タイガー・ウッズの最新クラブセッティングで特徴的なのがフェアウェイウッドの選択。3番は一世代前のモデルであるM5、5番は2世代前のM3を採用しているのだ。その理由をクラブフィッター・小倉勇人が推察した。

3番ウッドを「SIM MAX」から「M5」に戻した

ドライバーは最新モデルのSIMにスイッチしたものの、フェアウェイウッドは3番が1世代前の「M5」、5番が2世代前の「M3」と、旧モデルを採用しているタイガー・ウッズ。

画像: 3番ウッドはM5(右)、5番ウッドはM3(左)を使用するタイガー。写真は本人実使用のもの

3番ウッドはM5(右)、5番ウッドはM3(左)を使用するタイガー。写真は本人実使用のもの

フェアウェイウッドのスイッチに関しては腰が重いプロが多く、タイガーもその例に漏れない。SIM MAXの3番ウッドに関しては採用まで至っていたのだが、先週末に開催されたタイガーとミケルソンにNFLのスーパースターを交えたペアマッチプレー「ザ・マッチ:チャンピオンズ・フォー・チャリティ」での最新セッティングを見る限りでは、M5に戻したようだ。

ではタイガーが旧モデルのM5を選択する理由とはなんなのだろうか。業界屈指のギアオタクでクラブフィッターの小倉勇人は「トッププロの感覚を理解しているわけではないので、もちろん推測にはなりますが」と前置きしつつ、こう語る。

「M5に戻した理由として、(SIM MAXフェアウェイウッドは)操作性が不足していたんじゃないかな、というのが第一印象です。タイガーほどの選手になれば、3番ウッドであっても狙っていきたいクラブでしょうから」(小倉氏)

SIMシリーズにラインナップされているフェアウェイウッド2モデルのうち、SIM MAXは打点のミスに強めで直進性も高い、やさしいモデル。弾道が安定して曲がり幅が少ないため、多くのアマチュアにとって安心して扱える1本と言える。しかしボールを曲げて攻めたいタイガーにとっては、そのやさしさがデメリットになってしまうのではないか、というのが小倉氏の見方だ。

画像: SIM MAXフェアウェイウッド

SIM MAXフェアウェイウッド

そして、タイガーがM5を選んだもうひとつの理由は「スピン量にある」と小倉氏は言う。

「最新モデルはより低重心化したことで、スピン量が減っています。旧モデルであるM5のほうがタイガーの基準を満たすスピン量を確保できたのでしょう」(小倉氏)

とくにもう一方のSIMフェアウェイウッドについては、テーラーメイド史上もっとも低重心なフェアウェイウッドとメーカーが謳っているモデル。

低重心であるほど、ロフトの立っている3番ウッドでも打ち出しが高くなりやすいうえ、スピン量も減少するためランも確保しやすいことから「飛ばしたいのであればこちらを選ばない理由はないです」と小倉氏もSIMを評する。

画像: SIMフェアウェイウッド

SIMフェアウェイウッド

そもそもアマチュアの感覚で言えば、3番ウッドの役割はグリーンまでの残り距離をなるべく縮めることが主であって、ピンポイントでターゲットを狙うために緻密な操作性を必要とするクラブではない。そのためSIMのように低重心化によって高い飛距離性能を有していたり、SIM MAXのようにミスヒットでも飛距離をロスしにくいフェアウェイウッドがアマチュアにとっては最適なのだ。

しかし、タイガーの場合は3番ウッドであっても球筋を自由にコントロールできることを重視する。そこで、最新モデルと比較すればスピン量を確保できて、操作性も併せ持つM5を選択するわけだ。

5番ウッドは引き続き「M3」を採用

タイガーがM3の5番ウッドを使い続ける理由についても、3番ウッドと同様に「スピン量と操作性について、タイガーの基準を満たしているのがM3なのでしょう」と小倉氏。それに加えて、タイガーの5番ウッドに対する考え方が、スイッチの基準をより厳しくしているのではないかと小倉氏は推察する。

画像: 5番ウッドはM3を愛用し続けているタイガー・ウッズ(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

5番ウッドはM3を愛用し続けているタイガー・ウッズ(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

「タイガーにとって5番ウッドは、3番ウッドよりもさらに高い精度でボールをコントロールしてターゲットを正確に狙っていくクラブ、という認識が強いのでしょう。一方、最新のフェアウェイウッドって、どうしても直進性を高める方向に進化が進んでいて、重心が深く、重心距離も長めになっています。おそらくそれを嫌がって、5番ウッドに関してはなかなか替えないのではないかなと思います」(小倉氏)

M3・M4世代ではドライバーのみに採用されていた、弾道のバラつきを軽減し飛距離と直進性を高める効果を持つ「ツイストフェース」も、M5・M6シリーズからはフェアウェイウッドにも採用され始めた。

「ツイストフェースはサイドスピンをかけたい、曲げたい、というタイガーの意図が消されてしまいますからね。タイガーにしてみれば狙っていくクリークが補正能力を持っているとかえって邪魔であって、自分の意図通りの球を打てるM3こそが“やさしいクラブ”なのでしょう」(小倉氏)

こうしたクラブ進化の方向性とタイガーが求める性能との乖離が、なかなかフェアウェイウッドをスイッチできない理由につながっているようだ。

しかし裏を返せば、それだけ最新のフェアウェイウッドは性能が進化し、タイガーの技術でも曲げきれないほどに安定した弾道で飛ぶモデルとなっていることの証明でもある。「タイガーが使っていない」のは、最新モデルがアマチュアにとっては恩恵があることの裏返し……なのかも。

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