ジャンプしても頭の高さは変わらない
ジャスティン・トーマスを初めて間近で見たのは、2017年の全米オープンの練習ラウンド。ゲームプラン通りに本番さながらのラウンドを進めるリッキー・ファウラーに対して、ドライバーが左右に散らばりながらも目一杯振り回して、楽しそうにラウンドする姿が印象的でした。
インパクトで合わせて修正するのではなく目一杯振りながらスウィングを調整し、ドライバーが復調した3日目には63を叩き出し一気に優勝争いに加わりました。最終日は伸ばせず9位タイに終わりましたが、その2カ月後に開催された全米プロゴルフ選手権では松山英樹を退けメジャー初優勝を遂げることとなります。
2020年シーズンも好調なトーマス。そのスウィングを見ていきましょう。まずはアドレスとトップの写真を並べた画像Aをご覧ください。左のアドレスを見ると、握り方は左手のこぶしが2つ見えるスクェアグリップ。右手はグリップを横から握る、サイドオンと呼ばれる形です。スウィング軸はセンター(体の中心)で、トップはやや高めのアップライトな軌道。
ホライゾンタル(横方向への動き)、ローテーション(回転力)、バーティカルフォース(地面反力)の、スウィングを構成する3つのエネルギーのうち、ローテーションとバーティカルフォースを多く使って飛ばすタイプです。
画像Bは、トップからインパクト直前にかけて。インパクト直前の写真を見ると、左ひざがピンと伸び、鋭い回転力を生むためにインパクト前に左足を踏み込んで伸ばすバーティカルフォース(地面反力)をしっかり使っていることが見て取れます。
注目すべき点はインパクト前にひざを伸ばす動きが入っているにもかかわらず、トップとインパクトでの頭の高さが変わっていないこと。後方から見た画像Cを確認してみましょう。
後方から見ると(画像C)、トップでもインパクトでも前傾角がキープされていますが、インパクトでは右わきが縮む動き(側屈)が強く入っていることが確認できます。このことで腰が伸びてボール方向に近づくこともなく、腕の通り道がしっかり確保されています。バーティカルフォースを使って飛距離を伸ばし、右肩を下げながら肩を縦に回すように側屈を入れることで正確で再現性の高いインパクトを実現しています。
近年は、バイオメカニクス(体の構造から運動を力学的に研究し応用しようとする生体力学)の見地からスウィングをとらえることで、プレーヤーにとってナチュラルで故障の少ないスウィングが取り入れられています。
いち早くバイオメカニクスを取り入れたジャスティン・トーマス。2020年の主役候補の一人であるのは間違いないでしょう。