話題の国産大慣性モーメントドライバーを打ち比べてその真価を考えた
現在はヘッド体積のルール上限である460㎤の大型ヘッドドライバーが主流だが、その中でも性能は様々だ。今回は、慣性モーメントの値を追求したドライバーにスポットを当ててみよう。
そもそも慣性モーメントとはゴルフ用語ではない。物体が軸を中心として回転運動をし続けようとする回転の慣性の大きさを表す数値のことで、簡単に言ってしまえば物体が回ろうとするのに、もしくは回っている物体が止まろうとするのに必要とする力のことだ。
ゴルフクラブの性能評価に出てくる慣性モーメントとは、主にヘッド左右慣性モーメントの事を指し、芯を中心にヘッドが左右にブレる具合を表すことに使われる。
平たく言えば、慣性モーメントが大きいほど芯を外した時にヘッドがブレにくい、つまりボールが曲がりにくく飛距離ロスが起きにくいということに繋がるのだ。ちなみにこのヘッド左右慣性モーメントの高さもルール上限があり、5900g㎠+誤差100g㎠と定められている。
最新モデルにも、そんな慣性モーメントの大きさをポイントにしたドライバーがいくつかラインナップされている。数値が公表されているもので言えば、ヤマハ「RMX220」はヘッド左右慣性モーメントが5760g㎠、プロギア「eggエクストリーム」は5750g㎠。オノフ「オノフAKA RD5900」は具体的な数値こそ伏せられているが、そのモデル名からも大慣性モーメントを売りにしたモデルと言えるだろう。
一口に大慣性モーメントと言っても、もちろんモデルごとに違いはある。先に挙げたヤマハ「RMX220」、プロギア「eggエクストリーム」、オノフ「オノフAKA RD5900」はそれぞれどんな特性を持ったクラブに仕上がっているのだろうか? クラブフィッターの小倉勇人氏に解説してもらおう。
「RMX220はアスリートブランドの中でも直進性を重視した仕様のモデルで、アスリートが使えるやさしいモデルとして設計されています。実際に打った感想は、芯を外しても曲がりが少なかったです。そのぶん、操作性は低めでインテンショナルに曲げると言ったことはあまり得意ではないクラブですね。アスリートモデルだけあって、比較的低スピンの重い弾道が打ちやすいのでシンプルにコースを攻めていきたいという方におすすめのモデルです」(小倉氏、以下同)
「eggエクストリームは概念にとらわれない独創的な発想を持つブランドであるeggらしいモデル。慣性モーメントを高めて芯を外しても曲がりにくいという点は一緒ですが、剛性の高い純正シャフトはスウィング中のヘッドの抵抗にも負けない張りを持っています。強振しても振り負けないのでガンガン振っていけるクラブに仕上がっています。とにかく気持ち良く振り回していけるクラブと言えますね」
「オノフAKA RD5900は適度なつかまりを持たせてあり、打点の安定しないアベレージゴルファーが非常に恩恵を受けやすいモデル。慣性モーメントを高めつつ、つかまりを追求すると、つかまるけれどタイミングがズレると右にすっぽ抜けるといった極端なものになりがちなのですが、RD5900は多少タイミングがズレても適度につかまる性能が変わりにくく、打ち出し方向がかなり安定します。言葉は悪いですが雑に打っても曲がらない、結果の出しやすいモデルと言えますね」
慣性モーメントの大きいドライバーに総じて言えるのは曲がらずに真っすぐ飛び、その結果飛距離ロスも起きにくいという点。ではどのモデルもルール上限近くまで慣性モーメントを高めれば良いのでは? と思う方もいるかもしれないが、「そうなっていないのはデメリットもあるからです」と小倉氏は言う。
「ヘッド左右慣性モーメントを高めるにはヘッド重量を重くする、重心深度を深くするといった方法がいくつかありますが、重量(バランス)の増加や、低スピン化しにくいなどの弊害も生まれます。慣性モーメントをギリギリまで高めようとすると振り心地やスピン量に影響が出るので、慣性モーメントの高さがデメリットになってしまうことだってあるのです。もちろん、そのモデルのメインターゲットがどんなゴルファーなのかによって変わってきますが、慣性モーメントをいたずらに高めるよりはほかの性能を重視したほうが、良い結果の生まれやすいクラブが作りやすいということなんでしょう」
つまり、クラブの恩恵を十二分に受けるためには自分のスタイルに合ったものを選ぶ必要があるということ。大慣性モーメントドライバーの直進性の高さは大きな魅力だが、ほかのモデルと同様に「誰もが飛んで曲がらない、夢のドライバー」ではないことには注意すべきだろう。