恐怖を解消するために、小さなステップから始める
イップス解消法として「イップスと仲良くなる」や「長期で見たらイップスのおかげで結果につながるかもしれない」というように認知的再構成、そしてプレ・パフォーマンス・ルーティンという「プレーするまでの準備として行動や意識をあらかじめ決めておいた順序とリズムで遂行すること」で今に集中し不安や、ミスのイメージを追い払う例をあげてきました。
ゴルファーの皆さんが、イップスとまではいかない苦手意識や、恐怖症の克服法について紹介していきます。この苦手意識とはゴルフだけでなく日常生活や仕事でもあることですね。ちなみにここでいう苦手意識とはラウンドでの実体験に基づき、苦手意識がついてしまったプレーのことで、できるだけ今後同じようなシチュエーションを避けたいと感じているプレーを指します。
たとえば、あごの高いバンカーショットやフェアフェイが狭くOBになりやすいホールでのティショット、池越えのショット、入るのが当たり前の距離のショートパットなど、プレーで恐怖症とまで言わなくても大きな苦手意識がある特定のプレーのことです。人はできれば恐怖への対象から身を避けたいと思う傾向にありますので、そのような苦手意識があるプレーに対して練習することすらも億劫になってしまいます。
私はサッカーをやっていましたが大事な公式戦でPKを蹴り、自分が外してチームが負けてしまう経験をしてしまうとそれ以降はPKに対してどうしても恐怖を感じ、苦手意識がついてしまうものです。では、どうすればこのような恐怖症を克服できるのでしょうか。その方法についてシェアしていきます。
紹介する手法はエクスポージャー法と言われるものです。暴露療法とも言われる手法で強い不安や恐怖を感じる刺激にあえて少しづつ足を踏み入れ、行動することで刺激に対する不安や恐怖を軽減させていく方法になります。
たとえば、コンペや試合でティショットを打つこと、特にフェアウェイが狭いホールでのティショットに恐怖心を抱えているゴルファーを例に3段階で対処法を実践していいきます。
第1段階では、自分のティショットの悩みを分かってくれる人とラウンドにいき、「ミスをしても良いと思える状態」でフェアフェイが狭いホールでショットを思い切って打ち、練習に近い球が出る回数を増やしていく。
第2段階では、自分の悩みを知らない人とラウンドに行き、不安の中でも思い切ってショットを打ち、練習に近い球が出る回数を増やしていく。
最終段階では、試合や競技にチャレンジし緊張感の中でのショットに「慣れる」ことで不安を軽減させ、安心に変えていく。
このように恐怖を感じている対象に対し、目を背けずにあえて小さな行動からはじめて結果として「思っていたより悪くはなかった」「やってみると想定より怖さを感じなかった」「実践してみて不安が減った」というように簡単に言うと「慣れる」ことを戦略的に行っていくのです。
ティショットを打つことは危険なことではなく、他のアイアンと同じでひとつのスウィングであると体験を通じて学習することがこの手法の狙いです。恐怖心を生む刺激に対して足を踏み入れていくことをしていかない限り、その恐怖心は減ることがないどころか、強化されていくこともあります。
苦手意識や恐怖心が増幅される前に小さな一歩でもいいので今回のエクスポージャー法を実践していくこともひとつの手です。
しかし、実際は、上記例のようにラウンドに出たときにどうしてもショット前に体が硬くなり筋肉が硬直してしまうはずです。その際に覚えておいて欲しい、とっておきのポイントがあります。体をリラクゼーションすることが非常に大切です。筋肉が硬直した状態では練習に近いスウィングは難しいはずです。そのリラクゼーションのやり方は、「斬新的筋弛緩法」を使っていきましょう。この方法は、体の特定の筋肉に意識を向けながら、意図的に強く緊張をさせ、その後一気に力を抜いて脱力します。
たとえば、両腕、両肩にぐっと力を入れ、吐く呼吸とともに一気に脱力をすると上半身のリラックスを感じることができるはずです。エクスポージャー法を実践時に体が硬直してきたと感じたら、この筋弛緩法で体をリラックスさせて、プレショットルーティンに集中して不安やミスのイメージを追い払い、苦手意識克服に活かしてもらえれば幸いです。