日本ツアーでも活躍したイム・ソンジェ、50試合目でつかんだ初勝利
トミー・フリートウッドやリー・ウエストウッド、ルーク・ドナルドなどイギリス人のベテランプレーヤーがリーダーボード上位でひしめき合うなか、韓国の期待のホープ、イム・ソンジェが、最終日に66をマークし、マッケンジー・ヒューズを1打差でかわしてホンダクラシックでツアー初優勝を飾った。
今回の優勝により、フェデックスカップランキングでは2位に浮上、世界ランキングでも初めてトップ25に入ってきた。また21歳での優勝は、昨年ミリタリー・トリビュート・アット・ザ・グリーンブライヤーで優勝したホアキン・ニーマンの20歳10ヶ月8日に次ぐツアーの年少優勝である。2022年までのシード権を確保し、来年1月の優勝者のみが出場できるセントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズへの切符も獲得。下部ツアーのコンフェリーツアーで優勝していたものの、PGAツアーの優勝は初めてで、50試合目でつかんだ念願の勝利だった。
「今まで優勝争いにいたことは何度もあった。でも、過去のそういう経験が今日はとても役に立った」
彼の昨年の成績を見ると、トップ10入りが7回。ルーキー・オブ・ザ・イヤーにも輝いている。また何よりも彼の出場試合回数に注目してほしいのだが、35試合というのは驚異的な数字だ。松山英樹の25試合と比較しても、いかに彼がほとんど休まず試合に出続けているかがわかるだろう。今季に入っても精力的に試合に出場し、出場13試合で予選落ちはたった1回。トップ10入りは4回を数え、そのうち3回はトップ3入りと非常に安定した好成績を残している。
そして、記憶に新しいところでは、12月のプレジデンツカップでは初のメンバー入りを果たし、3勝1敗1引き分けとルーキーながらも大健闘。その活躍ぶりは、テレビで観戦していた日本のゴルフファンの皆さんにも印象的だったと思う。
派手なパフォーマンスはないが、ステディなプレーぶりで、メンタルも強いイム・ソンジェ。ショット力はずば抜けており、ストロークゲインド・ティ・トゥ・グリーンでは今大会トップだった。パッティングのスタッツを見ると優勝するのは時間の問題と見られていた。
「今、韓国ではコロナウイルスのことでみんな大変なことになっているけど、今日の優勝はみんなにとっても大きなことだと思う。韓国人選手として、韓国の人たちにいいニュースを届けられて嬉しい。韓国人であることに誇りを持てる瞬間になったんじゃないかな」
日本でも連日コロナウィルスの話題で持ちきりだが、韓国の方がさらに切実な状況だ。一部地域では「渡航中止勧告」が発令されているところもあり、海外への減便、あるいは欠航が相次いでいる。ウィルス対策を講じる必要はもちろんあるが、連日の不安を煽るような過度なメディアの報道をテレビで見続けている人たちにとって、彼の優勝は一服の清涼剤になったのではないかと思う。
2020年はプレジデンツカップ世界選抜チームの躍進が続いている
これから1ヶ月後にはマスターズも控え、いよいよ盛り上がりを見せるPGAツアー。今年に入ってプレジデンツカップの世界選抜チームで戦った選手たちの活躍が光る。キャメロン・スミス(ソニーオープン)、マーク・リーシュマン(ファーマーズインシュランスオープン)、アダム・スコット(ジェネシスインビテーショナル)、そしてイム・ソンジェ(ホンダクラシック)と優勝者は4人目だ。
アダム・スコットが今年、ジェネシスインビテーショナルで優勝していたときに語っていたが「2003年の南アフリカで開催されたプレジデンツカップ(世界選抜・米国選抜の両者引き分け)を振り返ると、その後プレーヤーズ選手権で首位に立った時に、いかにプレッシャーに打ち勝つか、アーニー(エルス)と一緒にプレジデンツカップでプレーした時のやり方でプレーしたら克服できたんだ。自分を含めた世界選抜のチームメンバーも、そんな感じで優勝できた人が何人かいたと思う」という。
強いアメリカと戦って引き分け、自信をつけた選手たちがトーナメントでも活躍するという現象は昔もあったようだが、今年もまさに同じ状況と言っていいだろう。松山英樹もこのところ調子を上げているが、このプレジデンツカップジンクスにあやかり、優勝者の中にその名を連ねるのも近いかもしれない。