プロ野球セ・パ両リーグでチームドクターとして活躍した吉松俊一氏は「幼少期からの運動が脳の活性化につながる」という。吉松俊一氏とその息子・吉松俊紀氏の共著「頭がよくなる運動教室 オリンピック子育て論」(ゴルフダイジェスト社)から、頭のいい子どもを育てるヒントをご紹介。
ピンチこそ、頭がよくなる大チャンス
スポーツ中継で、選手がプレーをする前に、大きな声を出して気合いを入れるシーンを見たことがあるでしょう。こうした行為には、脳のなかでノルアドレナリンやドーパミンといった脳内ホルモンをつくりだし、自分を奮い立たせたり、集中力を高める働きがあることが知られています。
火事場の馬鹿力という言葉があるように、人間はとんでもない状況に追い込まれたとき、自分でも信じられない力を発揮することがあります。これも脳の働きです。というのも人間の脳は普段はリミッターが働き、本来の力の2~3割程度しか出せないように制御されているのです。本来の力を出してしまうと、筋肉が壊れてしまいます。ところが火事のような緊急な状態に陥ると、このリミッターが外れ、潜在的な力が発揮されるというわけです。
そうした観点からいえば、ピンチこそ自分の限界を超える最大のチャンスということができないでしょうか。ピンチは自分を成長させてくれるきっかけでもあるのです。普段の生活から、そういう意識で困難に立ち向かうことは、知らず知らずのうちに脳を強く、健康にしてくれます。
メンタル、つまり脳を強くするには、ひたむきさと素直な心も欠かせません。世界のホームラン王の王貞治さんも、若い頃には遊びたいこともあったようですが、どんなにお酒を飲んでも深夜、荒川博コーチの自宅を訪れ、バットを振り続けたそうです。
どんなにスポーツのトレーニングが科学的になっても、ひたむきな努力、素直な心、そして自分を信じ、同じことを繰り返すことのできる執念は、いつの時代にあっても成功の条件ではないでしょうか。
「頭がよくなる運動教室 オリンピック子育て論」(ゴルフダイジェスト社)より。