その一瞬、秒速120メートルで情報は神経を駆け巡る
具体的にスポーツで大脳はどんな働きをするのか、そのメカニズムをみてみることにしましょう。
舞台は小学生の野球大会。未来の大リーガーがバッターボックスに立っています。カウントは3ボール2ストライク。ピッチャーが投げました。
このとき、まだ小学生ながらもその野球少年の大脳は、こんな働きをしています。
【1】目でボールをとらえる。
【2】その情報が大脳に伝わる。
【3】情報をキャッチすると大脳辺縁系(本能的な動きを起こす部分)が働く。
【4】情報が運動前野の記憶部分に伝わり、過去の記憶からこのボールがストライクだと判断する。
【5】運動前野の運動の計画部分は、「打つ」という決定を下す。
【6】決定の情報は運動野に伝わり、「打て」という指令を神経系を通じて体の各部に伝える。
【7】同時に決定した情報は運動を調整する小脳にも伝わり、スウィングの強弱やタイミングなどを調整。
【8】大脳のコンピュータで調整された指令が、体の各部の筋肉に伝わりバットを振る。
読むと大変、時間がかかるように思えるでしょうが、大脳から神経系統を通じた情報の伝達スピードは、秒速100~120mといわれています。
その猛スピードにも驚かされますが、小学生の大脳が瞬時のうちにこれだけのことを行っているのです。そんな大脳の働きの方が、私には驚きでなりませんがいかがでしょうか。
そして体を動かせば動かすほど、体から大脳に、大脳から体に刺激と指令が双方向に、しかもエンドレスに伝達されると、刺激で大脳はさらに活性化し、指令もさらに超高速、より正確なものに磨かれていきます。つまりスポーツをやればやるほど、頭がよくなるのです。
「頭がよくなる運動教室 オリンピック子育て論」(ゴルフダイジェスト社)より ※一部改変