PGAツアー選手からの評判が良い、タイトリストのボーケイSM8ウェッジ。そんなボーケイウェッジのツアーサポートを務めるアーロン・ディル氏に、在米ゴルフジャーナリスト、アンディ和田が直撃取材! ツアー選手たちの“ウェッジ事情”を探った。

PGAツアーで一番人気のウエッジといえばタイトリストのボーケイウェッジです。世界ランク上位10人中7人、20位までだと12名が使用中。タイトリスト契約の選手だけでなく契約外の選手の使用率も高く、昨年秋にツアー選手に支給された新モデル「SM8」は重心位置が改良され、高さのコントロールが向上し好評のようです。

画像: タイトリストの最新ウェッジ、ボーケイSM8はPGAツアープロたちに人気だ(写真/アンディ和田)

タイトリストの最新ウェッジ、ボーケイSM8はPGAツアープロたちに人気だ(写真/アンディ和田)

巨匠ボブ・ボーケイ氏は昨年80歳を迎えました。現在はカリフォルニアのテストセンターでフィッティングや開発がメインとなり、以前のように毎週のツアー会場でツアーサポートはしていません。今回はボーケイウェッジのツアーサポートの大役を務めているアーロン・ディル氏の話を紹介させてください。

ディル氏は、自身がツアー選手のウェッジに施した刻印を紹介するインスタグラムの投稿でも人気を集めています。1月にはジャスティン・トーマスがヘリコプター事故で亡くなったNBAレジェンド、コービー・ブライアントの名前が刻まれたウェッジを使用し、試合終了後チャリティーオークションで100万円以上の額で落札されたそうです。

Aaron Dill’s Instagram post: “Some dog live for brand ambassador @cameronsmithgolf @titleist @vokeywedges #sm8 #dogs #vokey #invokewetrust #wedges #sausagedog…”

www.instagram.com

最近はディル氏の個性的なウェッジ刻印の仕事ぶりで注目度が高くなり、単に刻印だけをする職人だと勘違いされて苦笑いしていましたが、世界のトップ選手のショートゲームを支えるウェッジのサポートをする信頼度の高い人です。

「タイトリスト社では2005年から働きはじめ、2007年からボブ(・ボーケイ氏)の手伝いとしてツアー会場の転戦を続けています。私の任務は毎週PGAツアーで活躍する選手をサポートする(モーターレースにたとえると)ピットクルーですね」(ディル氏、以下同)

ツアープロをサポートするうえで大事なのは「選手から必要とされているニーズに対応し、信頼関係を築き上げることです」とディル氏は言います。

「ボブから長年学んできたのは、その基盤となる考え方です。ウェッジのパフォーマンスを向上するために選手の意見を聞き、フィーリング、打音、形状、選択肢などを考慮していくことです。ツアープロは優れた才能と技術を持っていますが、道具にも繊細で細かい所をしっかり感じ取ることができます。重さはもちろん、ライ角やソールのバウンス角は1度未満、0.5度の違いも感じ取れるのです」

ツアー会場での任務は月曜日から水曜日までの3日間。試合会場での仕事を終えると西海岸カリフォルニアのテストセンターでボーケイ氏に報告をして、データの整理をするそうです。

ところで、試合が行われる場所や芝、加えてコースコンディションによって選手の要求度はどのように変わるのでしょうか?

「1月から2月中旬までに開催される西海岸での試合の多くは地面が硬め。芝の種類(ライ芝、ゾイジア、キクユ)を考えると、どちらかというと地面からボールが浮くケースが多いので、バウンス角は少なめのものを選ぶ選手が多いです。2月下旬から東海岸フロリダ州に移動すると地面が砂ベースで柔らかく、難しい逆目のバミューダに対応するためにバウンス角を調整したり、ときにはロフトの少ないウェッジでの寄せの選択肢を薦めるケースもあります。(例年は4月に開催されるマスターズの舞台)オーガスタでは高さが必要になるのでロフトを増やすリクエストも来ます」

溝について、ツアー選手はどれぐらいの頻度でウェッジを交換するのでしょうか?

「ウェッジの溝というのは消耗品なので、スピンを効かせてボールのコントロールをするには溝の状態を確認しないといけません。ツアー選手には『1-2-3-4』の法則を基本にしたらいいと伝えています。年間でピッチングウェッジ(46度/48度)は1本、ギャップウェッジ(50-54度)は2本、サンドウェッジ(56-58)は3本、ロブウェッジ(60-64)は4本。 頻繁に替える選手は1年でロブウェッジを6本変える選手もいます」

ちなみにアマチュアゴルファーのウェッジ交換の目安を聞いてみると、「どれぐらい練習するかというのも考慮しないといけませんが、ラウンド数の目安としては70~80ラウンドぐらいで交換することをお薦めします」と教えてくれました。

「SM8」はSM6、SM7の反省点を活かして設計された

新製品の「SM8」の特徴について聞いてみると、「新製品の『SM8』モデルを説明するには(2バージョン昔の)『SM6』の開発時まで溯る必要があります」とディル氏は語ります。

「SM6ではトップラインを厚めにしてクラブの重心位置を高くしました。高くすることによって向上したのは打点がスウィートスポットを外したとき、またはスコアラインの下から5本目以上に当たったときのパフォーマンスでした。ツアー選手からの評判はとても良かったです。しかし重心を高くするということは重心が後ろに下がることになります。『SM7』を開発したときに、ソール形状が広めの『K』や『D』グラインドを使用する選手から『ボールの高さのコントロールが難しく、狙いよりも高く上がってしまう』という意見があり、重心位置について試行錯誤を繰り返しました。ゴルフクラブで重心位置というのはドライバーで打ち出し角やスピン量をコントロールするのに説明されるケースが多いですが、ウェッジにもインパクト時のロフトとスピン量に影響をもたらします」

このような経緯があり、「『SM8』を開発するにあたっていろいろな状況を想定してテストを繰り返しました」とディル氏は続けます。

「SM8では重心を前方に移動することに成功しました。トウ側にタングステンを埋め込み、ヒール側はホーゼルの長さを増やしました。結果的に平均値で慣性モーメントが7%増え、打感も向上しました。ツアー選手はこの『SM8』を気に入ってくれ、このモデルを使用してくれています。昨年秋から多くの選手達が優勝という形で結果を残してくれているのは開発チームの1人として本当に嬉しいことです」

新しい「SM8」は異なるロフトや形状など合計すると23モデルが用意されています。 最後にタイトリストの看板選手の使用ウェッジの詳細をご紹介します。

※たとえば「48 10 Fモデル」ならば「ロフト48度 バウンス10度 Fソール」を表す。
【アダム・スコット】
48 10 F モデル
52 12 F モデル
56 10 S モデル
60 06 K モデル

【ジャスティン・トーマス】
46 10 F モデル (47.5度ロフト)
52 12 F モデル (52.5度ロフト)
56 14 F モデル (57度ロフト)
60 12 K モデル (60.5度ロフト)、または60 Tモデル (60.5度ロフト)

【ジョーダン・スピース】
46 10 F モデル
52 08 F モデル
56 10 S モデル
60 04 L モデル又は60 Tモデル

画像: シリーズ集大成の出来!? タイトリスト「ボーケイデザインSM8ウェッジ」を試打解説! youtu.be

シリーズ集大成の出来!? タイトリスト「ボーケイデザインSM8ウェッジ」を試打解説!

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※2020年4月14日16時00分 文章を一部修正いたしました

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