T100と同じ見た目でちょっと飛ぶ「T100S」
タイトリストのTシリーズは、昨年登場したアイアンシリーズ。T100から、T200、T300と数字が大きくなるほど飛距離性能・やさしさが増していく、言い換えればアマチュア向け的な要素が増していく。
T100はそんなわけでシリーズでもっともシャープなモデルで、PGAツアーでも使用するプロが多数いる。新たに登場した「T100S」は、ロフトが2度ストロングロフト化し、7番アイアンでのロフトは31度(37インチ)と、形状や打感はそのままに飛距離も手にしたモデルだ。試打したPGSTの堀口宜篤プロは言う。
「パッと見ただけではT100と見分けがつきません。長さも変わらず本当にロフトが2度立っているだけのように見えます。打ってみても打感もT100と変わりませんでした」(堀口)
レーダー式弾道計測器フライトスコープを使って5球打った平均で見てみると、トータル飛距離の差は3.5ヤード。スピン量も4800回転台でほぼ変わらない。驚いたのは、ロフトが立っているにもかかわらずT100Sのほうが1.3メートルほど高さが出ていたこと。その分、落下するときの角度(降下角)もわずかに鋭角でグリーンでの止まり方もT100にまったく引けをとっていないことがわかった。
T100 トータル飛距離183ヤード スピン量4812回転/分 高さ29.9メートル 降下角46.4度
T100S トータル飛距離186.5ヤード スピン量4828回転/分 高さ31.3メートル 降下角47.2度
「ただロフトを立てただけだとソールの角度が立ち、リーディングエッジが芝に刺さりやすくなってしまいますが、しっかりとソール形状が設計されているようですね。打感の良さは確保しつつ内部に比重の重いタングステンウェートをトウ、ヒールに配分することで、ボールの高さも出ています」(堀口)
飛距離の差は3ヤード程度とわずかだが、打感やフォルムはそのままで高さを確保してくれるのはありがたい。たとえグリーンの狙ったエリアに飛んで行っても、止まってくれなければスコアに結びつかないからだ。
「T400」はストロングロフトながら長さは普通の飛び系
一方の「T400」アイアンは見た目からして飛び系アイアン。ソール幅にボリュームがあり、実際ロフトも立っている。7番アイアンで26度とT100(33度)と比べると7度もの差があり、T100の5番アイアンと同じロフトの数字となっている。
最近の飛び系アイアンは長さも長い傾向があるが、T400の場合、長さは37インチとT100 と同じだ。そうなると球が十分に上げられるかどうかがポイントとなるが、試打結果はどうか。
T400 トータル飛距離200ヤード スピン量4405回転/分 高さ30.9メートル 降下角45.8度
というわけで、飛距離はT100と比べると17ヤードアップ。スピン量は400回転/分ほど少ないが、高さは30.9メートルとロフトが7度寝ているT100よりも1メートル高いという結果になった。
「見た目の通りに打ち込まずにUTのようにレベルに打つと高さも飛距離も出ました。飛距離が示す通り打感は弾き感が強いです。打点のバラつきにも強く、クラブ長が7番の長さなので振りやすさもあります。試しにスピードを落としてカット軌道で打ってみたのですが、軽いフェードで高さも出たし飛距離もしっかり出たので、ドローヒッターよりはフェードヒッターのほうがマッチするかもしれませんね」(堀口)
ソール幅も広く、多少ライが悪くてもソールが滑ってボールをとらえてくれそうだが、その機能を生かすためにも打ち込むようなダウンブローではなく、払うように打つのが良さそう。クラブ長の短いUTのような感覚で使えそうなアイアンだ。
このように、ふたつのTシリーズの新モデルは飛距離という共通するキーワードはあるものの、まったく異なるカテゴリーに位置していることが試打で確認できた。
T100Sはロフトが半番手分だけ立っていて見た目はツアーモデルというアイアン。シャープなアイアンが好みだが、飛距離もちょっとだけ欲しい……そう願うゴルファーには有力な選択肢になりそう。一方のT400は長さが長くない飛び系。どちらも追加モデルだけに、“ありそうで、意外とない”絶妙な味付けが施されたアイアンと言えそうだ。