プロ野球セ・パ両リーグでチームドクターとして活躍した吉松俊一氏は「幼少期からの運動が脳の活性化につながる」という。吉松俊一氏とその息子・吉松俊紀氏の共著「頭がよくなる運動教室 オリンピック子育て論」から、頭のいい子どもを育てるヒントをご紹介。

子どもの才能を開花させる「脳のアイドリング」

昔の自動車は冬場になるとエンジンがかかりにくく、なかなか発車させることができませんでした。車をすぐに動かし、その性能をフルに発揮するためには、事前にエンジンを暖めておくアイドリングが必要でした。

脳もこれと同じです。「人間の脳は30%眠っている」という科学者がいますが、これは本来持った脳の性能をフルに発揮できないことに他なりません。では、なぜできないかといえばアイドリングが不十分だからです。

脳のアイドリングとは「脳の基礎体力づくり」と考えていいでしょう。脳の基礎体力には遊びやスポーツなど体を動かすことがとても重要で、脳の発達を考えるとゴールデンエイジ(編注:8~12歳くらいまでの、もっとも神経回路が発達する時期のこと)までになされるべきです。子ども時代の過ごし方によって脳の能力、つきつめれば人生の可能性が決まるといっても過言ではありません。

アイドリングが子ども時代になされるものだとすると、両親や祖父母といったもっとも身近な大人の責任は重大です。またその有効な方法がスポーツ(体を動かすこと)である以上、教師や指導者のスポーツに対する考え方や育成法も大きく影響します。

画像: 子どもの脳の発達には両親や教師、周囲の大人たちのスポーツに対する考え方も非常に重要だ(写真はイメージ)

子どもの脳の発達には両親や教師、周囲の大人たちのスポーツに対する考え方も非常に重要だ(写真はイメージ)

最近ではあらゆるスポーツでジュニア化が進み、競技を開始する時期の低年齢化が進んでいます。それ自体が悪いことではありませんが、一方で高度なスキル、勝つ方法を教えることが役目だと思っている親や指導者も少なくありません。実際、スポーツの現場では、選手を怒鳴ったり殴ったりする指導風景がいまもまだ繰り返されています。それが近年、スポーツ界で頻発する不祥事の温床になっていることは間違いありません。

しかし大人の役割は高度なスキルや、勝つための方法を教えることでしょうか。私はそうは思いません。というのも脳の発達には楽しさや達成感、さらに負けたときの悔しさや、失敗しても次に成功するための創意工夫が不可欠だからです。大人の役割はそうした環境づくりと、目の前の結果にとらわれず暖かく見守ること以外にありません。怒鳴られたり、殴られたりし続けた脳は、発達を阻害され萎縮します。まして柔軟で、もっとも脳が発達するゴールデンエイジではなおさらです。

「頭がよくなる運動教室 オリンピック子育て論」(ゴルフダイジェスト社)より

画像: ずんのやす挑戦!100ヤード、きっちり寄せるには【講師:小澤美奈瀬】 youtu.be

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