ジュニアゴルファーを親が指導するという家庭も少なくないが、試合を重ねるにつれて生じてくる課題のひとつは“メンタル”だ。より高いパフォーマンスを発揮するために必要なことは一体なにか、プロも教えるメンタルコーチ・池努が伝授。

集中力がない、本番に弱い、切り替えられない……原因は!?

メンタルコーチをしていてここ数年で多くなっている問い合わせが「こどもがゴルフをやっていてメンタルが弱いのでメンタルトレーニングをしたい」という小学校高学年から中学生のお子さんをお持ちの親御さんからの依頼です。

これはゴルフに限らずテニスやサッカー、野球、剣道など競技は様々ですがゴルフの依頼が一番多いですね。なぜゴルファーからの依頼が多いかというと親御さんがコーチ的な存在であることが関係しているようです。

ゴルフは練習やラウンドにおいて親御さんの送り迎えが必要です。そして、ラウンドするとなると当然親御さんもお子さんのゴルフを見ます。そして、技術的に足りない部分に関してはご自身で指導するか、またはゴルフスクールに入会してティーチングプロに指導してもらうという形に。そして、親御さんから見て心理的に足りない部分はメンタルコーチに依頼がある。そんな流れがあるからだと思います。

画像: ジュニアゴルファーがより高いパフォーマンスを発揮するために重要なこととは?(撮影/内田真樹)

ジュニアゴルファーがより高いパフォーマンスを発揮するために重要なこととは?(撮影/内田真樹)

今回から数回の記事でお子さんにアスリートとして必要なメンタルを身につけることにつながる親御さんが知っておくべきコーチングスキルを実践しやすい内容をお届けできればと思います。ちなみに親御さんから相談されるお子さんのメンタルの課題をまとめると次になります。

・試合になると緊張してスコアにならない
・ミスをしだすと切り替えられない
・もっと貪欲に上を目指してほしい
・自分で考えてゴルフすることができない(コースマネジメントが苦手)
・集中力が足りずにもったいないミスが多い

試合になると緊張してスコアを崩して、ミスをしだすと気持ちも萎えてしまい、切り替えられずにズルズルとゴルフをしてしまうタイプのジュニア選手は多いです。この場合どのようにコーチングしていけば良いのでしょうか。

ちなみにこども達に「なぜ試合になると緊張したり、ミスしだしたりするとイライラするのかな?」と質問すると「スコア出せないと怒られるから」「80台を出せなかったらへこむから」「同じ組の人よりスコアが悪いとイヤ」「ミスすると最後のスコアがまた悪くなるってわかるから」というような答えをくれます。つまり、一番の原因は「結果(スコア)」にこだわりすぎて結果志向になっていることです。

80台を出す、70台を出すというように結果目標をつくることはアスリートとして大事なことですがそこにこだわりすぎて「結果、結果、スコア、スコア、70台、70台」と思うことはプレッシャーを増加させます。私たち大人も同じですね。そして、よくよく聞いていくと結果にこだわる原因が親御さんやコーチからの圧力であるケースも多いです。「プロになりたいなら結果がすべてだ」とそのような声掛けを幾度とする内にこどもの考え方(マインドセット)に「結果が一番大事だ」と刷り込まれていきます。

すごく矛盾するような話になってしまうのですが親御さんやコーチがこどもさんに結果を出し続けるゴルファーに育ってほしいと願うのであれば「結果より成長や努力を優先的に考えるマインドづくり」をすること重要です。アスリートのマインドセットなどを研究するスタンフォード大学の心理学教授キャロル・ドゥエック氏は「結果を出し続けるアスリートは自分のベストを尽くし学び向上することを成功ととらえていた」と言っています。

また、キャロル氏の研究でこどもの行動に対する結果をほめると次の難しいチャレンジは「できなかったらどうしよう」とトライしづらくなり、こどもの行動に対し努力をほめると9割の子が次の難しいチャレンジに対しても「やってみよう!」とトライする傾向が確認されています。つまり、結果を求め、そして結果を褒め叱るとチャレンジできなくなり積極性やポジティブな気持ちを失う可能性が高いのです。

私が小学生をメンタルコーチするときは結果を出したい大事な試合でこそ、結果を目標にするのではなく「この大会で何を頑張るか、やりきるか?」を問い、プレーやマネジメント面、ゴルフを楽しむ気持ちやミスをしても視線をあげて歩くなどのメンタル面のテーマを設定し、それらをやり抜くことにフォーカスしてもらいます。

そして、試合後のセッションでは結果ではなく先にそのプロセス部分の頑張りを振り返り、できた部分を承認していくことに徹します。すると選手は自然と「頑張ること」に楽しさややりがいを感じてくれ未来の結果に対する不安ではなく目の前のプレーに目を向けることができる好循環が生まれ自分らしいプレーができるようになります。そして、それに結果もついてくるわけです。

サポートする親御さんから見てお子さんの言動にイライラすることはもっともなことだと思います。しかし、もし結果を出し続けるゴルファーに育ってほしいと願うのであれば「結果より成長や努力を優先的に考えるマインドづくり」をすることが近道になります。次回の記事ではこどもへの具体的なプロセスの認め方などを紹介していきます。

This article is a sponsored article by
''.