初日9アンダーで暫定首位だったが……
まずは話の枕から。全米オープン2勝のレティーフ・グーセン(51歳)は昨年チャンピオンズツアーのブリヂストン・プレーヤーズ選手権に優勝し今回レギュラーツアーのプレーヤーズへの出場権を得た。
グーセンの全盛期には5月開催だった大会は昨年から3月に移動。「5月と比べるとこの時期のTPCソーグラス(開催コース)はずっと難しい。北風が強く吹くし地面も硬い。でも今年はちょっと様子が違うようだね」
「まずグリーンが例年に比べて柔らかい。それに今週はどうやら風があまり吹かないらしい。日々コンディションは変わるが爆発的スコアが出る条件は整っている。ビッグスコアの競演になるのでは?」と戦況を予測したのだ。
もちろん松山を優勝候補に名指ししたわけではない。しかしビッグスコアが出る条件が整っていることをベテランメジャーチャンプは指摘。好条件のアドバンテージを最大限に活かしたのが松山だった。
松山本人も「練習場ではあまり調子が良くなかったけれど、いざラウンドがスタートするといい流れで波に乗るができた」と4連続バーディの好スタートに手応え十分。グレッグ・ノーマン、フレッド・カプルス、ニック・プライスに並ぶコースレコードに「皆メジャーチャンピオンだから光栄。最後のホール(9番)がイーグルなら並べるとわかっていたので意識した。最後の最後に今日一番のパットが打てた」とイーグルフィニッシュに達成感を滲ませた。
その時点では2日目からは無観客試合になる予定で「応援が背中を押してくれる部分があるのでギャラリーがいないのは寂しい。でもテレビを見て応援してくれる人は大勢いると思うので(観客がいない)学生時代を思い出して頑張りたい」と語っていたが状況が急変。試合がキャンセルになるという前代未聞の事態に。
ノーマンらと肩を並べた記録も久々の優勝のチャンスもすべてなくなってしまった。
ところで前出のグーセンは51歳にして2アンダー70で回り37位タイとまずまずのスタートを切っていた。その彼は静かに一番心に残っている優勝の思い出を口にした。
「2001年の全米オープンはプレーオフにもつれて月曜日に決着。ヘトヘトだったけれど、すぐにニューヨークに飛んでロンドン行きの飛行機に乗り継がなければならなかった。家族もいないしたったひとりでブリティッシュエアの機内で“全米オープンに勝ってきたんだよなぁ”と思いながらシャンパンのグラスを持って心のなかで“乾杯!”とつぶやいた。華やかな宴のあとの寂しい夜だった」
「でもそのあとパイロットが席にやってきて“グーセンさま、全米オープン優勝おめでとうございます”と祝ってくれた。これはなかなか洒落た思い出だね」
松山にもこんな洒落たエピソードができる可能性は大いにあったのに……無念。今後どうなるかわからないがゴルフの神様の粋な計らいを期待したい。
※3月13日11時30分に公開した記事を、大会中止を受けて大幅に改稿しました