小さいヘッド=難しい……というわけじゃない?
現在のデカヘッドドライバー全盛の中で、必ず一定のメーカーが市販しているのがやや小ぶりなサイズのドライバー。
とくにパーツメーカーなど、比較的小規模なメーカーが販売している「地クラブ」と呼ばれるモデルの場合、大手メーカーと比べてヘッドサイズが小ぶりなモデルのラインナップが多い。たとえばマスダゴルフ「FBLドライバー」はヘッド体積が440㎤、ムジーク「オン・ザ・スクリュー ディープコンパクト」は428㎤だ。
この2モデルに限らず、地クラブメーカーのドライバーが小ぶりヘッドになりやすい理由を、クラブフィッターの小倉勇人氏はこう解説する。
「その理由は大手メーカーが作るモデルが、簡単に言えば万人向けだからです。大量生産するぶん数多く売らなければならないので、ミスに強く曲りが少ないデカヘッドで、多くのゴルファーが7、80点を出せる性能を目指して設計する。そのため、小ぶりヘッドのようなとんがったモデルが作りづらいんです」(小倉氏、以下同)
とはいえ、ドライバーの結果、つまり方向性や弾道はゴルファーのスウィングの特性で大きく変わる。それを補正するのがヘッドの基本性能でもあるのだが、もちろんデカヘッドで結果の出やすいスウィングがある一方で、結果の出にくいスウィングタイプもある。
「もちろんメーカーもそれを分かっていて振りやすさとヘッドの基本性能のバランスを考えて設計をしています。それでも1モデルで万人に合うモデルはできませんので、ブランドの中で性能の違う複数のヘッドを用意しているのです」と小倉氏。
その一方で、地クラブメーカーの場合は少量生産のため、作ったぶんしっかり売れてくれることが大事。そうなると『ある程度の需要はあるけど大手メーカーが作りづらいとんがったモデル』=小ぶりなヘッドサイズのドライバーが多くなるということだという。
では小ぶりのドライバーを求めるのはどんなゴルファーなのか。それは主に、昔からゴルフをプレーしていた、ヘッドローテーションが多めのスウィングをするゴルファーたちだ。彼らは「デカヘッドでは作りづらい性能を重視したヘッドを使いたいんです」と小倉氏は続ける。
「それは操作性です。操作性を高めるには重心距離を短めに設計する必要があります。大きいヘッドで重心を短く設計することはできますが、ヒール寄りに芯が来てしまうのでいびつで不格好なヘッドになってしまいます。だからサイズを少し小さくし、芯がフェースのセンター付近に来るように設計することで性能と形状が一致するようにしているのです」
では、先に挙げた小ぶりヘッドの地クラブ、マスダゴルフ「FBLドライバー」、ムジーク「オン・ザ・スクリュー ディープコンパクト」はそれぞれどのような性能を持っているのだろうか? 小倉氏に解説してもらおう。
「FBLドライバーはヘッド体積が440㎤で、投影面積はそれほど小さくは感じません。適度な安心感とシャープさを兼ね備えた形状をしています。つかまり性能はいわゆるニュートラルなポジションですが、強振してもつかまり過ぎないのが良いところ。フェード気味の弾道を打ってもスピンが増えすぎないので安定した飛距離が期待できるモデルです」
「オン・ザ・スクリュー ディープコンパクトはヘッド体積が428㎤とさらに小ぶりで、こちらは構えるとさすがに小ささを感じます。かなりのディープフェースになっていて上下のミスに強く、スピンが減らせるエリアが広くなっています。小ぶりなだけにフェースの開閉がしやすく狙ったところに打ち出しやすいのが特徴。操作性抜群です」
操作性が高いクラブと聞くとどうしてもアスリートや上級者向けといった印象を持つが「そんなことはありません」と小倉氏は言う。
「スウィングでヘッドローテーション、つまりフェースを開いて閉じる動きが大きい方がデカヘッドを使うとインパクトでフェースを戻しきれず右へのミスが大きくなったり、それを嫌がって左に引っかけてしまったりするケースがあります。そういった方は操作性が良いと言われるクラブを使うと良い結果になりやすいです。芯を外したときの飛距離ロスや曲がりに関して言えばデカヘッドには及びませんが、芯への当てやすさ、狙ったところへの打ち出しやすさという点では非常にやりやすいモデルです。是非デカヘッドが苦手という方は小ぶりというだけで難しいと思わずに試打だけでもしてみてください。意外と良い結果が得られるかもしれませんよ」
協力/ユニオンゴルフクラブ