プロ野球セ・パ両リーグでチームドクターとして活躍した吉松俊一氏は「幼少期からの運動が脳の活性化につながる」という。吉松俊一氏とその息子・吉松俊紀氏の共著「頭がよくなる運動教室 オリンピック子育て論」から、頭のいい子どもを育てるヒントをご紹介。

運動している子としていない子の学力の差

運動能力と学力には、どのような関係があるのでしょうか。

近年、飛躍的に進歩する「脳の研究」は、運動が脳に及ぼす影響を科学的に次々に明らかにしています。

たとえば2014年、アメリカ・イリノイ大学のチャールズ・ヒルマン教授の研究グループは、『ランダム化比較実験が子どもの実行調整と脳機能に及ぼす影響』という論文を発表しました。 タイトルは非常に難解ですが、簡単にいえばこれは運動をした子どもの脳と、運動をしなかった子どもの脳には、それぞれどのような影響があったかを調査したものです。

具体的には8~9歳の子ども221名を対象に、運動プログラムに参加するグループと(109名)と、参加しないグループ(112名)に分けます。参加する子どもたちは、与えられた運動プログラムを放課後の2時間、週に5日、これを9ヶ月にわたって行います。そして9ヶ月後にそれぞれ脳にどのような変化があったかを調べました。しかもこの研究は09年から13年まで実に5年をかけた大々的なもの。さらに運動プログラムに参加しなかった子どもたちにも9ヶ月後には参加してもらい、脳の変化を調べるという丁寧なものでした。それだけに運動と脳の関係について、もっとも信ぴょう性の高い研究に数えられています。

そして研究によれば、運動をした子どもには脳機能の向上が認められたのです。運動をした子どもの方がテストの正解率も高く、テスト中には脳を活発に働かせていることも明らかになりました。

画像: 研究によって、運動をしたほうが脳を活性化できることがわかっている(写真はイメージ)

研究によって、運動をしたほうが脳を活性化できることがわかっている(写真はイメージ)

またある研究では、有酸素運動と計算をするときの脳の活動領域が同じだということが明らかになっています。計算は脳の認知機能のひとつであり、学力ともおおいに関係することはいうまでもありません。

さらに別の研究では、運動は脳のエネルギー消費量を増やし、知能が向上する可能性を指摘しています。運動によってエネルギーとなるグリコーゲンは減少しますが、運動後の休養や栄養補給により、貯蔵量を超えて蓄積されます。この現象をグリコーゲン超回復といいます。これは脳のなかでも起こる現象であり、これも運動と学力には大きな関係があることを示しています。

「頭がよくなる運動教室 オリンピック子育て論」(ゴルフダイジェスト社)より

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