プロは気に入ったフェアウェイウッド(FW)を長く使うケースが多い。なぜかと言えば、FWはティショットでも使うし芝の上からでも使うため、クラブに求めることが多く、それだけに一度気にいると変えにくいのだ。
しかし、テーラーメイドのSIMシリーズ、キャロウェイのマーベリックシリーズのFWは既に実戦投入している選手が多い。プロもあっさりスイッチできるのは、(もちろん契約プロとして積極的にスイッチしているということはあるとしても)一体どんなところに優位性があるのか?
そこでテーラーメイドの「SIM」と「SIMマックス」。キャロウェイの「マーベリック」、「マーベリックサブゼロ」、「マーベリックマックス」の5モデルの3番ウッドを試打比較してみた。弾道計測器フライトスコープを使ってデータを取りつつ、東京・新小岩のゴルフスタジオ「PGST」でプロゴルファー・堀口宜篤がそれぞれ5球ずつ打ち、性能を比較した。
計測結果をまとめた表が以下だ。ヘッドスピードはドライバー換算で45m/sを基準に試打を行った。
モデル名(ロフト) | 飛距離(ヤード) | スピン量(rpm) | 打出し角(度) | 高さ(メートル) | 降下角(度) |
---|---|---|---|---|---|
SIM (15度) | 277 | 2291 | 13.2 | 31 | 40.1 |
SIMマックス (15度) | 263 | 3352 | 11.1 | 29 | 40.9 |
マーベリック (15度) | 276 | 2621 | 12 | 29.8 | 39.8 |
マーベリックサブゼロ (13.5度) | 266 | 2711 | 11.6 | 30 | 39.5 |
マーベリックマックス (16度) | 260 | 3065 | 13.4 | 31.5 | 42.1 |
データを見るとSIMとマーベリック、それぞれのスタンダードモデルの飛距離がずば抜けていることがわかる。この2モデルはスピン量が同じく少なめで、飛距離を求めたモデルと言っていいだろう。SIMマックス、マーベリックマックスに関してはどちらもスピン量が他のモデルと比べて多めだった。
試打した堀口は、FWのたしかな進化を感じたという。
「3番ウッドでも以前に比べると低スピンになってきましたね。飛距離はもちろん、方向性も良くなっていますのでドライバーと同じでやさしくなっていると思います。プロが使うクラブは難しいと思われていましたが、ドライバーに始まりFWもやさしく飛ばせるモデルになってきている印象です」(堀口)
では、それぞれのインプレッションを詳しく聞いてみよう。
SIMの飛びにはびっくり
「マキロイが投入しているモデルですね。カーボンクラウンにチタンのボディとフェースを採用しややサイズ感もアップしています。今までのモデルの中で最も低重心のFWだということは、スピン量の少なさと球の高さで感じられます。構えたときにフラットに見えるからボールを拾える感じがするし左へ引っかけるような不安要素もない。懐かしい『Vスチール』のソールのおかげで抜けもよさそうです。弾き感も強くて、FWからでもティアップしても高さも出てめちゃくちゃ飛びます。マキロイが使うのも納得です」(堀口)
SIMマックスはつかまって上がる
「同じくVスチールソールを採用していますが、こちらはステンレス製のボディです。打った感じはマイルドで球が食いつく感じがあります。球はつかまりやすくコントロール性も高い、SIMよりも操作性は高く感じました。Vスチールソールの効果もあって抜けもいいし、前作にあたるM5やM6のFWと比べても打感がマイルドになりました」(堀口)
マーベリックは飛ばせる
「球が強く飛距離がしっかり出ます。モデル別のAIフェースで特徴を出しているようですが、マーベリックはしっかり弾き初速が速い。そのせいでスピン量も少なめで飛距離に結びついているのでしょう。少しアップライトでシャロ―なのでボールを上げてくれるイメージでやさしさを感じます。プロも使えるやさしいFWという印象です」(堀口)
マーベリックサブゼロは操作性が高い
「マーベリックサブゼロは、ディープフェースでサイズもコンパクト。上級者やヘッドスピードが速い人が好む形状です。いわゆる左への引っかけが出ないようにつかまり過ぎない印象です。マイルドな打感で持ち球を生かせる飛び方が好印象です。ロフトが13.5度なのでドライバーのヘッドスピード45m/sはほしいところです」(堀口)
マーベリックマックスは最強にやさしい
「マーベリックマックスはグッとやさしくなってヘッドスピード40前後から使えるモデルと言えます。ロフトも16度ありややアップライトなのでつかまり感が強いです。無理に上げようとしなくても球が上がってくれるので安心して打てます。3モデルともミスヒットには強い性格ですが特にヘッドサイズが大きくてミスヒットには一番強いモデルです。特にスライサーを想定して打ってみると適度につかまってくれて曲がりも少なく方向性も抜群でした」(堀口)
「打ち比べてみてそれぞれの特性がわかってきたので、どれにするか迷いますね。私はSIMとマーベリックでかなり迷っていますが、どちらか選べと言われたらSIMを選びます。そこは好みですね」とは堀口。話題のSIMとマーベリックはFWでも熱い戦いを繰り広げたようだ。
テーラーメイドの往年の名FWで、SIMとSIMマックスがそのソール形状を採用したVスチールには、今思うと「Vスチールマックス」といったモデルは存在しなかった。それが今では、ひとつのFWに複数のモデルがラインナップされるのがいわば当たり前になってきている。
しかし、たとえばマーベリックサブゼロとマーベリックマックスでは名前は似ていても性能は大きく違う。その“違い”をまずは頭に入れたうえで試打を行うのが肝要だ。
取材協力/PGST