フロントポストタイプはセルヒオ・ガルシアやブライソン・デシャンボー。センターポストはジェイソン・デイやジャスティン・トーマス。リアポストであればゲーリー・ウッドランドや、ルーク・ドナルドを参考にしてみるといいだろう。
以上のテスト結果の組み合わせから、動画を撮って自分のスウィングを分析してみるとマッチしている部分もあったり、やろうとしているのにできない動きがあったりといろいろな発見があって面白い。流行りのスウィングを真似して取り入れるのも楽しいが、自分にマッチしたスウィングを見つけることが上達の近道になることは間違いないし、ケガや故障を回避し長く続けられることにつながるだろう。
取材協力/PGST