「100を切れたらなんでも買ってあげよう」とか「コンペで優勝したらドライバー買っちゃおう」とか、他人や自分をやる気にさせるため“ご褒美”を用意するのはよくある話。でも、これって本当にいいことなんだろうか? プロも教えるメンタルコーチ・池努は、「ご褒美を次につなげることが大切」だという。どういうこと!?

「報酬を得るためにがんばる」のは正しい動機といえるのか?

前回の記事では自分の行動をほめることで苦手意識を変化させていくことをおすすめしていきました。前回にも書きましたが私たちはとる行動に対して褒められたり、報酬をもらえるとドーパミン神経が働き、脳がやる気になるなど活性化していきます。このように私たちはなんだかんだいって頑張ったら褒められたい、ご褒美がほしいといったように、ご褒美があるから頑張れる側面を持ちます。

しかし、「自分へのご褒美」ではありませんが、なにかの外的な報酬がないと行動する気にならないのも問題があるように感じる方も多いのではないでしょうか。たとえば、小学生のお子さんがゴルフをやっていてなかなか熱心に練習しません。その状況を見かねた父親が「次のラウンドでスコア〇〇をきったら好きなものを買ってやろう」といい、お子さんが俄然やる気になり、練習へのやる気が高まったとします。

このように賞罰や他者からの評価に対しやる気になることを外発的動機といいますが、外発的動機づけをみなさんはどう感じますか? おそらく多くの方が上記例のように外部から与えられる報酬でやる気を高めることに対してどちらかというとネガティブな印象をお持ちだと思います。

画像: 頑張ったあとのご褒美があると苦手な練習もやる気が高まるが、その行動で得たものを振り返ることが大事だという(撮影/亀山修)

頑張ったあとのご褒美があると苦手な練習もやる気が高まるが、その行動で得たものを振り返ることが大事だという(撮影/亀山修)

「報酬のために頑張る」ということを繰り返し続けていれば、その報酬がなくなったり、報酬の質が低くなることで当然行動も弱化しやすくなります。しかし、私たちも勉強、スポーツ、仕事で経験してきたようにご褒美がもらえるから頑張れるという事実も大いにあります。

「ご褒美」自体は悪いことではない。ただ、使いすぎはNG

ではどうするか。私が親御さんや指導者の方へアドバイスするのはご褒美を使うタイミングと回数についてです。

一番問題なのは「頑張ればご褒美」という外発的動機を使いすぎることで本人がご褒美でしかやる気にならない、行動できない状態になることです。この上記の小学生の例のような場合、実は最初にご褒美で行動強化を図ること自体は悪いことではありません。そもそもゴルフに対するやる気と行動量が少ない状態ですのでご褒美で動かすことは1つの大切な手段です。

大事なポイントはご褒美で頑張ることができたとき、その行動を通じて得た内発的な動機を刺激することです。内発的動機とは対象への感心や興味からもたらされる動機づけのことです。つまり、ご褒美を得るために頑張って行動したプロセスにおいて「ゴルフが楽しいと感じた点」、「純粋にうまくなりたいと感じた点」、「練習がスキルアップにつながりスコア目標を達成できた充実感」などを本人に認識させることができれば、内発的な動機に火がつき、それ以降はご褒美がなくとも「うまくなりたい」「次はもっといいスコアを出したい」と自分から自然と行動することも増える可能性があります。

このように「ご褒美」も使い方次第ではプラスに働くわけです。とくに一時的な行動強化には効果的に使えるのですね。

これは自分の苦手分野の練習でも使えそうです。苦手分野の練習がどうしてもやる気にならない、そんな時は「この練習を90分やったら、たまにしか飲まないお気に入りのビールを買って飲もう!」などと小さなご褒美を設定することで行動強化することも良い方法だと思います。

また、より行動強化が必要なタイミングでは「次のコンペで目標とするスコア〇〇を切れたらずっとほしかったドライバーを買おう」と大きめのご褒美を設定することもいいかもしれません。

そして、忘れてはいけないのがご褒美のためと思い頑張った行動で得た、スキルの上達やゴルフの達成感をしっかりと振り返り感じることで内発的動機につなげることですね。今回の内容はご自身もそうですがお子様への行動強化にも使えるかと思います。ぜひ、ご参考ください。

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