ここのところ慣性モーメントの高さを売りにしたドライバーが増えている。4月に発売されたプロギアのeggシリーズの新たなラインナップ「eggeエクストリーム」もヘッドの左右慣性モーメントが5750g㎠と、ルール上限である5900g㎠に迫る高慣性モーメントドライバーだ。
そもそもゴルフでいう慣性モーメントとは主にヘッド左右慣性モーメントのことを指し、数値が高いほど芯を外したときのヘッドのブレが少なくて済む。つまり慣性モーメントの高いドライバーは、芯を外したときにエネルギーロスが少なく、曲がりが少ないモデルに仕上がっているというひとつの証明になるのだ。
そうなると世の中のドライバーはとにかく慣性モーメントを高めれば良いという発想に行きつくが、ただ高めれば良いというわけではないらしい。クラブフィッターの小倉氏はこう話す。
「慣性モーメントを高めるには、ヘッドを重くする、重心位置を長く深い位置に設計するなどといったいくつか方法がありますが、どの方法でもいわゆるヘッドの操作性が希薄になります」(小倉氏、以下同)
直進性の高い弾道を打つのだから操作性はいらない、と思うかもしれないが、ここでいうヘッドの操作性とは「ボールコントロールのしやすさ」ではなく、「ヘッドの動かしやすさ」のことを指すと小倉氏は続ける。
「ヘッドが動かしにくいと、スウィングでフェースローテ―ションの大きい人はインパクトでスクェアに戻しきれず、ボールを右に打ち出してしまうといった症状になりやすいですし、このミスが起こるとそれを嫌がり、今度は左に打ち出す症状が生まれたりします。いかにヘッドをターンさせずにスウィングするかが使いこなすコツになります」
メーカーももちろんそういったデメリットもわかっていて、最近発売されている高慣性モーメントのドライバーはそれぞれに対策を施しているという。
ではプロギアのeggエクストリームはどんな特性を持った高慣性モーメントドライバーなのだろうか。試打した小倉氏に聞いてみよう。
「振り回せる大慣性モーメントモデルとでも言いましょうか、一発の飛びを楽しむエンジョイゴルファーにオススメしたい仕上がりでしたね。大慣性モーメントによるヘッドの操作性の希薄さをカバーするため、アイアンのグースネックのようにフェースを後方に下げてFP値を小さくすることと、重心角を大きくしヘッドがトップからターンしようとする力を大きくすることでボールのつかまりを高めています」
こういったヘッドの仕様だとシャフト選択によってはつかまり過ぎてしまい、左のミスになってしまうこともあるというが、eggエクストリームは純正シャフトとの組み合わせでそういった懸念を解消しているという。
「シャキッとしたしっかりめの純正シャフトと組み合わせることで強振しても負けない、適度につかまる仕様に仕上げています。ティイングエリアに立ったら、もうフェアウェイ真ん中しか見えない! とにかくフルスウィング! なんて方には試してもらいたいクラブです」
高慣性モーメントドライバーはどのモデルも直進性の高さは共通しているが、ターゲットとなるゴルファーに合わせて仕様が違うと小倉氏は言う。
「たとえばヤマハのRMX220はアスリートゴルファー向けの性能、一方オノフのAKA RD5900はアベレージゴルファー向け、といった具合にそれぞれ個性が出ています。慣性モーメントドライバーを手に取る際は、どんな“曲がらない”クラブなのかを知っておくことが大事です。それが自分の狙った方向に飛んでいく曲がらないクラブを手に入れるコツですよ」
協力/ユニオンゴルフクラブ