プロゴルファーはなぜ試合に出場するのか
先週金曜日の7月10日。埼玉県の嵐山カントリークラブで開催された、日本シニアオープン地区予選会へ参加してきました。
私は昨年から、この予選会への出場資格が発生していましたが、今年が初参加。ちょうど昨年の今頃から左肩を痛めて、一時はドライバーが180ヤードしか打てなくなってしまったので、この予選会への挑戦は断念か? と思っていました。
そこに予想外の新型コロナウイルス問題が発生し、4月上旬から約2カ月に渡る自粛生活の運動不足解消に、自宅でゴルフのスウィング動作につながる体操や短くて重いクラブでの素振りを、毎日おこなっていました。そのせいかドライバーの飛距離もフェアウェイに入れば250ヤードくらい出るようになってきたので、試合まで1カ月を切った頃に、オンラインでエントリーして、この予選会への出場を決めました。
試合に向けての取り組みや結果は、既に私のブログで報告済みでして、それを見たこの「みんなのゴルフダイジェスト」の編集部より、「プロは何故試合に出るのか? をテーマにコラムを書いてください」との依頼を受けて、今、キーボードを叩いています。
試合の結果はというと、40・39の79ストロークで、スコアカードマッチング方式に引っかからずにスッキリと通過するのが75ストロークでしたから、4打足りずに予選落ちでした。
私自身、7年ぶりの試合ということで、その独特の緊張感に呑まれてのミスや事件がちょうどその4打となった印象です。客観的に見たら、今の自分はカットライン上くらいに居るか? と予測していましたから、見立ては間違っていなかったと感じています。
本題の「何故試合に出るのか?」という部分に関しては、今回は明白です。気持ち的にはメダリストで予選通過するくらいで挑み、好結果を出して、自分に対してのポジティブな話題を提供したかったからです。
過去にJGTOのクオリファイトーナメントに出場していた時は、プレーヤーとして感じる部分のフィードバックであるとか、ある意味、1週間自分のゴルフに没頭できるバカンスのように、出場の理由付けをしていました。
そういう意味では、やはり結果が出なかったのは、本当に残念で悔しいです。
試合で戦うスウィング=スッピンのスウィング
今回、試合に向けての準備は意外と上手くいきましたが、その中でいくつかの気づきがありました。
日頃、技術屋として取り組んでいる、スウィングの仕組みの発見と検証のためにおこなっているスウィングと、試合で戦うスウィングは、全く違うというのを、あらためて感じました。
たとえるなら、前者はメイクアップユーチューバーみたいなモノで、その時々の流行りや季節にあわせての化粧を施してのカオつくりを、アップしています。しかし、試合を戦うスウィングというのは、いわゆるスッピンで、素の自分がそのまま出るスウィングです。今回の予選会にも、レギュラーツアー優勝経験のある選手が参加し、当然のごとく上位で通過していますが、彼らがそのスッピンで戦ってきた選手たちでしょう。
ただ、化粧と違うのは、練習を続けて身体に擦り込むことができれば、化粧した顔がスッピンの顔となり、それによってひとつ上のレベルのゴルフで、試合を戦うことができるようになるということです。
私はこれを課題として、来年の予選会に向けて、またチャレンジしていきたいと思います。
今回の試合で、一番機能しなかったのが、ゲームの流れです。1番から難しいアプローチを寄せて、80センチのパーパットを決めての発進でしたが、その時に緊張からか完全に身体が固まって意識が遠のいていました。
2番パー3は8番アイアンで1.5mに付けてバーディーとしましたが、このパットも同じ。完全に心ここにあらずです。
そして、3番パー4でパーオンし、1メートルショートしてのパーパットの際に、その緊張(?)がピークに達して、ボールに構えてから身体が浮き上がって意識が遠のき、このままでは倒れてしまう! という寸前に打ったパットは右に外れました。
でも、まだパープレーで組の中でもトップです。しかし、この異常事態に焦ってしまい、4番パー4のドライバーを右の林の中に打ち込みました。行ってみると、木の近くのラフにボールがあって、それを5番ウッドでグリーン手前60ヤードくらいまで打ち出したのですが、それは同伴競技者のボールで誤球。
前のホールの3パットで追い込まれた精神状態で、ボールを確認するという基本動作を忘れていました。結局、このホールはダブルパーの8でした。
でも、この倒れてしまうくらいの緊張の中でパターを打つ経験こそがプロゴルファーならではなのか? とも感じました。そこには自分の生活のど真ん中にゴルフを据えていることでの、想いやプライド、そして賞金を稼ぐという使命があり、それに対してゴルフからは厳しい試練が与え続けられます。
今回の、この失敗に際し、何人かのプロゴルファー仲間が、フェイスブックのコメントやメッセンジャーで、共感というか想いを寄せてくれました。皆、同じような経験をしているんだなと思い、嬉しかったです。
シニアオープンは、加齢や健康との戦いの場でもあります。予選会でご一緒した池内信治プロは、数年前に片方の肺を切除されたとのことで、上り坂の長いインターバルの後のティショットは辛そうでしたが、見事2オーバーでまとめられて、予選通過を果たしています。
試合後、ロッカーで着替えていると、向こうのほうから今日のプレーを嘆く声が聞こえてきました。
皆、自分の人生のど真ん中にゴルフを据える代償として、ゴルフから常に試練を課せられているんだなと感じました。
私は日本プロゴルフ協会の会員ではないですが、あらためてプロゴルファーとしての矜持を確かめることができたのが、何よりの経験でした。